星屑の魔法学校 第6章
崩れた隔離区画。
瓦礫と煙の中で、三人の魔力がぶつかり合う。
「ははっ、いいねぇ……!」
フードの男が狂ったように笑う。
「やっぱり、その力……最高だ!」
「黙れ」
レオンの声が低く響く。
黒い魔力が、今まで以上に膨れ上がる。
「ユイに触るな」
「っ……!」
ユイはその背中を見て、息を呑んだ。
(レオンの魔力……強すぎる)
まるで、飲み込まれそうな闇。
でも——
(怖くない)
それは、不思議と安心できる闇だった。
「いいのか?」
男がニヤリと笑う。
「そんな力、使いすぎたら……戻れなくなるぞ?」
「関係ない」
レオンは一歩踏み出す。
「全部終わらせる」
その瞬間。
ドォォォォォン!!!
衝撃が走る。
レオンの魔力が爆発的に広がり、空間そのものが歪む。
「くっ……!」
男が後退する。
「本気かよ……!」
でも——
次の瞬間。
レオンの動きが止まった。
「……っ」
「レオン!?」
膝をつく。
魔力が暴走しかけている。
「ほらな」
男が笑う。
「やっぱり制御できてねぇ」
その手に、黒い槍が現れる。
「これで終わりだ」
(このままじゃ——)
ユイの心臓が強く鳴る。
(レオンが……)
手を伸ばす。
「——やめて!!」
その瞬間。
ユイの中の星が、爆発した。
眩い光が空間を満たす。
「なっ……!?」
男が目を見開く。
ユイは、レオンの前に立っていた。
「もう、誰も傷つけさせない」
その声は、震えていなかった。
「二人まとめて消してやる!」
男が突っ込んでくる。
黒い槍が、一直線に迫る。
でも——
ユイは逃げなかった。
ただ、手を伸ばす。
「——信じてる」
その言葉。
次の瞬間。
レオンの手が、ユイの手を掴んだ。
「……ああ」
低く、でもはっきりとした声。
「俺もだ」
光と闇が、再び重なる。
今度は——
完全にひとつになった。
ドォォォォォォォン!!!
圧倒的な力が解き放たれる。
星の輝きと、虚空の力。
融合を超えた、“共鳴”。
「ば、化け物……!」
男の声が震える。
光に包まれ——
その存在は、跡形もなく消えた。
静寂。
戦いが、終わった。
ユイは、その場にふらりと倒れかける。
「ユイ!」
レオンが支える。
「大丈夫か!?」
「うん……ちょっと、力使いすぎたかも」
弱く笑うユイ。
しばらく、沈黙が続く。
でも——
今度は、逃げなかった。
「……なあ、ユイ」
レオンがぽつりと呟く。
「さっき、なんで前に出た」
「え?」
「死ぬかもしれなかったんだぞ」
ユイは、少しだけ考えてから——
静かに言った。
「だって」
一歩、近づく。
「レオンを失う方が、怖かったから」
その言葉に。
レオンの心臓が、大きく跳ねた。
「……ずるいな」
かすれた声。
「ほんとに」
「え?」
次の瞬間。
レオンがユイの腕を引いた。
ぐっと距離が縮まる。
「もう限界」
低い声。
「これ以上、我慢できない」
ユイの頬が赤くなる。
「レオン……?」
レオンは、まっすぐユイを見つめた。
逃げ場なんて、なかった。
「好きだ」
はっきりとした言葉。
「最初から、ずっと」
時間が止まったようだった。
「危ないって分かってる」
「一緒にいちゃいけないってのも」
「でも——」
「それでも、お前がいい」
ユイの目に、涙が滲む。
でも、それは悲しい涙じゃなかった。
「……私も」
小さく、でも確かに。
「レオンが好き」
その瞬間。
レオンの表情が崩れる。
「ほんとに……?」
「うん」
次の瞬間。
そっと——
レオンがユイに触れた。
優しく、ゆっくりと。
唇が重なる。
短くて、でも確かなキス。
離れたあと。
二人の距離は、もう元には戻らなかった。
「……これで、もう逃げられないな」
レオンが小さく笑う。
「うん」
ユイも、少し照れながら笑う。
でも——
その幸せな時間は、長くは続かなかった。
ゴォォォォ……
再び、空が唸る。
「……嘘でしょ」
ユイが空を見上げる。
そこには——
今までで最大の亀裂。
そして、その奥にいたのは。
今までの敵とは、明らかに違う存在。
「やっと会えた」
低く、圧倒的な声。
「“星の魔法”の持ち主」
世界の“本当の敵”が、姿を現した。




