「ログアウト不可」ですか
「あ、当たったぁ・・・!」
つい声を漏らしてしまったが仕方ないと思う。
時代は2042年、世の中の電子化は進み、人々もその技術を駆使し、日常には様々な機械があふれている中、VR・・・バーチャルリアリティ・・・の機器も開発された当初は賑わったもので、いつ日常に進出してくるのかと、しかし軍や医療関係で使用されること20年の間にそういった賑わいはなくなっていった・・・
しかし昨年、AG社(ゲームの噂はあまり聞いたことが無い)が何の前触れもなくVR機器を使用したゲームを打ち出したのだ。
「ファンタジーワールド」
それがそのゲームの名前だ、何の捻りもない、だが何のゲームか分かりやすくていいのではないのだろうか、ジャンルとしてはネットでよく扱われるVRMMORPGと呼ばれる物だ。
と、ここまではそれほど前触れもなく出したこと意外は問題がないと思う、だがこのニュースは日本中を
騒がせた、というのも、このAG社はこのゲームを売るのは、先にテストをして十分な結果が得られれば発売するが、もしもそうならなかった場合は、この計画は白紙にする、といった事にある。
この一文はVRMMOというジャンルのゲームを心待ちにしていたゲーマーからは大きな反発を受けた、がしかし、AG社は一切その主張を変えなかった。その為テスターとして全国に出された募集1万人は軽く超え、何万人の人々がそのゲームに募集をしたのかわからなくなるほどだった。
と、ここまで言えば冒頭の言葉も分かって貰えると思う。
そう、今、目の前にあるのだ、何だかヘルメットのような形状をし、タコのような機械、そう、
「VRマシン」が。
興奮しても仕方ないと思う、半ば諦めながら応募したのだから、
と、そこでふと気になったことがあってPCを立ち上げる、開くのはネットオークション、検索するのは「VR」・・・・・・有った、値段は・・・!!
「はぁっ?!」
おっと、失礼・・・キャラが崩れかけた、というのも、そこには見たこともないような金額が載っていた。
そこで暫らく考えてしまった自分は悪くないと思う。だってそうだろう?応募に使った金なんてたかがしれている、だが目の前にはこのVR機器を届いてすぐにオークションに出した人がいて、そのVR機器を自分のような小市民にはとても出せないような金額で買おうとしている人がいるのだ、
とはいえ、自分は根っからのゲーマーなのだ、と言い聞かせて、VR機器をPCに繋げ(繋げるのは最初の一回だけでいいらしい)自分の頭に乗っけ(思ったより軽い)付属のベッドに寝そべる(コードがやたら長いのはこの為らしい)そして・・・スイッチを入れる!
あれ、何も起こらないぞ?と思ったのも束の間、視界は暗転し、一秒か二秒だろうか?その状態が続いた後視界に移ったのは
「青」
キレイな空のようだ、風を感じる・・・背中が少し痛いような?とそこまで考えて気付く、寝ているのはベッドの上などではなく、真っ青な空が広がる草原なのだと、
「これがVRなのか・・・!!」
誰も居ないのをいいことにちょっと厨二っぽく言ってみる、こんなのも偶には
「ようこそ、ファンタジーワールドへ」
突然女性の声が聞こえて、跳ねあがってしまった、もしかして今の聞かれただろうか?
「これよりチュートリアルを行います」
その第二声に少し安心した、周りには誰も居ないので、これは唯の音声のようだ、これはしっかり聞くことにする、飛ばせないようだから、というのが本音だけど
「この世界ファンタジーワールドでは、各プレーヤーの方たちには自由に行動してもらうことが可能です。王道らしく冒険をするも良し、まったりと過ごすのも良いでしょう。ですがどの行動を取るにしろ、アビリティという物が大事になってきます、少し頭の中でステータスと考えるか口に出して唱えてみてください」
ステータス、
「おぉ!」
目の前には半透明のスクリーン、名前、性別、クラス、アビリティ0/6と上から書かれたそれは、自分のゲーマー魂をくすぐっていた。
「はい、そこにはこれから決めていただくお名前、性別は仕様上変更不可です、クラスは今後取得することになるでしょうが今は旅人になっておりアビリティに影響を与えます、アビリティ、この欄は未だに何も埋まっていない筈です、ですがすぐにでも埋まることになるでしょう、その四つが表示されていると思われます」
確かにその通りだった、とはいえチュートリアルなので当たり前だろう
「アビリティとは、何かしらのアクションを取るときのサポートのようなものです、店で買ったり、特定の行動を取ることで取得することができます。アビリティにはLVが1~10まで設定されており、LVが高いほどその効果は高くなります。重複はできませんが、たとえば「剣」アビリティであれば、属性アビリティの「斬」を共につけた場合も効果が高まります、このように様々なアビリティの組み合わせを探してみるのもいいでしょう、ですがアビリティは見ての通り、最大6個までしかつけることはできません。しかし、使わずに所持しておくだけならば何個でも所持していただくことは可能です。」
なるほど、ならその組み合わせ次第ではいくらでも楽しめるということだな、
「次は装備についてです。ステータス画面をタッチしてみてください。」
もちろんすぐに触った、と端から消えてすぐにまた出てくるがさっきまでとは違うものだった
「それが装備品及びアイテムボックスです。左側の枠が四角く区切られているものがアイテムボックスで、重量をオーバーしない限り、いくらでもアイテムを詰め込めます。もし、モンスターからのドロップ時に重量をオーバーした場合、そのアイテムは目の前に現れます。即座に消えるという事はないのでご安心ください。右の体の模型の頭、体、両腕、足、アクセとかかれた装備しているものとなります。ここに装備されていないもの以外を身につけることも可能ですが、効果は発揮されず、破損の可能性もありますのでご注意ください、尚、現在装備されている布の服はほとんど効果がないので買い換えることをお勧めします」
そこらへんは普通のゲームだな、と思ってしまった
「次に、この後の事について説明させていただきます、まずこのプレーヤー全員共通のチュートリアル後、プレーヤー名を決めていただきます、その後、この世界に3個ある「始まりの町」にランダムで転移されます。その後は全て皆様次第です。最初にいった通り、冒険や日々まったりと過ごすもよし、じゆ・・・」
声が途切れた・・・?
「これはチュートリアルではない、全プレーヤーに共通して聞こえている筈だ、
まず最初に言っておこう、このゲームは や め ら れ な い
ゲーム内で死ぬと現実でも死ぬデスゲームなどではない・・・唯この世界から抜け出すことができないだけだ、
君たちの脳は加速されている、ここでの一年は現実のほんの数秒にしか満たず、肉体の崩壊によるログアウトも無い、
だが、もし抜け出したいと思うのならこの世界のどこかに、抜け出すための条件を用意しておこう、もしそれを満たしたのなら自由にこの世界を出て行くがいい」
渋いおっさんの声・・・と驚く間もなく驚愕の真実を告げられてしまった・・・はて、こういうときはどうするべきなのか?その条件とやらも一切明かす気はなさそうだし、こちらからこの声の主にコンタクトを取るのも無理そうだ。
となると、この世界から抜け出すことを目標にしてみるのがいいのだろう、と自分の目標が決まったものの、この草原からどう動けばいいの?と考えていると
「それでは、お名前をお決めください」
キレイな声が聞こえてきた、やはりこっちのがいい、とはいえ、名前か・・・あまり名前を考えるのは得意ではないのだけれど・・・
「キヤトでお願いします」
「わかりました、キヤトさまですね、今後名前の変更はできませんがよろしいですか?」
「はい」
「それではキヤトさま、始まりの町へと転送させていただきます」
「世界をお楽しみください」
その言葉が鍵だったのだろう、視界はまた暗転した・・・