48話 ナンバーフォー
僕は前に言った。
僕の身体能力は学園で下から二番目だと。最下位の子は体が不自由だから、実質自分が最下位と自虐しながら。
その不自由な子というのが、このジェイス。
常に車椅子に乗っている生徒だ。
彼は生まれつき歩くことができない身の上らしい。だから車椅子生活を余儀なくされている。
だが、空中浮遊の魔法に長けており、車椅子でもそれなりの機動力を見せることができていた。
魔法の才能は高く、学園での成績はナンバーフォー。
自分やユーノさんより下? なめちゃいけない。僕とユーノさんとは違い、彼には歩けないハンデがあるのに四位なんだ。
そして、ナンバーワンのワイズは圧倒的壁。挑戦するほうがバカみたいな風潮があるなか、僕は挑みつづけてたわけだけど……他にも彼に挑戦する、不屈の心を持っていた生徒がいた。
それがジェイス。ハンデがあろうと、挑戦をやめない彼は遠目に見てもがんばり屋だと思ってた。
歩けないハンデは圧倒的魔法の才能でカバー。それで四位に上り詰めた彼が歩けるようになれば……
「ジェイス……君、立てるのか?」
僕の目の前には、車椅子から立ち上がってるジェイスの姿があった。
彼は口角をあげて……
「は、ハハハハハハ! 歩ける! 本当にオレは歩けるんだ! 立てるんだ! うはははは!」
嬉しさのあまり高笑いを始める。
今まで立てなかった彼が両の足で立ち、歩くことができた。それは当然感激するのは道理。
……だが何故歩けた?
病院などの治療で治るようなものではないと聞いたことがある。
一生車椅子生活だとも……
「疑問に感じてるみたいだな。エクス・リコード」
ジェイスは察して話し出す。
「理事長と取り引きしたんだ。足を治してやるからワイズ討伐に協力しろとな!」
「取り引き……?」
「理事長が研究に研究を重ねて作ったという薬……それを使用することでオレは! 自由に歩ける足を手に入れたんだ!」
ここにいることから、理事長に買収されたのは読めていた。だが……
「足を治してほしいのはわかる。だが、そのために一人の魔族の命を奪おうというのか?」
理由はどうあれ、理事長の邪な欲望のために協力する気なのはいただけない。
それもなんの罪もないワイズを殺すだなんて……
「綺麗事なんざどうでもいいんだ!」
ジェイスは怒るように叫ぶ。
「魔族が、足不自由で動けないなんて話、オレ以外に聞いたことがあるか?」
「……いや」
「だよな。魔族は人間なんかとは違う。そう簡単に下半身不随になんざなるわけねえんだ」
魔族は人間のように脆くない。
生まれつき体が強くない僕のような者もいるけど、だからといって体が不自由で生まれる魔族なんて聞いたことない。
――まさか……
「察したか? ああそうさ。オレもそこのワイズ妹と同じ、人間の血を引いてるんだ」
初耳だね……
そうか、人間の血を持つがゆえの障害……
「その上、オレは家の当主に実験材料にされてな……その結果がこの様さ」
「実験?」
「最強の魔族を作るとかいう下らねえものだ。失敗に終わったがな」
親に利用されただなんて……悲惨としか言いようがない。
「そんなかわいそうなオレに、理事長は歩けるようにしてくれると言った。そのためにワイズを犠牲にするのは最低だ。わかってんだよそんなこと!」
地団駄を踏むジェイス……
「それでも……歩けるようになりたかったんだよ。もう魔法だけじゃお前らに勝てないって現実を突きつけられてしまった……なら歩けるようになりたいって思うのも当然だろ!?」
……努力家ではあっても、彼もまた……心が折れかかっていたんだね……
僕も諦めてはいなかったけど、シールちゃんに出会わなければ……いつか折れてたかもしれない。
そして、ジェイスは歩けるようになることで僕たちに勝てるかも、という希望をもった。
それだけじゃなく、単純に自分の足で歩くことに憧れていたんだと思う。当たり前だ。誰だって車椅子生活なら、歩けるようになりたいのは当然の事だ。
あの理事長の事だ。副作用もなく歩けるようになるとは思えない。
仮になくても、歩けるようにするという餌で釣り、ワイズの命を狙う理事長……
やはりあんたは最低だ。




