星屑の魔法学校 第1章
春の夜、空にひとつだけ異様に輝く星があった。
その光は、普通の人には見えない。
けれど——
「やっと見つけた」
その光に手を伸ばした少女・ユイの前に、突然、銀色の扉が現れた。気づけば、ユイは知らない場所に立っていた。
目の前には、空に浮かぶ巨大な学園。
塔がいくつも連なり、橋で繋がれ、空中に魔法陣がゆっくり回っている。
「ここは……どこ?」
「ようこそ、《ルミナス魔法学園》へ」
振り向くと、黒いローブをまとった少年が立っていた。
銀髪に、夜空みたいな青い瞳。
「え……?」
「君、選ばれたんだよ。異世界から」
「……は?」
ユイは完全に混乱していた。
ルミナス魔法学園。
そこは、魔法を扱う才能を持つ者だけが集められる場所だった。
しかも——ユイは、この世界の人間ではない。
「異世界人は珍しいけど、たまに来るんだ」
少年は軽く肩をすくめた。
「俺はレオン。案内係みたいなもん」
「ユイです……」
「よろしく。……っていうか、もう入学決まってるから」
「え!?」
学園での生活は、すべてが非現実だった。
空を飛ぶ授業。
精霊を呼び出す実習。
魔法で戦う試験。
でもユイには——
「なんで……何も出ないの……?」
魔法が使えなかった。
呪文を唱えても、杖を振っても、何も起きない。
「……まあ、最初はそんなもんだよ」
レオンはそう言うけど、
他の生徒たちは当たり前のように魔法を使っていた。
ユイだけが、取り残されている。
ある日。
学園の裏庭で、一人で練習していると——
「そんなやり方じゃ、一生できないよ」
レオンだった。
「……やっぱり、私って向いてないのかな」
思わず、弱音がこぼれる。
すると、レオンは少しだけ真面目な顔になった。
「違うよ」
「え?」
「君の魔力、普通じゃない。むしろ——強すぎる」
「……え?」
「制御できてないだけ」
そう言って、レオンはユイの手を取った。
「一緒にやる」
「っ……」
突然の距離に、心臓が跳ねる。
「集中して。自分の中の“光”を感じて」
優しい声だった。
その瞬間。
ユイの中で、何かが弾けた。
パァァァァン——
星のような光が一気に広がり、空に魔法陣が浮かび上がる。
「すご……」
レオンが小さく呟いた。
ユイの魔法は、今まで見たどの魔法よりも美しく、強かった。
その日から、ユイの世界は変わった。
レオンと一緒に特訓して、少しずつ魔法を扱えるようになっていく。
そして——
「ねえ、レオン」
「ん?」
「なんで、そんなに優しいの?」
ふと聞いた質問に、レオンは少しだけ目を逸らした。
「……君が、特別だから」
「え?」
「いや、なんでもない」
照れたように笑うその顔に、ユイの胸がじんわり熱くなる。
でも、この学園には秘密があった。
ユイの力は、“星の魔法”。
それは——世界の均衡を崩すほどの力だった。
「ユイを、このままにしておくわけにはいかない」
学園の上層部が動き始める。
そして——
「俺が守る」
レオンは、ユイの前に立った。
「何があっても」
その言葉は、嘘じゃなかった。
星が輝く夜。
ふたりの運命が、大きく動き出す——。




