最終回 はるか高みを目指して……
「しっかしなんだなあ! あんな勝てるフラグ立ってたのに、負ける……やっぱりエンツーだよなあ! アハハ!」
試合が終わった後の控え室。
そこで意気消沈中の僕、ユーノさん、シールちゃんに母様と兄さん……そして、嘲笑ってるエーくん。
エーくんとは、僕が生徒Aと呼んでた子です。
※シールと会ったお話にいた子。
「そこの名も知らぬ生徒A……わたくしのエクスに対する暴言……捨て置けませんわ! 殺す!」
おかんむりのユーノさんはエーくんに魔法を放とうと魔法陣を展開。
「ひえええ!」
「ユーノさん。いいから」
不服そうではあるが、魔法を取り下げるユーノさん。
たまたまだけど、名前あってたよユーノさん。
「ごめんねぇエクスさん。やっぱりぃ、あたしはお兄ちゃんの負けは願えないっていうかぁ……」
シールちゃんが珍しくシュンとしていた。
ブラコンな彼女の事だ、あの時の応援くらい予想できたはず。なのに驚いてしまったのは僕の落ち度だよ。別に相棒に裏切られただなんて思っちゃいないよ。
安心させるように僕は頭を撫でてあげる。
「気にしなくていいよ。それにこれで魔王の座を取られたってわけでもないんだから」
「エヘヘ……」
そうだ。今回のはただの学園の催し。これで魔王の座が決まるだとか、そういう話ではないんだからね。
僕の挑戦はこれで終わったわけじゃない。
「エヘヘ~エクスさんも優しいから好き~」
「キイイ! 小娘小娘小娘小娘小娘小娘小娘小娘小娘小娘~!!」
ああ、またユーノさんがハンカチ噛みしめてちぎってる。僕があげたやつだね。
「エクス! わたくしも応援したのですわよ! お礼の一つくら……」
「うん。ユーノさんの声援も聞こえてたよ。とてもありがたかった」
素直に僕は彼女に微笑んだ。
ユーノさんは顔を赤くしてたじろぐ。
実際よく聞こえたからね……それだけの大きな声の声援だったわけだ。嬉しかったな本当に。
「なんだかんだ僕を想ってくれてたんだなって思うと、とても嬉しかった。やはり好きだなユーノさん」
うん。母様に愛されてるとわかってからは、人の愛情を感じれるようになってきてる。
思い過ごしの可能性もあるけど、僕は一部の人には好かれてるのかもって、ポジティブになれてきたよ。
……ユーノさん? なんか鼻血出てますよ?
「げ、言質……言質言質言質言質言質言質! はいもう確定ですわ! け、けけけけけけけけけ結婚結婚結婚結婚結婚! だ、第一夫人はわたくしで確定! 勝者はわたくし負けるの小娘勝者はわたくし負けるの小娘!」
「なに言ってんのこのデブ嬢ぉ~」
「ちょっとエクスぅ~おかあさんが第一夫人じゃないの? 嫉妬しちゃうなあ~」
「エクスモテモテじゃんか~誰が義妹になるのか楽しみだな~」
フフ。なんかこの騒がしい感じ……とても癒される……
その中心に僕がいる。それはとても幸せな事だと実感できるよ……
「「エクス・リコード! ワイズ様の血液浴びたでしょ! 寄越しなさい!」」
え、誰? 三人の綺麗な女性達が乱入してきた。
「ダリア」「ブラス」「リューカ」
「「三人揃ってダブリュー! ワイズ様親衛隊よ! 早く身ぐるみ寄越しなさい!」」
「え、え?」
なんか僕の衣服を脱がせようとしてきた。ちょ、ちょっと勘弁してくださいよ!
「こ、こら! わたくしのエクスになになさるの! や、やめなさい~」
あの、ユーノさん。そうは言いながら、見てるだけで助けてくれないのはどういう事ですかね?
というか脱がされそうになってる僕をガン見しないでください。さすがに恥ずかしい……
「あははははは! エクスさんすっぽんぽんにされそうだねぇ!」
シールちゃんもめっちゃ笑うだけで助けてくれない……
「あらら。エクスモテモテね~おかあさん嫉妬しちゃうな~もうおかあさん含めたみんなと重婚する?」
「エクスはリコード家継ぐの確定だし、重婚しても責任とれそうだからありかもな~」
あの、母様と兄さんまでノータッチなんですか?
「お、おいエクス・リコードとシール・デュラミス! このおれ、オーリ・マキュラスが励ましに来てやったぞ!」
あ、オーリ……そういえば応援してくれたよね。ありがとう。
……誰もオーリに気づいてないけど僕以外。
「そ、そこでだ! お、おれがお前達の友達になってやってもいいぞ~? 嬉しいだろ? そうかそうか嬉しいか!」
……まあ改心したのなら、僕としてはかまわないけど……
「おらあ! まず上着一丁!」
うわ、上着取られた!
そしてその勢いで後ろにいたオーリが殴られるように吹き飛ばされた!?
「おぎゃああ!」
「んん? 今赤ちゃんみたいな声しなかった?」
「空耳でしょ」
哀れオーリ……
というかこの親衛隊強いな!
「おらあ! ワイズ様の髪の毛とかもついてるかもしれないから、他の服も、スボンもパンツも寄越しなさい!」
「え、さすがに勘弁し……」
「問答無用!」
ヤバい身体能力は戻ってるし、魔力も枯渇中……て、抵抗できない!
「……や、やめなさいですわ~ドキドキ……」
ドキドキじゃないですよユーノさん!
「やあ。お取り込み中のようだね」
――!? わ、ワイズ!? た、助け……
「わあ! お兄ちゃん!」
シールちゃんはワイズに駆け寄ると、頭を撫でられている。
というか親衛隊の人! 想い人後ろにいる! そっちに集中して!
「あ、ワイズ様!」
そうそう!
「ブラス! あんたは身ぐるみ剥いでなさい! ワイズ様~ん」
なんで!? 全員でワイズのところに行きなよ!
「早く身ぐるみ剥いでわたしもワイズ様の元に……えいえい」
やめてくれ……
とまあ、一人孤独と思っていた僕だったけど……シールちゃんと出会い、上に行ける希望を持てた事で、周りに人が集まるようになった。
母様とも和解できた……
試合には負けちゃったけど、これで終わりじゃない。いい線までいったんだ。僕はまだまだ強くなれる……
家族のために魔王になろうとしたんだから、解決したならもういいだろって、思う人もいるかもしれない。
でも、魔王を目指したから今があるんだ。だから僕は今後も魔王を目指すよ。
そしていつか、永遠ナンバーツーを返上してみせる。
今は二番にトラウマなくなってきたけど……どうせなら一番を目指したいからね……
僕は今後もこの夢幻学園で友人達と切磋琢磨し、相棒のシールちゃんと共に、一番のワイズを目指すよ。家族の応援に答えないとだし。
さあ……負けてくよくよしてられない。また頑張ろう。
……僕の服が全てひんむかれたかどうかはご想像にお任せします。
「エクスのエクスのエクスの……グフフ」
ユーノさん……何でも言うこと聞くから助けてよ……
――完。




