【Side メイベル】ユーリという新人2
「メイベルー!お疲れさまー!」
ユーリ君に魔物を紹介したフィーネちゃんが、私に声をかけてきた。
「フィーネちゃんお疲れ様。今日も元気いっぱいね。」
「うん!」
ニパッとした笑顔を振りまきながら、彼女が隣に座ってきた。
「それ、ユーリが受けた依頼書?」
彼女が手元の資料を見て訪ねてくる。
「ええ、そうよ。」
「へぇ、本当に瘴魔の森に行くんだねぇ。」
「…フィーネちゃんが瘴魔の森で活動するとしたら、一回も魔物に見つからずに最深部まで行けるかしら?」
彼女もうちのクランが抱える、凄腕の冒険者だ。彼女から見て、彼の評価はどうなるのだろうか?
「ええ?一回も魔物さんに出会わずにですか?ううん…無理!あの森生態系がおかしいもん!」
予想通りの回答が返ってきた。彼が向かったのは、そういう場所なのだ。
かつて、国が王都と西の港町をつなぐ直通の馬車道を作ろうとしていた時期があった。
その際に一番の問題になったのが、瘴魔の森だ。
広大な面積の森林に加え、他の地域以上に魔物の数も種類も多く、数多の生態系が危うい均衡の上で成り立っていた。
調査の結果、大規模な開発は、他の地域への魔物の流出を引き起こす恐れがあるとして、国は大々的な開拓依頼を禁止する方針を取った。
現在、瘴魔の森に対する依頼は、森の浅い部分へ出てきてしまった魔物の討伐依頼や、薬草などの採取依頼に限られている。
「索敵でいうと、ハウンドウルフのウーちゃんにやってもらうことが多かったけれど、ウーちゃんでも瘴魔の森で魔物を回避するのは難しいかしら?」
「森の浅いところは大丈夫だけど、中層以降は避けようとしても他の魔物さんにぶつかっちゃうから難しいかも。そう考えると、ユーリはウーちゃん以上に鼻が利いて凄いね!」
「多分、嗅覚だけで索敵しているわけではないと思うわよ。」
目をキラキラさせているフィーネちゃんに突っ込みを入れる。
実際、彼は狩人としての経験だけではなく、魔法も併用していると聞いたことがある。
魔法を使用できる人間が、狩人をしている事例は稀だ。
彼に狩人としての技術を教えたという祖父も、魔法は使っていなかったそうだ。
ではなぜ、魔法を併用しようと思ったのか聞いてみると、祖父の技術に追い付くため、仕方なく使い始めたとのこと。
しかも、現在の彼でも、全盛期の祖父には技量で全く追い付いていないそうだ。
本当に彼の祖父は人間なのか、甚だ疑問である。
そんなユーリ君自身も冒険者として相当な腕前であるはずなのだが、目標にしている祖父の壁が高すぎるのか、随分と自己評価が低いようだ。
普段のおどおどとした彼の姿を思い描きながら、私は無意識にため息をついた。
次回から主人公視点に戻ります。




