一話 サイズは気合いが入ってます
一話 サイズは気合いが入ってます
とうとうこの日がやってきた。小人達との宴。焼肉パーティーだ。
前日には、オーストラリア産牛肉のお買い得パックを三つ買い込み、レモンサワーもたくさん仕入れた。あと、秘密兵器も。
要はあの葬式以来、朝起きて、仕事へ行き、買い物して、料理して、寝るだけの生活を送っていた。
エスパーダは相変わらず、要の前で横たわり、スマホをいじってる。ゲームではあまり課金もしなくなった。お目当てのキャラが登場していないらしい。要はガチ勢ではないので、分からないが。
「夏に焼肉とは」
「文句言わない。要さん、野菜買ってきました」
能と就も準備側。能は既にサボる気配を見せてはいるが、助けてもらった恩があるからと言い含めてある。それに監視役(就)もは心配はしていない。
「サンキュー、正直肉までしか頭になかった。助かるよ」
「はい」
就は嬉しそうだ。
「お金ちょうだいよ」
「どうせ肉食うだろ。小人達より」
「とーぜん」
「威張って言うもんじゃない。俺達も助けてもらったんだから」
「だから野菜でみんなの腹を膨らませて肉を余らせようって……。就も賛成してくれたじゃん」
「しーっ」
就も能と似たり寄ったりみたいだ。
「こんな恥ずかしい二人で、ごめんね」
サイズが能のポケットから出てきた。上下ミリタリールックで、目の下に黒いラインを入れ、迷彩柄のヘルメットを装備し、武器である銃はホルスターに入れている。
「サイズはなぜそんな格好を……」
要が聞くとサイズは敬礼して言った。
「焼肉は戦いだって教えてもらったの。能や就も敵なんだって」
教育とは恐ろしいものだ。最初おとなしそうだったサイズが武闘派になりつつある。この調子なら、自身でアックスから身を守れるかもしれない。
「分かった。負けないよ」
エススパーダがサイズの肩に手を置いた。
「うん、頑張る」
「私も容赦しないから」
エスパーダは笑った。この後、サイズは大人の本気を目の当たりにして、理不尽にぶち当たるだろう。だがそれも仕方のない事だ。
これも食育である。