「仲間」ですか
投稿日時を指定しているわけではないのですが少し遅れました。
楽しみにしてくださっている方には申し訳なく思います。
これからも<ファンタジーワールド>をよろしくお願いします。
「ニャッ!」
「キヤト!バフ切れてるわよ!」
「分かった!掛け直すよ!~~~♪」
「あり、がと」
「ぴぎー!」
突然だけど子鬼の巣窟内、それもゴブリンPT(大)と戦闘中です。
といっても、ミツキが・・・
「jumuniumuhnu」
「ふぅ、終わったわね。」
といった具合に、ミツキの一撃でほぼ片が付いているのだ。
とはいえ、詠唱時間が長く、30秒ぐらい必要なことから、自然とミツキを中心において、他のメンバーで守る形となっている。
そうそう、ここに来る途中でみんなのステータスを確認した。というかミツキのステータスを見るのは初めてだったのだが。
~キヤト~
クラス ビーストテイマー+2
称号 子鬼の王
アビリティ6/6 ムチlv2 笛lv2 命令lv3 体力増加lv3 テイムビースト強化-ビーストテイマーlv2 ステータス上昇の演奏lv2
所持アビリティ
獣道lv0、捕獲lv1
~スノウ~
クラス スノーキャット+2
アビリティ6/6 爪lv2 睡眠lv3 疾走lv2 雪魔法lv1 危険回避lv3 休憩lv2
所持アビリティ
氷魔法lv2
~ミツキ~
クラス シャーマン+2
アビリティ6/6 杖lv2 霊魔法lv2 霊使役lv2 魔力増加lv2 霊属性lv2 発見lv1
所持アビリティ
交霊術lv1
~ツグミ~
クラス モンスターテイマー+2
アビリティ6/6 ムチlv2 捕獲lv1 指揮lv2 癒魔法lv2 回避lv2 従属魔強化-モンスターテイマーlv2
~スラちゃん~
クラス ウインドスライム+1
アビリティ6/6 体当たりlv2 軟体lv2 体力増加lv2 速度増加lv2 風魔法lv2 チャージlv1
とまぁ、僕やスノウは全然成長してないが、ツグミやスラちゃんの成長は目覚しいものがある。
ミツキの話ではミツキも全然成長してないようだ。
というか、ミツキのアビリティを見て思ったのだが・・・火力重視過ぎないか?魔法のようなものも属性強化で強化されるだろうし、ミツキ曰く杖アビリティでも魔力は上がってる・・・らしい。
その上、直接的に魔力を上げている。
ミツキは壁がいるなら火力特化でも問題ないじゃないなどと言っていたが。
そして・・・一番問題となったのが「称号」だ。
朝見たときには子鬼の王なんていう称号は無かった、というか称号なんていう欄はなかったし、他の面々にも無い。
僕が思うにこのクラウンが関係してるのだと思う。
しかし・・・こんな称号があるのにゴブリンは変わらず襲ってくるんだな・・・と思ってしまう。
確かに目的は狩りなのだから構わないといえば構わないのだが・・・王じゃないの?僕。
そんなことを思ってしまう程に昨日と変わりなく襲い掛かってくるゴブリンどもに少し嫌気がさす。
というかそもそも、僕じゃなくてツグミの方じゃないの?子鬼の王だったらモンスターテイマーの方が似合いそうなものだけど。
ちなみに効果は分かっている。ゴブリン種に対してのダメージが10%アップする・・・だ。
正直なところ、ムチでは有効打足りえないのは10%増えた所で変わらないので、正直なところ余り意味が無い。
ミツキについていれば、簡単に終わるのにな、などとミツキの狩り残しをムチでしばきながら思う。
「着いたわね。基本は昨日と同じよ。入ってすぐにキヤトが演奏してから一斉攻撃、その後近衛兵をキヤトを除く私達で狩って、その間キヤトはキングの足止め、これでいい?」
「オーケー」
「ん。」
「にゃっ/ピギー」
「よし、なら、一、二、三、突入!」
「ン?、ヒトゴトキガクワレニキタカ」
何か言ってるけどスルー
「~~~♪」
「後は任せるよ!」
即座にキングに向けて走る。
と、横を魔法が通り抜けていった。・・・怖い。
「クッ、コザカシイ、オレサマヒトリデヤレルトオモッタガ・・・デテコイヘイドモ!」
昨日と似たような事を言っているが武装は違う、分かりやすい王冠はともかく、奴がもっているのは斧だ、昨日の奴とは違うのが見て取れる。
と、観察もほどほどに、キングに向けてムチを振るう。
「ウットウシイ!マズハキサマカラダ!」
よし、タゲ取り成功。単純すぎるな・・・
「オマエモオウナノカ!?・・・オウハオレヒトリデジュウブンダァァァァァ!」
僕に向き直ってそんなことを言って来る。なるほど、こんなイベントもあるのか。小さ過ぎるでしょ。
「クッ、ワガヘイタチガ・・・マダダ、モットデテコイ!」
いつの間にかミツキたちは兵を殲滅していたらしく、僕の後ろ・・・つまりミツキたちの戦っているほうを見てそんな事を言っている・・・早くない?
「キヤトー!全滅させたらどんどん出てくるみたいでドロップ稼ぐ為にもう少し粘ってね!」
粘るも何もまだムチで打っただけなんですが・・・来る!
昨日との違いはキングの持つ得物、つまりはキングの持つ斧が輝いて・・・
ドゴォォン
振り下ろした、と思ったらクレーターが出来てた。
あ、危ない・・・距離とってなかったら直撃してるよ、これ。
なんて思ったのも束の間、下から岩が飛び出してきていた。
やばっ、避けれない・・・
ドンッ
「痛いなぁ、もう。」
とにかく吹き飛ばされたので、立ち上がり、ステータスを開いて確認すると、残り4割ほどだった・・・。
4割!?もう一発でアウト!?威力高すぎませんか!?
少しパニクってる間にもゴブリンキングが近寄ってきてるので、ムチを振るいつつ、後退、いやぁ、中距離から攻撃できるっていいですね!
しかし、ゴブリンにとって僕の繰り出したムチは大したダメージにならないようで、どんどんと進んでくる、得物が違えばタイプも違うようで、昨日の剣の奴がスピードタイプならコイツはパワータイプだ。
コイツの方がやだな~、なんて思いつつ後ろにどんどん下がる。
お、回復来た。
「ありがと!ツグミ」
「ん。」
「よし、終わったわよ!」
「スラ、ちゃん、お願い。」
「ピギー!」
昨日のように風の刃が飛んでくるので急いで逃げる。
「グギャァー」
必死で逃げていたので見てはいないがどうも当たったらしい。
「オノレェ、オレヲタオシテモスグニツギノオウがアラワレルダロウ。」
言葉遣いは違うものの言ってることは全然変わらない。
死亡時のエフェクトは普通に倒れて消えていったのが昨日と違う点だろう。
今日は特に疲れても居ないので、この場でドロップと、ステータスを確認することになった。
キングがどれくらいでリポップするか分からないのが不安といえば不安だが、そんなに早くリポップするとも思えないので、誰も不安に思っていないようだった。
「ねえ、ゴブリンアックス(キング)なんてのがドロップしてるんだけど、これは売りでいいわよね?」
「うん、いいと思うよ。斧は使わないだろうし。」
「あ、じゃあ、これは?ゴブリンメイル。」
「うーん、鎧はなんか動きを制限されそうで嫌なんだけど。」
「そう、なら売りね。あ、ところでさ、アンタ吹っ飛ばされてたわよね、あれどの位のダメージだったの?」
その質問には僕じゃなくてツグミが答えた。
「約、七割、ぐら、いだっ、たよ。」
「あれ?ツグミ、僕の体力見えるの?」
コクリと頷くツグミ。
「癒魔法を、覚え、てから、見えるよ、うになっ、た。」
「なるほどね。しかし七割か。クリティカルに決まったものだとしても痛すぎるわね・・・」
「そうだね。ビーストテイマーは個人で見ると、前衛というより中衛向きだね。」
「そう、そうね。今の状況は、アンタを中衛にするなら、ツグミも中衛になるから・・・スラちゃんは前衛?スノウは前衛で良いわよね?」
「スラ、ちゃんは、前衛、だと、思う、とても、体力、が、高いから」
「スノウは前衛だね。今は魔法もフィールド系のものだけだしね。」
「そう、なら前衛が2、中衛が2、後衛が1でPTとしてはバランスがいいんだけど・・・」
「問題は、内二人がビーストテイマーで、更にそのペットが二匹、ということだよね、ミツキ?」
「ええ、前衛職のプレイヤーに比べて、ペットがどの程度の強さなのか、というのが大事になると思うのよ。」
「?」
ツグミはどうやら分かってない様子だった。
「まぁ、そんなものは計りようがないんだしさ、今はとっとと帰らない?」
「ニャー、ニャー」
と、そこでスノウが王座の後ろで何か鳴いているのに気付いた。
「どうしたのさ、スノウ?」
「ニャー」
近づいて見れば一目瞭然。
明らかに僕の周りにウインドウが浮かんでいる。
「・・・?ゴブリンが捕獲可能になりました?」
「どうしたのよ?」
「ゴブ、リン?」
「いや、王座に触れたらウインドウが展開されて、このダンジョン内のゴブリンが捕獲可能になったって。」
「へえ、これまでは不可能だったのかしら?」
「どうもそうみたいだね、試してないから分からないけど。」
「外の、は無理、だった、よ?」
「そう、ならゴブリンキング討伐後、王座に触れることで仲間制限のクリアが出来るということね・・・ツグミ、触りましょう。」
「ん」
スノウがいつの間にか寝ている王座へと二人が触れると、
「あ、でた、よ」
「私もよ。しっかし、これは気付かないんじゃない?」
「多分、気付く人を限定する為じゃないかな、ペット化したキャラが誘導するみたいだし、テイマー系のキャラは気付き安いんだと思う。」
「そっか。ゴブリン仲間できるようになったって、その手段が無かったら無意味だものね。」
「そ、そういうこと。ところでさ、ツグミはゴブリンを捕獲しようとした事が有ったの?」
「ん、スラちゃん、一匹だと、寂しい、かな、と思って。」
「そっか、優しいね、ツグミは。」
「そうね、ツグミはさ、今でもゴブリン仲間にしたい?」
「出来る、なら。」
「そう、なら仲間にしましょう。そうね・・・前衛・・・いや、リーダーを捕獲しましょう、きっとアビリティ的に恵まれてるはずだから。」
「あり、がとう。」
「よっし!ならすぐそこへ捕まえに行こう。あ、さっきのゴブリンアックスとか鎧とかの使い道が出来たね!」
「そうね、前に固めた前衛がいるのといないのとじゃ、安心感が違うわね。」
「そうだよね、なら余計捕まえないと。」
「出てきたよ!」
「魔術師、射手、戦士の順で狙いなさい!」
「分かってる!」
今回、ミツキは対単体用の霊を使うらしいので、すぐに終わらせるとはいかないものの、手馴れた動きで、リーダー以外のゴブリンの殲滅に成功する。幸い今回現れたリーダーは斧装備なので、ちょうどいい。
「んしょ。」
ツグミが、大きなロープを取り出し、僕のムチで弱らせたリーダーに巻きつけていく。同じテイマー職でも、専門が違うと、捕獲方法も大きく変わるものだと感心していると。
「仲間、なった。」
ツグミが、そう宣言する。
「よし!ツグミ、ステータス開けそう?」
「ん、名前、何に、する、か、決めて?」
ツグミはこちらを向いているので、僕にいっているのだろう。
しかし、再三言うが、僕は、名前をつけるのが苦手なのだ。
とはいえ、期待には答えねばなるまい。
うーん・・・うーん・・・
「アニキ、ナンデモイイデスゼ。」
ゴブリンリーダーが、そう声を掛けてくる、コイツ、喋れたのか、戦闘中はキーキー鳴いているだけだったので気付かなかった。そういえば、あれは指揮だったのかもしれないな、と思う。
そうだ!
「リンリーはどう?」
「わかっ、た。」
「アリガトウ、アニキ!」
「ねえ、アンタ、ゴブ、リンリー、ダー、から取ったわね?」
くっ、ばれてやがる。
しかし、コイツにはリーダーとしての威厳やその身に受ける尊敬を感じたのだ。
何故なら!僕を男だと言ったコイツは間違いなく優秀だ。
「そうだけど、いいじゃん。分かりやすいのが一番だよ!」
「ツグミがいいなら、いいけど。」
「私は、これで、いい。」
「そう、なら問題はないわね、ツグミ、リンリーのステータス、見せて。」
「ん。」
ツグミは慣れた手付きでステータスを展開する。
僕とミツキはそれを覗き込む。
~リンリー~
クラス ゴブリン+3
アビリティ4/6 斧lv2 指揮lv1 体術lv1 威嚇lv1
+3は初めて見た。
リーダーは優秀なようだ。
アビリティも、効果が推測できる上に、斧は最初からlv2と、ハイスペックだ。
「リンリー、これ、使える?」
見ると、ミツキはリンリーに斧を渡していた。
「コレハ・・・オウノヒホウジャナイデスカ、アネゴ」
「アネゴって・・・王の秘宝?ああ、キングシリーズのことか。ならさリンリー、アイツの頭に乗ってるのは王の秘宝?」
ミツキはこちらを示している。
「アニキノモタシカニオウノヒホウデス、コノオノハタシカニブキトシテツカエマスガ、オレニワタシテイインデスカ?キットタカクウレルトオモイマス。」
「いいのよ。アンタにはこれからそれ以上稼いでもらうんだから。」
「ワカリヤシタゼ、アネゴ、ガンバラセテイタダキヤス。」
「ああ、そうだ、この鎧もあげるわ。その分頑張りなさいよ。」
「ヘ、ヘエ、ゴシュジン、オレタイヘンジャナイデスカ?」
「頑張っ、て。」
「ワカリヤシタゴシュジン、ゴシュジンノオカゲデコレマデニナイクライチョウシモイイデスシ、ガンバラセテイタダキヤス」
リンリーの呼び方は、僕に対してはアニキ、ミツキに対してはアネゴ、ツグミに対してはご主人でまとまったようだ。
その後、リンリーを交えて戻った道中のゴブPTをリンリーは一切の躊躇なく攻撃し、その攻撃力の高さは、前衛を二発ほどでしとめるものだった、リンリー曰く、ご主人と武器のおかげ・・・らしいが。謙遜できるとは何て出来たゴブリンなのだろうか。
そして、宿屋に戻ったときだった。
それまでは道が暗いこともあって、ゴブリンだとは思われなかったのか、街中を普通に歩けた(門番はペットだと言うと、すぐに引いてくれた)のだが、宿屋の中の明るさでは、ゴブリンだとばれて、問題が起きるかと思ったのだが、他のNPC冒険者と宿屋のお姉さまは、チラッと一瞥しただけで、何も言わなかったが、お姉さまは、こちらに責任だけは取るようにしなよ、とツグミのほうを見ていっていた。
もちろんです、と答えると、お姉さまは、そうかい、それなら良し、とのことで、普通に宿屋の使用許可が降りたのでよかった。
「スノウ、明日も頑張ろうね。」
「にゃ・・・にゃぁ」
スノウはもう寝かけているので、僕もさっさと寝ることにする。
新しく仲間となったゴブリンリーダーのリンリー、これから先どのような活躍をしてくれるのか、僕らにとってかけがえのない存在となるのか・・・それは未来のこと、まだ知りえない。
昨日やって少しカッコよかったのでまた同じように物語調で一日を締める。
「おやすみ、スノウ」
いつも通りに・・・おやすみ・・・