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異なる結末: 3.2 深見の選択と結末


深見は、武沢の静かな言葉と、金子の狂気じみた嘲笑を前に、激しく葛藤していた。時間がない。司令部からの爆撃は刻一刻と迫っている。この二人を「処理」することが、部下たちの、そして監禁されている武沢の仲間たちの唯一の生存手段だという。


「まだ、間に合う」深見の声が震えた。彼の手には、金子が突きつけた起爆スイッチが握られている。このボタン一つで、すべてを終わらせることができる。だが、その結末は、あまりにも重い。


深見は、意を決したように武沢と金子に向き直った。彼の顔には、それまでの逡巡を押し殺した、固い決意が刻まれている。


その日の数時間後。司令部のブリーフィングルームでは、作戦終了の報告がなされていた。大型スクリーンには、作戦地域から送られてきた一枚の画像が映し出されている。そこには、血に濡れた瓦礫の脇に、横たわる二つの遺体が写っていた。一人は元副官、武沢。もう一人は、CIA工作員である金子のものだ。彼らの表情は、苦痛に歪むことなく、むしろどこか安堵したかのように見えた。


「目標の『病原体』は確実に処理されたと確認されました」報告官の声が響く。


司令官は、無表情でその画像を見つめていた。彼の視線は、遺体の一人、金子の顔に一瞬だけ留まった。彼らの「裏切り」の代償として、自らの命を差し出したのか。それとも、これが彼らにとっての「任務完了」だったのか。


深見たちは無事、部隊へと帰還した。彼らの身体には傷一つなく、表面上は任務を完遂した英雄として扱われた。しかし、彼らの心には、砂漠で下したあの夜の選択が、重い影を落とし続けていた。特に深見の記憶には、武沢の穏やかな表情と、金子の虚ろな笑みが焼き付いていた。


彼らは、生き残った。だが、その代償として、何を守り、何を失ったのか。彼らが背負うことになったのは、単なる「裏切り」の罪だけではない。それは、戦場の狂気の中で、人間性そのものが問われた選択の重みだった。



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