九話 野菜を食べました
九話 野菜を食べました。
みんな野菜を焼き始め、野菜から匂いが解き放たれる。サイズは小さく切られたとうもろこしを網に乗っけた。すると黒星が何やら小さな瓶を出した。
「これを塗れ」
瓶とともにハケまで渡してくれた。
「何これ」
戸惑うサイズから取り返し、紙皿に瓶の中の液体を落として、ハケを押し付ける。
「塗れ」
サイズは頷き、とうもろこしに塗る。醤油の焼ける香ばしい匂いがする。
「すごいすごい!」
サイズはしゃいで、醤油を塗りたくる。
「あんまり塗るとしょっぱくなる。ほどほどにな」
「あい」
サイズはとうもろこしに注目した。
早く食べたいと思っているのが、口の端から垂れるヨダレで丸分かりだ。
「我慢出来ない!」
サイズはとうもろこしを皿に移してかぶりつく。
「あつっ!」
当然だが、焼きたては熱い。歯型をつけただけで悶絶していた。
「どれ」
アックスがサイズのとうもろこしに手を伸ばす。
「おい、待て」
エクスカリパーがアックスの手を制し、目があった彼を動けなくした。
「サイズのとうもろこしだろう。貴族が卑しい真似をするな。それとも別の目的があるのか?」
「サイテー」
「お前、懲りないよな」
アックスは白い目で見られていた。それでも彼は落ち着いていた。なかなか強いメンタルを持っている。
「俺にも野菜を焼かせてくれないか?」
エクスカリパーに声を掛けて、解除してもらっていた。
アックスはとうもろこし焼き、エクスカリパーはピーマンを焼く。黒星は網の自分の場所とサイズの場所に玉ねぎを置いた。
「次はこれだ」
「私が焼きたいのを焼くの」
サイズは黒星の世話焼きを拒否した。
「すまんな」
乗っけた玉ねぎを引っ込めるように黒星はトングを伸ばす。
「あ、それは食べるから」
「良いのか?」
サイズは頷いて、とうもろこしと向き合う。
要のほうも野菜が焼き上がったので、マダム達に渡しておいた。肉を食べたい小人達からはあまり歓迎されてないようだった。