クリスマスの朝に天国から届いた合い言葉は
なろうラジオ大賞参加作品です。
「…これでよし」
12月24日 深夜。
僕はリビングのツリーの脇に包みを置き、ふぅと息をついた。
中身は、娘の星来がずっと欲しがっていた、空色のテディベア。
本当なら、妻の智奈と一緒にこの瞬間を分かち合いたかった。けれど、智奈がこの春に病気で空の星になったため、それはもう叶わない。
「パパ、サンタさんにお願いする時はね、合言葉が必要なんだよ?」
僕はリビングで1人珈琲を飲みながら、数日前の星来の言葉を思い出していた。
「合言葉?」
「うん。でもね、星来もまだ知らないの。パパ知ってる?」
「う〜ん。分かんないなぁ」
…あれは、一体何だったんだろう?
翌朝。
リビングから聞こえる星来の「わあぁっ!」という歓声で、僕は目を覚ました。
「パパ見て! サンタさん、本当に来てくれたよ!やったあ!」
空色のテディベアを抱きしめ、星来は部屋中を飛び跳ねて喜んでいる。
その笑顔は、驚くほど智奈に似ていた。
「よかったね、星来。ところで…合言葉は言えたの?」
僕が聞くと、星来は少しだけ不思議そうな顔をして、小さなカードを差し出した。
「あのね、これに書いてあったの。サンタさんの合言葉。会えなかったけど、ちゃんと言えたよ」
「………?」
緑色に赤と白のラインが入ったカード。
こんなカード、入れた覚えがない。
僕は訝しんでカードを開くと、そこには見覚えのある、柔らかで力強い文字が並んでいた。
『合言葉は“みんながサンタクロース”』
それは智奈が生前、星来によく話していた物語の言葉。
君はいつも言っていたよね。
「みんなが誰かのサンタクロースになれば、世界中から争いがなくなるのに」って。
僕は穏やかで優しい君らしいって、いつも笑いながら聞いていたっけ。
……あれ?カードが2枚?
こっちにも何か書いて……
『聖、一人で頑張りすぎないでね。私はずっとそばにいるから。愛してるわ。メリークリスマス!』
「パパ… 泣いてるの?」
星来が小さな手で、僕の頬を拭う。僕は星来を抱きしめた。小さくて柔らかい温かさが伝わってくる。
「……なんでもないよ。サンタさんの合言葉をね、パパも思い出したんだ」
姿は見えなくても、愛する人の気配は感じる。智奈…そこにいるんだろう?
「メリークリスマス、星来。ママ」
「メリークリスマス、パパ。ママ!」
窓の外を見れば、真っ青な冬空が広がっている。寒いけど、でもなんてあたたかい日なんだろう。
君が側に居てくれている。
こんなに嬉しい事はない。
ありがとう、智奈。
お読みいただきありがとうございました。
これでお題コンプリートです。




