58話 決着
「やったか……? なんて思ったりするかい?」
「……まさか」
煙が晴れると、平然と立つワイズの姿があった。
そりゃあそうだよね。そんな簡単に倒せる相手じゃない。
完全にとらえたと思ったんだけどね……
大量に射出した武器の類いは、ワイズの水の圧力でひしゃげ、使い物にならなくされていた。
ワイズはおそらく、全身から瞬時に魔力を放出。そうして作られた水魔法の壁が、僕の武器を全て潰して見せたのだろう。
……本来は僕も特攻するところだったのだけど、あえてそうしなかった。正解だったね。
僕もそのまま切りにかかったら圧力で大ダメージは避けられなかったと思う。
――でも。
ピチョリと水の音が静かに聞こえる。
ワイズの水じゃない。
ワイズの腕から流れる黄緑色の……血だ。
そう血だ。
今まで流したことがないと豪語してきたワイズの……血液。
『血?』『嘘!?』『ワイズ様の!?』『ワイズ様の血液欲しい』
観客の騒然とした声が聞こえる……
そりゃあ驚くよね。何せ流したことがないと言ってたんだから。
「エクスくんさすがだ。初めてだよ、血を流したのは」
「悪いね」
「血か……うん、痛いね」
……初めて感じたみたいに言うね……
「でもチャンスだと思うよ? わたしはまともに怪我したことがない。つまり痛みに慣れてない。そんな痛みで隙ができるかも」
まさか。そんなことで怯むような男か君が。
悪いけど、油断なんて一切しない。確実に慎重に……
倒す!
またワイズ全周囲に魔法陣が現れる。
「なるほど。セットしたのは一つではなかったわけか」
そう言った瞬間、ワイズは全方位に水のレーザーを無動作で放つ。
魔法陣全てが一瞬で射貫かれる。
「だよね」
そして貫かれた瞬間、すぐ隣に別の魔法陣が開く!
「一体いくつ仕込んだんだい」
「さあね!」
魔法陣から武器が射出! それをまた射貫きにかかるワイズ。
そしてそんな状態で僕は接近戦を仕掛ける!
ワイズは水の剣で僕の攻撃をさばきつつ、レーザーで的確に飛んでくる武器と魔法陣を射貫く。
一度にどれだけの行動できるんだよ君は!
「その武器、濡れてるね」
その一言にはっとする。
僕が持つ剣、これはワイズの水の剣とぶつかることで……濡れていた。
そんな剣の水滴から、水流が発生し、僕を飲み込み……圧力でダメージを与えてくる!
「――がはっ!?」
「まだだ」
完全に怯んだ僕に追撃。水のレーザーが一斉に放たれ、僕の両肩、両足、胸をぶち抜かれた。
「がっ……」
いくら空間を出れば何もなかったことになるとはいえ、痛みはちゃんと感じる……
当てられた部分は貫通し、血が吹き出る……
「まだだ」
水の剣による飛ぶ斬撃を放つワイズ。僕はなんとか体を動かし回避に動くが……左腕を切り落とされた……
飛ぶ斬撃なんて高度な技、簡単に放つなよ……
だが、まだ生きてる。
まだ剣を握る右手がある!
「そして……最後の賭けだ」
ワイズの立ち位置に巨大な魔法陣が浮かびあがる。
「――!?」
さすがのワイズ、君でも自分の立ち位置に魔法陣が現れるとは……思わなかったようだね。
それと同時に上空からも魔法陣が発生……
逃げ場はない!
「黄金幻想武具!」
上空と地中から大量の武具がワイズを切り刻む……
不意をつかれたワイズは為す術がなく、全てを受ける。
そして……まだ終わらない!
「黄金剣矢!」
僕の十八番、超スピードで放たれる剣の矢……さらに!
僕自身も接近し……切りかかる。
ワイズは攻撃を受け続けている……
――勝てる!
「今ですわエクス!」
「エクス! 勝って!」
「いけえエクス!」
ユーノさん、母様、兄さんの声援……そして……
「一位が負ける!? よっしゃいけえ!」「エンツー返上しろ!」
観客の男子達の声援までも……
勝つことを諦め、ワイズに鬱憤感じてた生徒たちかもしれない。
「エンツ、エクス! お前が最強だあ!」
――!? オーリ!? まさか……退学処分になったのにわざわざ……
元理事長を恩赦した義理なのかなんなのかはわからない……
でも、嬉しいものだね。
ワイズ親衛隊の女性陣の応援は、僕への声援でかきけされていた……
会場は……僕の応援一色……
嬉しい……
僕は……存在していいと……実感できる。
僕は……こんなにもみんなから愛される男になりましたよ。母様……そして、イースおかあさん。
生んでくれて、育ててくれて……
「ありがとう!」
僕の最後の一撃が……ワイズに届く……
僕の……勝ちだ!
「お兄ちゃん負けないでぇ!!」
「え?」「え?」「え?」
「……え?」
シールちゃんの、ワイズへの声援……そして……
「悪いねエクスくん。シールにカッコ悪い所……見せられないんだ」
僕の一撃はワイズを捉え切り裂いた……が!
ワイズの姿は水晶に変わっていた……か、変わり身……
「チェックメイト。水晶烈斬」
背後から現れたワイズの目にも映らない斬撃の雨。
僕は全てをくらい切り刻まれ……
「や、やっぱり……僕は、永遠……ナンバーツーか……」
僕はこんな勝てる雰囲気にも関わらず……無様に地面に倒れた。




