星屑の魔法学校 最終章
あの日から、五年が経った。
世界は、大きく変わった。
あの戦いのあと——
“虚空”の脅威は静まり、各地に残っていた歪みも、少しずつ消えていった。
その中心にいたのが——
「ユイ様、こちらの浄化も完了しました」
「ありがとう」
白いローブをまとったユイは、静かに微笑んだ。
かつて魔法が使えなかった少女は、今や——
“星の魔法”を完全に扱う存在になっていた。
でも。
どれだけ時が経っても、変わらないものがある。
(……まだかな)
夜空を見上げる。
あの日と同じように、星が輝いている。
「約束、したもんね」
小さく呟く。
“必ず迎えに行く”
その言葉を、ユイは一度も疑わなかった。
その時——
ふわり、と風が揺れた。
「……久しぶり」
聞き覚えのある声。
「……え」
ユイの心臓が、大きく跳ねる。
ゆっくりと振り返る。
そこにいたのは——
「……レオン?」
五年前と同じ、でも少し大人びた姿。
黒いコートを羽織り、静かに立っている。
「ちゃんと、生きてた」
レオンは、少しだけ照れたように笑った。
その瞬間。
ユイの視界が、滲む。
「……遅いよ」
震える声。
「ごめん」
レオンは苦笑する。
「ちょっと手こずった」
「ちょっとじゃないよ……!」
涙が溢れる。
次の瞬間——
ユイは走り出していた。
「レオン!!」
そのまま、強く抱きつく。
「……会いたかった」
レオンは、一瞬驚いたあと——
ゆっくりと、その背中に腕を回した。
「俺もだ」
静かな声。
でも、その一言に、五年分の想いが詰まっていた。
しばらく、二人は離れなかった。
やがて。
レオンが、そっとユイの肩に手を置く。
「……なあ」
「……なに?」
「約束、覚えてるか?」
ユイの心臓が、また強く鳴る。
「……うん」
レオンは、一歩後ろに下がった。
そして——
真っ直ぐ、ユイを見る。
「五年前、言ったよな」
静かに、でもはっきりと。
「迎えに来るって」
ユイは、小さく頷く。
レオンは、少しだけ深呼吸して——
「改めて言う」
その場に、そっと片膝をついた。
「ユイ」
「……っ」
「俺と、結婚してください」
風が、静かに吹いた。
星が、優しく瞬く。
ユイの目から、涙が零れる。
でもそれは——
もう、悲しい涙じゃなかった。
「……はい」
小さく、でも確かな声。
「喜んで」
その瞬間。
レオンが、安心したように笑った。
そして——
そっと、もう一度キスをした。
今度は、あの時よりもずっと長くて、優しいキスだった。
——数ヶ月後
ルミナス魔法学園。
その大広間は、今までにないほど華やかに飾られていた。
「きれい……」
純白のドレスに身を包んだユイが、少し照れながら立っている。
「……似合ってる」
隣で、レオンが小さく呟く。
「ほんと?」
「めちゃくちゃ」
その言葉に、ユイは少しだけ笑った。
周りには、仲間たち。
先生たち。
たくさんの祝福の声。
かつて、出会ったあの場所で。
二人は、永遠を誓う。
「——誓いますか?」
「はい」
声が重なる。
その瞬間。
大きな拍手が響いた。
そして——
空には、無数の星が輝いていた。
それはまるで——
二人の未来を祝福するように。




