47話 買収三人集
さて、たどり着いたはいいけど、どうしたものかな……
母様と兄さんを預かった、つまり人質にとったから、従え。理事長はそう言いたかったはず。
ここに二人がいる保証もない。いたとしても、盾にでもされたら助けることは難しい。二人に危害を加えさせたくないし……
ここは気づかれないようにそっと侵入し、屋敷の誰かから聞きだす……
「おらあ!」
「せや! ですわ!」
……シールちゃんとユーノさんが正々堂々、正面玄関の扉を蹴り飛ばし、目立つように中に侵入した……
「クソ理事長ぉ~悪は断罪! お兄ちゃんはあたしがぁ~守る!」
「オーッホッホッ! お義兄様とお義母様! 助けに来ましたわよ!」
……脳筋の二人を連れて隠密行動なんてできるはずがなかったか。
すると、中には武装した者達がわらわらと……
僕たちが殴り込みに来ると、わかってたかのようだね……
こんないきなりの侵入なのに、屋敷の者達が驚き一つないことからそれがわかる。
僕は【魔導転移】を発動し、シールちゃんに魔力を送る……
そして、シールちゃんの大暴れが幕開けする。
「ひっさーつ!」
――省略。
武装した者達などなんのその。シールちゃんは傷一つ負わず、一網打尽にしてみせた。
その無双っぷりに唖然としてるユーノさん。
「わ、わたくしの出番……」
あ、そっちの理由でしたか。
『おお!? マジで攻めてきたよ。正気かエンツーご一行』
吹き抜けの二階から、僕たちを見下ろす人物達が見えた。
……こいつらは確か……
「ちょうど三人だし、手柄分けあえそうだな」
二階から飛び降り、こちらに降りてきた三人の人物。
大柄短髪の男、エフン。めちゃくちゃ化粧の濃い女性、エイチ。車イスに乗った男、ジェイス。
何故名前を知ってるかというと……
この三人、学園の生徒だからだ。成績四位、五位、六位の……
そういえば理事長が、ワイズを除く上位十名に声をかけたとか言っていたな……
買収された三人か……
「お前らよ、素直に理事長に従っといたほうが身のためだぜ? あの人次期魔王筆頭なんだからよ。媚び売るほうが利口ってもんだ」
エフンがそう言った。
対し、シールちゃんはあくび。ユーノさんは、耳クソほじって聞く耳もたず。あの、お嬢様が公衆の前で耳ほじっていいんですかね? まあいいですけど。
「雑魚は失せなさい。時間の無駄ですわ」
「ユーノ・リリス……相変わらず忌々しい……」
すんとした態度のユーノさんに不服な様子のエイチ。
「お前さえいなければ女子生徒ナンバーワンはあたくしだったのに! このチャンスを生かし、ぶちころ……」
「あなた誰ですの?」
ユーノさんは首をかしげる。煽りとかじゃなく、本当に記憶にない。そんな様子だ。
火に油とはこのことだね……
「ぶち殺す!」
「手ぇ貸すぜエイチ!」
五位と六位の二人が、ユーノさんに攻撃をしかける。
「雷撃鞭!」
「豪弾幕!」
超広範囲の、凄まじい電圧の鞭がうねる。
エフンの拳からバカデカイ、大砲の玉、砲弾が放たれた。
どちらも成績上位者にふさわしい魔法。
オーリ辺りの上位成績者でも、これらの魔法は凌げないだろう。
それだけの魔力だ。
――しかし。
「岩壁落とし!」
ユーノさんは、二人の魔法の頭上から魔方陣を瞬時に生成し……
巨大な岩を、二つの魔法に向けて落とした。
鞭も砲弾も、岩に押し潰されて消滅した。爆発もしない。
驚くエフンに対し、エイチは怯まず攻める。
「まだまだあ! 電撃舞踊!」
全身に電気を纏い、踊るようにユーノさんに接近戦をしかける。
ワンテンポ遅れてエフンも動く。こっちは大柄な体格のわりに接近戦はしかけず、魔方陣から弾丸を乱射する。
豪快な、防御無視の攻撃一辺倒魔女、電撃娘エイチ。
ムキムキの筋肉は見せかけかのように、けして相手に近寄らないことで有名な、狙撃手エフン。(なら二階から狙撃しろと思わなくもないが。目立ちたがり屋なのだろう)
どちらもやはりやり手だ。侮れない。
――だが、
「この! この!」
「くっそ、ちょこまかと……」
そんな二人の攻撃を軽々しく避けたり、岩の壁を生成して防いだりと、見事に防いでいくユーノさん。
いくら下の順位とはいえ二人がかり、それも前に見たより強くなってるようにも見える。
それでもユーノさんのが一枚上手だね。手を貸すまでも……
『隙あり』
いつの間にな背後に回っていたもう一人、ジェイスの放った衝撃波がユーノさんに直撃!
「かはっ……」
さすがのユーノさんも不意をつかれた事で怯む。――そこに、
「今ね!」
「おらあ!」
エイチの電撃とエフンの弾丸がユーノさんに直撃した!
マズイ!
僕はすぐさま手を貸そうと駆け寄るが……
「心配……ご無用ですわ!」
ユーノさんは二人の魔法を受けても倒れもせず、仁王立ち。
そして……
「隕石波動!」
技を当てた事で油断した両名に、直径十メートルはある特大の燃える岩石を放つ!
放たれた岩石は屋敷のタイルを削りながら、凄まじい速度でエイチとエフンに向かっていく……
二人は何かしら魔法を放つも無駄。岩石に打ち消されて……
「チェックメイト……ですわね」
「ギャあああ!!」
「ぬわあああ!!」
岩石は二人を弾き飛ばした。勢いそのままに、屋敷を一直線に岩石は進んでいき、内部はめちゃくちゃになった。
……まあ、理事長の家だからいいよね。
二人はピクピク動いてる。死んではいない。でも再起は不能だろう。
「ど、どうですのエクス……」
疲れはて、膝をつくユーノさん。僕は称賛するように、彼女に手をさしのべる。
「さすがですね」
「と、ととと当然ですわ」
僕の手を照れながらとるユーノさん。なんかかわいいね。
でももうユーノさんは戦えないだろう。不意打ちをかましたジェイスは僕が……
――!?
ジェイスが車イスから降りて……立っている!?




