星屑の魔法学校 第4章
翌日。
ユイとレオンの間には、今までとは違う静けさがあった。
「……」
「……」
並んで歩いているのに、どこかぎこちない。
(どう話せばいいんだろう)
ユイは何度も言葉を探す。
でも——
「……なあ」
先に口を開いたのは、レオンだった。
「昨日のこと、やっぱり——」
「気にしてないよ」
ユイはすぐに言った。
「え?」
「レオンが誰でも、関係ない」
その言葉に、レオンは少しだけ目を見開く。
「……強いな、お前」
「全然」
ユイは小さく笑う。
「怖いよ、正直」
「……」
「でも、それ以上に——」
少しだけ顔を赤くしながら、
「信じたいって思ったの」
その瞬間。
レオンの表情が、少しだけ柔らかくなった。
「……ほんと、ずるいよな」
「え?」
「そういうこと、簡単に言う」
「えぇ!?」
その時だった。
ドンッ!!
突然、校舎が大きく揺れた。
「きゃっ!」
「ユイ!」
レオンが咄嗟に支える。
外から悲鳴が聞こえる。
「また……!?」
二人は同時に外へ飛び出した。
空には、昨日よりも大きな亀裂が走っていた。
そこから現れる、無数の影。
「嘘……こんな数……!」
「完全に狙われてるな」
レオンが低く呟く。
「ユイを」
その時。
教師たちの声が響く。
「全生徒、避難せよ!」
「戦闘班は迎撃に回れ!」
学園全体が戦場と化す。
「ユイ、こっちだ!」
レオンが手を引く。
でもユイは、足を止めた。
「……私、逃げない」
「は!?」
「だって、私が原因なんでしょ?」
「違う!」
レオンが強く言い返す。
「お前は悪くない!」
「でも——」
「それでもだ!」
その声は、今までで一番強かった。
一瞬の沈黙。
そして——
ユイは、静かに言った。
「一緒に戦う」
「……!」
「レオンとなら、怖くない」
まっすぐな瞳。
その言葉に、レオンは息を呑む。
「……分かった」
レオンは覚悟を決めたように言った。
「絶対、離れるなよ」
「うん」
次の瞬間。
二人は同時に駆け出した。
襲いかかる虚空獣たち。
レオンが前に出る。
「下がってろ!」
黒い魔力が弾け、敵を薙ぎ払う。
圧倒的な力。
でも——
数が多すぎる。
「くそ……!」
その時。
ユイの中で、あの“星の光”がまた輝く。
(怖い……でも)
(守りたい)
手を伸ばす。
「——星よ、導いて」
光が広がる。
無数の星が、戦場を包み込む。
「レオン!」
「来い!」
二人の声が重なる。
その瞬間——
光と闇が交わった。
ドォォォォォン!!!
融合した魔法が爆発する。
星の輝きと、虚空の力。
相反するはずの力が、ひとつになる。
「な……!」
遠くで教師たちが驚く。
「融合魔法……!?」
本来、ありえない現象だった。
敵は一掃された。
空の亀裂も、ゆっくりと閉じていく。
戦いが終わり、静寂が戻る。
ユイは、その場に座り込んだ。
「はぁ……はぁ……」
「無事か!?」
レオンが駆け寄る。
「うん……なんとか」
「今の……すごかったぞ」
「レオンも」
二人は、少しだけ笑い合った。
その時。
学園長が現れた。
「……見事だ」
静かな声。
「だが——これは問題だ」
「問題……?」
ユイが顔を上げる。
「光と虚空の融合」
学園長の目が鋭くなる。
「それは、この世界の禁忌だ」
「……!」
周囲がざわつく。
「そんな……」
「でも、実際に……」
学園長はゆっくりと言った。
「ユイ、そしてレオン」
「……はい」
「君たちは、このまま学園に置いておくには危険すぎる」
「え……」
胸がざわつく。
嫌な予感。
「しばらくの間——」
学園長の言葉が、冷たく響く。
「隔離する」
「そんな……!」
ユイの声が震える。
でも——
レオンは何も言わなかった。
ただ、静かに拳を握りしめていた。
こうして。
二人は“守られる存在”から——
“管理される存在”へと変わる。
けれど。
本当の試練は、ここからだった。




