ドラゴン
あれから数日、シードラの住民たちが続々と運ばれてきた。
シードラの人々は大なり小なり火傷を負っており、特に最後に運ばれてきた患者達は、全身大やけどを負い、皮膚が衣服に張り付いているようなありさまだった。
王都の病院はすぐに満員になり、即席の治療スペースを作成して対応に当たっている。
彼らの様子から、シードラに訪れた惨劇の大きさをまざまざと見せつけられているようで、王都に住まう人々も戦々恐々としていた。
シードラの患者を受け入れ終わってしばらくしたのち、国はシードラを襲った魔物をドラゴンと断定、討伐は難しいと判断した。
ドラゴンを撃退し、遠くの地へ追いやる作戦を展開するようで、騎士だけでなく、その人員を冒険者からも募るようだ。
その報酬は一人当たり金貨300枚。慎ましく生活すれば、数十年生きていけるだけの金額を提示した。
国からの情報が出そろった頃、メイベルさんが再度クランメンバーを集めて話始めた。
「シードラに襲来したドラゴンは、炎の息吹を扱うようだわ。たった一息でシードラの町を全滅に追いやったそうよ。これはもう人間の手が出せる相手ではない…天災のようなものよ。」
メイベルさんが真面目な顔で語り続ける。
「国が提示した金貨300枚の報酬も、本人の死を前提として遺族に支払われるようなものよ。要するに、ドラゴンの餌として、おとりとして遠くに引っ張っていく役割というわけね。皆、不用意にこの依頼を受けないようにしてね。」
メイベルさんの言葉に全員がうなずく。
「シードラの方々には申し訳ないけれど、この依頼を受ける冒険者はいないでしょうね。既にシードラの惨状は国民に知れ渡っている。命を無謀に捨てに行くような人は、いくら何でも存在しないわ。」
申し訳なさそうに語るメイベルさんの話の直後、クランハウスのドアが勢いよく開き、スキンヘッドの大男がのしのしと室内へ入ってきた。
「おーい、お前ら!俺が帰ってきたぞー!」
その暑苦しさを懐かしく思いながら、団長の彼、グラディオスさんに目を向けた。
我らがクラン「郷里の憧憬」の創設者にして、王都一の腕力を誇る冒険者。
オーガと相撲をとったことがあると噂だが、オーガでお手玉をしたことがあるのは本当だ。
実際に見てドン引きしたのを覚えている。やはり彼がいるだけで安心感が違う。
「新しい仕事を持ってきたぞー!今度の仕事はなんと、ドラゴン退治だ!」
前言撤回、この人トラブルメーカーだ。
そういえば、僕もこの人に強引にクランに誘われて今に至るのだ。
ちらりと周囲を見回すと、みんな白い目で団長を見つめており、メイベルさんに至っては額に青筋が見えている。怖い。




