49話 完成する必殺技
「お前達の命を奪えとは言われてねえ……だが、ワイズ討伐の邪魔するってんなら容赦はしねえ。それに、オレは今の力を試したい……二位のお前に勝てれば、ワイズに届く可能性があるからな」
「悪いけど、僕に勝てるくらいでワイズに太刀打ちできるかはわからないよ? 僕から見てもワイズははるかに高い壁だから」
「ああ……そうかよ!」
ジェイスは動く!
は、速い!? 彼の走る速度は尋常ではなかった。
バカな、今の今まで歩くことすらできなかった人物がこれほどの速度を!? シールちゃんには及ばないまでも、身体能力は学園で上位に入ってもおかしくないぞこの速さは!
歩き方すらまともにわからないはずなのに……
間違いない。こんな事ができてなんの副作用もないなんて思えない。
理事長、あんたはろくでもない手を使い、彼の足を治したんだな……
ジェイス元々の戦術は、風魔法を主体とした遠距離攻撃。歩けないゆえに、相手にはできるだけ近寄らないように戦う……そういうものだった。
だが風、つまり木属性はどちらかといえば近距離戦にて力を発揮する属性。その強みを彼は使えてなかったわけだ。
だが、身体能力を得た彼は……
その近距離戦ができる!
「波動波!」
僕に近寄り、拳から放たれる強力な風圧。
僕は黄金の盾を生成し、ガード。
僕の金属性は木に強い。相性でいえばこちらの有利。だが油断はできない。
圧倒的身体能力による、風魔法……この上なく厄介……
「おらおらおらおら!」
止めどなく放たれる風、風、風!
移動しながら風魔法を放つゆえに、四方八方から風圧が僕を狙う。
完全に防戦一方。
守ることしか、できずにいる。
強い。相性の良さを加味しても、容易に勝てるような相手ではない。
先の二人、エイチとエフンよりも数段強い。
僕とユーノさんの域に達してるのは間違いない。
ワイズには及ばないけどね……
だが、負けるわけにはいかない。彼が身体能力を得て強くなったというのなら……
僕も同じ手を使わせてもらう。
僕はシールちゃんを見る。彼女は視線に気づき頷く。
【魔導転移】
シールちゃんの身体能力が僕へと送られる……
限界ギリギリレベル、シールちゃんの身体能力をほぼ手中におさめた。
フルパワーでの戦闘は初めてだ。悪いがジェイス、この力を試させてもらう。
僕はジェイスの風圧を、超スピードで回避。
おそらく、僕が突然消えたかのように錯覚したことだろう。
「――消えた!?」
ほらね。
シールちゃんの全速力は、並みの魔族ではとらえられない。
ジェイスも速いけど、シールちゃんのそれとは比較にならない。
僕はジェイスの周囲を駆け回りながら、次々に武器を生成しては置いていく。
気づけばジェイスの周囲全体を、僕の武器が取り囲んでいた。
「な、なあ!? い、いつの間に!?」
この圧倒的速度と僕の武器生成能力速度を合わせれば、ものの数秒で、周囲に武器を囲わせるなんて造作もない。
僕の速度を見きれないジェイスにしてみれば、突然武器が現れたように錯覚することだろう。
悪いが、決めさせてもらう。
同情はするが、それで魔族一人の命を奪っていい話にはならないからね。所詮私利私欲の範疇だから。
「黄金幻想武具」
囲んだ武器の数々がジェイスを襲う。そして、武器を装備した僕自身も……
圧倒的速度で四方八方から襲ってくる武器。ジェイスは風圧を全開にし、武器を弾こうとする。
――だが、遅い。
僕と武器の数々はすでにジェイスの喉元に……
もちろん寸前で止めたけどね。
「なんのつもりだよ……」
「なんの? 別に僕は殺しにきたわけじゃないんだ」
「なめやがって! その甘さが命と……」
まだ戦うつもりなら、仕方ない。
生成した棒でジェイスを叩きつける。
「がっ!」
そして鎖で彼の体を縛りつける。抵抗できないようにね。
「勝負あり」
上手くいった……この新技ならワイズにも対抗できるかも……
――パチパチと、拍手が聞こえだす。そんな音の先に視線を向けると……憎き男が笑顔で手を叩いていた。
「さすがだねえ。エクスくん」
「ゼット……理事長」




