ザイツェフさんと双子の魔法使い
受付の担当札をひっくり返して、自分が在宅なことを示しつつ、クランの工房へ向かった。
作業机の前で、小柄ながら筋肉質なドワーフの親方を見つけた。
「ザイツェフさん、こんにちは。弓のメンテナンスをお願いしたいのですが。」
「その声はユーリか。悪いが机の空いているところに置いといてくれ。」
彼は手元から目を離さずに答える。
指示通り、装備品の一式を置き、立派なひげを蓄えた彼に目を向ける。
ザイツェフさんは、このクランが抱える専属の技術者だ。
メンバーの武器、防具の生産やメンテナンスを一手に引き受けている。
僕はもともと、祖父の教えから、自分の装備は自分でメンテナンスをするものだと自負していたが、クランに入ってからザイツェフさんに装備を引っぺがされて、ピカピカに磨かれてしまった。
自分でメンテナンスをするよりもはるかに状態が良く、本職の人は凄いなぁという思いとともに、自分の数少ない矜持が木っ端みじんに打ち砕かれて、しばらく落ち込んだのは内緒だ。
作業の邪魔にならないように立ち去ろうとすると、入り口付近から話し声が聞こえてきた。
「ザイツェフのおっちゃん、杖の調整終わった?げ、ユーリじゃん。」
「ザイツェフさん、ユーリさん、ごきげんよう。」
赤髪の少女が毒づき、青髪の少女が丁寧に挨拶をした。
赤髪の少女の名はクララ、炎魔法を得意とする魔法使いだ。
青髪の少女の名はウララで、水魔法を得意とする魔法使いだ。
二人は双子であり、副団長のハービットさんを師匠と仰いでいる。
「おう、嬢ちゃんたち。仕事は終わっているから、持って行ってくれ。」
「「はーい!」」
二人は元気よく答えると、嬉しそうに各々の杖を抱えていった。
僕は彼女たちに声をかける。
「ウララちゃん、クララちゃん、ハービットさんは今どこにいるかわかるかい?」
「師匠か?学院のほうに行ってるんじゃねーかな?」
「はい、何やら調べ物があるそうです。」
メイベルさんが言っていたように、既にクランから離れているようだ。王国が経営している学院には、様々な資料が多く残されている。
おそらく、ハービットさんが帰ってくるまで時間がかかるだろう。
それまでに、自分の依頼書の処理をしてしまおう。
「二人ともありがとう。今はメイベルさんの代わりに僕が受付担当だから、何かあったら声をかけてね」
「えー、メイベル姉ちゃんじゃないのか。ユーリだけで大丈夫か?」
クララちゃんが不満そうに声を上げた。とても胸が痛い。
正直、メイベルさんのサポートが手厚すぎて、僕ではとても真似をすることができないのだ。
これはクララちゃんが正しい。
苦笑いを浮かべながらそそくさと退散し、受付に戻ると、自分の採取依頼の処理を行っていく。
その他の雑務も合わせて片付けていると、日が暮れたころにメイベルさんとハービットさんがクランに帰ってきた。
二人とも、神妙な面持ちをしていたことを覚えている。




