「王の森」ですか
前回短めだった分だけ頑張っちゃいました。
「や、やめてください!?」
「いや、いいじゃないですか、ほら、ビクともしない。」
「にゃふぅー」
「何やってんのよ、アンタ。」
いや、何って・・・うりゃ!
「うーん、砕いて入るんじゃないの?」
「いや、だから待ってくださいって!」
実際会話を交わしてみると以外に話やすくてなんか・・・神聖なイメージが崩れました。
そして、蹴りは痛かったのでムチでの攻撃にシフトしてみたのだ、が
「確かにそこから入れるとは言いましたよ、言いましたけど!」
「なら、問題、ない。」
ツグミはこちら側の模様、呆れてるのはミツキ、スラちゃんとリンリーは必要な時にしか行動しない。
リンリーは基本周りを警戒しているが。
「だったら、エルフかっこかりさん、教えてくださいよ。」
「エルフかっこかりじゃないです。確かにエルフですけど、かっこかりなんて名前ではないです。私には!マイアという名前があるのです!」
「じゃあ、マイ・・・アッさん!教えてく・・・っださいよ!」
「なら叩くのをやめたらどうですか!?」
「あんた等はコントをやめなさいよ。」
「スラちゃん、あれ、壊せる?」
・・・半ば自分が態とやってることもあって、場が、その、なんというか、何て言えばいいんだろう?
・・・カオス、だな。
「分かりました、分かりましたか・・・ああっ!?やめて!?」
ん?え!?
「スラちゃん、やって!」
未だにプルプルとしか動けないスライムが撃つにしては大きすぎる風の「塊」を打ち出す姿が見えた。
それは今、こっちに向かって・・・やばっ!?
「うぁぁっ!?」
逃げて2秒ぐらいでゴウンッと風の過ぎる音を聞いた。
「ツグミ!危ないじゃないか。」
「あ・・・ごめん、なさい。」
しかし、今ので一切の変化がな・・・あれ?
「ああーーーー、光ってる!?」
「ええ、光ってるわね。」
「あれ?私の出番・・・」
そうして墓は後ろへとスライドしていき、真っ暗な穴がそこには残った。
あれ?飛び降りるの?
「ね、ねえミツキ?ロープ・・・用意しない?」
「え、ええ、そうね・・・」
「出番・・・出番・・・」
一人ブツブツとうるさいがスルーすることにして、ロープを調達しようと思ったのだが、さっき僕を黄泉に連れていこうとした使い手が目に入った。
「あ、ツグミ、ちょっとこっち来て。」
「・・・?」
トコトコと歩いてくる。・・・その後ろには緑の球体が浮かび、重装備のゴブリンが着いてきていて風格がある・・・本人は小さいのに。
「ねえねえ、スラちゃんに乗れたりしないかな?」
「分から、ない。」
「じゃあ、試してみようよ。」
コクッと頷く仕草は装備の小動物的な雰囲気も相まってやはり、ウサギだと思ってしまう。
「スラ、ちゃん、キヤトさん、乗せてあげ、て?」
フワフワと漂ってくるスラちゃん、ジロジロと見てくるミツキ、ワクワクしている僕。
「じゃ、じゃあ、行くよ!?」
ゴメン、やっぱり少し怖いです。
「ふー、よっっと!」
ゲームの外ではありえない跳躍力、そりゃ走るの早いなーとか思ってたけどさ、流石に目測で4メートルぐらい飛ぶとは思いませんでしたよ。
ズボンッ、ああ、駄目だったか・・・?
・・・あれ?あれ?
「・・・おお、浮いてる!足が少し埋まったけど!」
「おおー」
「あら、そんなことも出来るの?」
「・・・くっ、スライムの分際で・・・出番・・・」
そろそろ触れてあげるべきか?なんか怖くなってきた、その内無差別に攻撃しそうだ。
「あ、あのぅ・・・マイアさん?ここの本来の開け方ってどうやるんですか?」
「き、きたー、フフフ、よく聞いてくれました!それはですね~、何と!この墓石の真ん中に風の魔力を当てるんです、ほら、こうやって。」
確かにマイアさんの手の上で風が何かの紋章を描いているのが見て取れるし、条件も満たしていることは分かったのだが・・・。
一つ、突っ込みたい・・・形はどうでもいいのか!?
「そう、本来ならここで私が美しく、墓守としての役目を果たす所だったのですが・・・いえ、まだです!今から墓に入るんですよね?」
「え、うん、そうだけど?」
「そうですか、なら早く入りましょう!ほら、さあ!」
「わ、分かったから・・・スラちゃん頼める?」
うん、反応して体を揺らすのは分かったんだけど、それに乗ってる僕も揺れるんだ。
ついでに僕の肩に装備されてるスノウも。
「おお、何か面白い。」
「外から見ると不気味だけどね。」
ミツキが酷評してくるが、このスラちゃんの乗り心地はとてもいい、なんかスーッと動いていくのだ。
スーッと、おお!?これは凄い、上とは全然違う・・・
「しかし、深いと思ったらこんなに深いとは・・・精々10メートルぐらいだよ!」
少し、強気に言わないとやってらんないよ。
「だけど!暗くて!見えないわよ!」
「中は大丈夫!何故か森だ!」
「はあ?訳が分からないわよ。」
「今からスラちゃん送るから!じゃあ、スラちゃん他の人たちもお願いね。」
一番早く降りてきたのは・・・マイアさんだった。
その次はツグミ(リンリーに抱かれながら)、そしてミツキの順だった。
「これは・・・外?」
ミツキがそんなことを言っているが・・・こんなのが外界なわけが無い。
太陽がない
それだけでこの森は何故だか・・・死んでいる。
「いいえ、これが王の森、今は死んだ森です。」
マイアさんがシリアス風味に言うものの、この人のオチパートをさっき見てしまっているので、何か・・・ねえ?
~王の森には幾多の獣が集う、そこには王が居たから。王の森には数多の植物が茂る、そこには王が居たから。犬と猫が戯れ、小鳥は歌い、木々は光を漏らして枝を揺らす。楽園、正に楽園だった。しかし、ある時、王は倒れた。その後からだ。犬と猫は争い、小鳥は逃げるように飛んでいき、木々は光を奪い合うように伸びていった。そう、王とは平和そのもの、この森に生きるもの達全ての心に在った平和の心だった。争っていた犬と猫はいつまでも戦った。死して尚争い、傷つけあった。小鳥は唯只管に飛んだ。森から出ることは出来ず、翼が折れ、体が朽ちても飛んでいた。木々は伸びていった、大きくなっていった。大きくなり、他の木々にぶつかるようにして光を、養分を奪い合った。遂には絡み合い、大きな大地のように、土が何処からか運ばれ、隙間なく絡み合った木の上に覆いかぶさり、大地となった。王は死んではいない。倒れただけだ。再び立ち上がることがあればこの森は楽園と呼ばれる姿に戻ることだろう。~
マイアがいきなり真剣な声で言った。最初の方は聞き逃したが、途中からはしっかり聞いていた。
「これがこの町、いえ、この森に伝わる伝承です。私達、エルフは、昔は王を支えるものでした。しかし、今では王とは何であったのかさえ分かりません。心、と伝承には残されていますが、何らかの魔力的生命体であった、とされています。エルフの間でも、時代を経るごとに、記録が、記憶が無くなっていき、王について知るものは居なくなってしまいました。その後、私達エルフは、この森から魔力が漏れ出していることに気付きました。過剰な魔力は人体に悪影響を与える。だから私達はこの森を封印しました。エルフの象徴であった風の魔力で。」
・・・へえ、少し、面白いね。
「ふーん、だけどさ、マイアはここを開けるのに反対しなかったよね、なんでさ?」
「それは・・・私達が望んでいるから、王を。」
「つまりは私達にその王とやらを戻して欲しいって事ね?」
「ええ、その通りです。」
「なら案内して頂戴?この森の中心部に」
「それが・・・出来ません。」
あれ?この森を封印したのがエルフなら中心が何処かぐらい分かるんじゃないのか?
「場所が分からないとかじゃないよね。」
「ええ、中心部が何処かは分かります。ですが、この森には・・・居た!向こうを見てください!」
・・・はあ、やっぱりか・・・めんどくさいなぁ、体力高いんだろうし。
「気持ち悪いわね、なんとなく伝承で察してたけどまんまアンデッドじゃない、それも獣系の。」
見たところ、犬が二匹だけだ。これなら行けるでしょ。
「中心部にいけないのはアレが原因?」
「ええ、その通りです。」
「なら、やるしかないね、ミツキ、ツグミ。」
「ええ。」
「ん。」
「じゃあ、頼むよ、スノウ!特攻だ!」
「ニャー!」
~~♪っと、これで、大分楽になった筈、
「huahuyeygjgyt!」
「ニャッ!」
これだけで終わった?いや、まだだ、倒れてない!
「ツグミと僕で足止めするからどんどん打ち込んで!いける?ツグミ!」
「リンリーはもし相手が抜けてきたら必死で止めて!攻撃は考えなくていい!」
コクッと頷く小動物が今は頼もしい、足並みを揃えて向かっていく。
「くっ、全然倒れない!」
「あれらは普通に倒すにはとても時間がかかります!」
そういうマイアも魔力で構成された弓をずーっと射っている。
「だけど!光とか、聖とかの魔法を使えないからこれでやるしかない!」
今のところ、攻撃は食らっていない。相手が二匹だ、ということもあるし、なにより、相手に降り注ぐ魔法、ミドルレンジからのムチで近づけないようにしている。
ムチを振り回しながら思う、ムチって、強いな・・・なんとさ、軽装甲の相手なら一方的に攻撃できるんだし、足を狙えば相手はほぼ動けない、確かに一人だとスキが出来るけど、二人で振り回してればほとんどスキは無い、となれば無双だ!・・・少し、リンリー暇そうだな。
うーん、こんな体力ある相手の攻撃とか食らったらやばいんだろうな。
「片方!倒れたわよ!」
よし、確かに消えてる!
「もう片方も、もうすぐだと思うから!」
そんな発言をして約二分、ようやくもう片方も倒れた。
「ねえ、ステータスを開いてみて。」
アイテムボックスを眺めているとミツキがそんなことを言ってきた。
何でだろうか。まあ今は従っておこう。
~キヤト~
クラス ビーストテイマー+3 クラスUP可能(始まりの町)
称号 子鬼の王
アビリティ6/6 ムチlv3 max 笛lv3 max 命令lv3 体力増加lv3 テイムビースト強化-ビーストテイマーlv3 ステータス上昇の演奏lv3 max
所持アビリティ
獣道lv0、捕獲lv1
アビリティ「ムチ」がランクアップできます。しますか? ~ムチ+~
アビリティ「笛」がランクアップできます。しますか? ~笛+or速笛~
アビリティ「ステータス上昇の演奏」がランクアップできます。しますか? ~ステータス上昇の演奏+or肉体強化の演奏or魔力強化の演奏~
これは、凄いな。
成長率が異常だ、やはり強敵だったのか。しかもこの前、話に聞いたばかりのアビリティの進化まであるぞ、しかしどれを選べばいいんだろう?ムチはともかく、笛と速笛か、恐らくは、笛が性能の上昇、速笛が演奏時間の短縮なんだろうな。だったら、笛のまま上げよう、今のところ演奏時間には困ってないし、ここを進んでいくなら少しでも火力がプラスになるような選択を取らなければなるまい。
さて、正直その二つは問題でもなかったりする。一番問題なのはクラスUPだが、ここで出来ない以上は後だ。そう、ステータス上昇の演奏。これは目には見えないものの、大きく貢献してきた。正直、ムチを早く振り回せるのもこれの恩恵が強いと思う。だったら肉体強化じゃないかと思うかもしれないが、自分達のメイン火力が魔法である以上、魔力強化に特化すれば、大幅に火力が底上げされるだろう。
・・・どうしよう?
「ねえ、ミツキはさ、PT全体に掛けるなら肉体強化?それとも魔力強化?」
「私なら肉体強化ね、もし前衛が突破されたら私と・・・スノウもかしら、は紙のような防御力だし。」
ミツキがそういうなら肉体強化でいいのだろう。
じゃあ、これと、これと、これでっと、よし。
~キヤト~
クラス ビーストテイマー+3 クラスUP可能(始まりの町)
称号 子鬼の王
アビリティ6/6 ムチ+ 笛+ 命令lv3 体力増加lv3 テイムビースト強化-ビーストテイマーlv3 肉体強化の演奏
所持アビリティ
獣道lv0、捕獲lv1
ずいぶんとスッキリした気がする、気になったのでスノウの方も見てみる。
~スノウ~
クラス スノーキャット+3
アビリティ6/6 爪lv2 疾走lv2 雪魔法lv2 危険回避lv3 回復lv1 氷魔法lv2
あれ?睡眠と休憩が消えて、回復が増えてる?
それら二つが合わさっての回復か?
クラスと雪魔法もlvが上がっているものの、やはり特別なのかそこまで目覚しい上昇ではない。
他のアビリティは発揮されなかったと見ていいだろう。
結論、異常だ。lv差のようなものがありすぎだ。モブ2匹でこれか。しかし結構安全に倒せたぞ?小鳥とやらはどうか分からないが。
少しミツキを見てみると、ミツキもここを「とても効率の良い狩場」と見たのか辺りを見回して次の獲物を狙っている様だった。
「キヤト、ここは奥に進むのは難しいかもしれないけれど、とても、良いとは思わない?」
「うん、ここ、明らかにlvおかしいよね。」
「私もそう思うわ。だけど、そんなリスクよりも、このlvアップの早さが重要だと思うのよ。」
「確かに犬だけであれば3匹くらいなら安全に狩れそうだね。」
「ええ、だから・・・ね、ここで暫らくの間、修行をしない?」
ここのlvのおかしさはミツキも分かってるようで、進もうとは言わないようだ。
「うん、ツグミもそれでいいよね?」
「ん。」
これからの方針は決まったので、話し合った結果、全員がクラスUPが可能だ、ということが分かったので、一度始まりの町に戻ることになった。
「そうですか、確かにこの森は一筋縄じゃいきませんからね。何度も挑戦してみるのが良いでしょう。」
と、マイアさんも言っていたので、スラベーター(僕命名)で戻り、マイアさんが墓を閉めた5分後には、僕等は早速戻るために出発した。
一度通った道なのでかなり簡単に戻ってくることができた。ゴブリン?そんなの敵じゃないよ。
怪しいのはあのクラスを付けてくれたNPC、そしてやはりというか何と言うか。
「ほう、十分な修養を積んだようじゃの。ほれ、次のステップ、今までがノービス、これからがルーキーじゃ。」
最初、選んだときより選択肢はずっと少なく、ビーストマスターと指揮者の二つだけだった。
指揮者には少し惹かれたが、なんかよくわからなかったのでビーストマスターを選んでおいた。
こうして僕らのPTは
ビーストマスター(+猫)
モンスターマスター(+スライム、ゴブリン)
交霊師(ゴブ魂)
と何がしたいのお前らという感じなPTになった。
あれ?本当になんだ、このパーティーは。
次は土曜か日曜の更新。
このペースは滅多に保たない(ぇ