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星屑の魔法学校 第3章

翌朝。


学園の空気は、昨日とはまるで違っていた。


「……見られてる気がする」


ユイが小さく呟く。


廊下を歩くだけで、周りの生徒たちの視線が集まる。


「そりゃそうだろ」


隣のレオンが肩をすくめた。


「一人で“虚空獣”倒したんだぞ」


「そ、そんなつもりじゃ……」


「分かってるよ」


レオンは軽く笑う。


「でもな——それだけじゃない」


「え?」


レオンの表情が、少しだけ真剣になる。


「お前の力、“普通の魔法”じゃない」


授業が終わった後。


ユイは、学園長に呼び出された。


案内されたのは、最上階の塔。


重厚な扉の奥には——


「……来たか」


白いローブをまとった老人が座っていた。


「君が、星の魔法の使い手だね」


「……はい」


ユイは緊張しながら頷く。


「その力は、この世界において特別だ」


学園長はゆっくりと立ち上がる。


「“星の魔法”は、世界の均衡を保つ力——そして同時に、壊す力でもある」


「壊す……?」


「扱いを誤れば、この世界そのものを崩壊させる可能性がある」


その言葉に、ユイの手が震えた。


「で、でも……私……」


「恐れる必要はない」


学園長は穏やかに言った。


「ただし——君の力を狙う者が現れるだろう」


「……!」


「昨日の虚空獣も、その前触れに過ぎない」


部屋を出ると、レオンが壁にもたれて待っていた。


「終わった?」


「うん……」


ユイは少し俯く。


「私の力、危ないものなんだって」


「知ってる」


「え?」


レオンは、あっさり言った。


「最初から分かってた」


「……なんで?」


その問いに、レオンは一瞬だけ言葉を詰まらせた。


「……昔、似た話を聞いたことがある」


「それって——」


「でも、お前は違う」


レオンは強く言い切る。


「お前は、お前だ」


その言葉に、胸が少しだけ軽くなる。


その夜。


ユイは眠れなかった。


(私の力で、世界が壊れるかもしれない……)


そんな考えが、頭から離れない。


「……外、出よう」


気分を変えようと、そっと部屋を抜け出す。


向かったのは、あの裏庭。


レオンと初めて特訓した場所。


夜空には、あの星がまた輝いていた。


「……あれ」


ふと気づく。


誰かいる。


黒いフードをかぶった人物が、庭の中央に立っていた。


「——来たか、“星の器”」


低い声。


「だ、誰……!?」


ユイは後ずさる。


「お前の力、もらいに来た」


その瞬間。


地面に黒い魔法陣が広がる。


「っ——!」


体が動かない。


「これで終わりだ」


フードの人物が手をかざした、その時——


「ユイから離れろ!」


風を切る音。


レオンが飛び込んできた。


バチィン!!


魔法と魔法がぶつかる。


「……やっぱり来たか」


レオンは低く呟く。


「“あいつら”が」


「レオン……!」


「下がってろ」


いつもの優しい声じゃない。


戦う者の声だった。


フードの男が笑う。


「守るつもりか?」


「当たり前だ」


「お前に、その資格があるのか?」


「……ある」


レオンの目が鋭くなる。


その瞬間——


彼の体から、黒い魔力が溢れた。


「え……」


ユイは息を呑む。


それは、今まで見たことのない力だった。


「レオン……?」


「……ごめん」


レオンは、振り返らずに言った。


「隠してて」


「——俺、“虚空側”の人間なんだ」


空気が凍りつく。


「な……に、それ……」


「つまり、敵ってことだ」


フードの男が笑う。


「裏切り者め」


「うるさい」


レオンは冷たく言い放つ。


「俺は、俺の意思でここにいる」


ユイの頭が追いつかない。


でも——


(それでも)


レオンが、自分を守ってくれている。


それだけは、分かる。


激しい戦闘が始まる。


黒と黒の魔力がぶつかり合い、空間が歪む。


「ちっ……やるな」


フードの男が後退する。


「今日は引く」


「逃がすか!」


レオンが追おうとするが——


男は闇に溶けるように消えた。


静寂が戻る。


レオンは、ゆっくりと振り返った。


「……ユイ」


その目には、迷いがあった。


「さっきの……聞いたよね」


ユイは、少し震えながら頷く。


「俺は……お前の敵かもしれない」


「……違う」


ユイは、小さく首を振った。


「だって、守ってくれた」


「それは——」


「それが全部だよ」


まっすぐな目だった。


レオンは、言葉を失う。


そして。


ユイは一歩、近づいた。


「ねえ、レオン」


「……なに」


「私は、あなたを信じたい」


その言葉に——


レオンの心が、強く揺れた。


その夜。


二人の距離は、確実に変わった。


でも同時に——


運命は、さらに残酷な方向へ動き出していた。

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