十三話 ステーキを焼きました
十三話 ステーキを焼きました
要はステーキをミディアムに焼き、切って、小皿に乗せてサイズに渡した。
「俺からのサービス」
「はえ?」
「焼肉とは違う。良かったな。サイズ」
エクスカリパーが頭を撫でてくる。
涙は止まったが、気持ちは食べ物程度でおさまるわけもない。
「サイズはこれから大人になるんだ。今は子供のままで良いんだよ」
「でも……」
「大人になれば師匠は子供だからとは言えなくなる。それまでにやる事はいっぱいある。だろ?」
「やる事?」
「まずはそのステーキを食べる事さ。サイズとエスパーダだけだから」
「うん……」
サイズはステーキを食べる。
「焼肉と違う」
「良かったな」
黒星が声を掛ける。
「大人になったら答えが変わるの?」
サイズは黒星に直で聞いた。
「さあな。その時にならないと分からない。お前も大人になった時、別の人が好きかもしれない」
「なんか、ズルい」
「大人はズルい。肉を食べさせなくするために野菜から食べさせたり、満腹になったらステーキを出してくる。お前も大人になれば分かる」
煙にまくような答えにサイズは不満顔だ。でも涙は引っ込んだ。
「要、ステーキおかわり!」
皿を指差し、叫ぶ。
「ダメだ。俺は肉を焼いていて食ってない」
いつも折れている要が強めに拒否してきた。
「ダメ?」
サイズは甘えてくる。
「ダメ!」
要は頑なだった。
「ケチ」
「サイズはサイズだから。エスパーダじゃないし」
「むー」
まだ不満顔なサイズをそのままにして、エスパーダの側に戻る。
「見せたらそうなるでしょ」
「確かに」
スミス姉妹が文句ありそうな顔をしている。そしてマダムも不満を口にする。
「要さんがそんな人だなんて思いませんでしたわ」
「母さん、やめなよ」
「フェアじゃないわ」
「ちょっと思うところがありまして」
要はなんと言われても、決してステーキを渡さなかった。




