42話 ふざけるな!
「……は?」
手紙を見て、僕はそんな言葉しか出てこなかった……
僕の反応を見て、シールちゃんとユーノさんも手紙を横から見る。
二人の表情が変わる。
「こ、これは!? キューイ! どういうことです!?」
ユーノさんは手紙をキューイさんに突きつける。さぞ驚くかと思いきや……
「え? 預かった? これが何です?」
「何です? じゃないですわよ! 誘拐よ誘拐!」
「まさか。あんな素晴らしい方がそんなことするわけありません」
キューイさんはほくそ笑む。その信頼感はどこから来てるんだ。
「大方、そこの男とリコード家を潰すためにエヌエットに協力でも頼んだのでしょう。彼女と息子は無事ですよ」
……そんなわけあるか。
この様子ではどのみち、大した事は聞けそうにない。
それより二人が本当にさらわれたのか……
――実家に行くしかない。
♢
――リコード家。
僕達三人はリコード家にやってきた。家の者全てに母と兄の居どころを聞かないと……
「エクスのご実家エクスのご実家エクスのご実家エクスのご実家」
いつもならかまってあげるところだが……今はそんな場合じゃない。すいませんユーノさん。
リコード邸に急いで侵入。メイドさん達に「お、お坊っちゃま!?」と、度々声をかけられたが、軽く会釈するにとどめた。
まずはまともに動けない兄さんの所に向かう。よほどの事がないと部屋にいるはず……
無事にいてくれと……動悸をおさえながら、僕は部屋の扉を開く……
そこに兄さんの姿は……なかった。
『メイド連中が騒がしいと思ったら、帰ってたのかエクス』
背後から声……この聞きなれた腹立たしい声の主は一人しかいない。
ダンディー風で姿勢のよい長身の男がそこにいた。
父であり、リコード家当主……
ジース。
「どうした。学園卒業までは戻ってこないんじゃないのか?」
そんなこと言った覚えはないけどね。自分に都合の良いように記憶を改竄するな。
いや、それはどうでもいいことだ。まずこの男に聞かねばならない。
「……兄さんの姿が見えない。母様も……二人はどこへ?」
「そういえば朝から見ておらんな。メイド達が騒いでいた」
この男……家族がいなくなってその興味の無さそうな反応はなんだ!
「息子と妻がいないなら、探すのが道理では?」
「エヌエットはともかく、アールスはワシの子ではない」
――こいつ!
「たとえ血のつながりがなかろうとも、この家に招き入れたのはあんたでしょうが!」
「エヌエットを妻にするための道具としてな。あんな奴、最初からどうでもよかった」
「なん……だと?」
「父ともめて、奴を跡継ぎにできなかったとエヌエットに嘘ぶいたが、最初からあんな無能、跡継ぎにする気など毛頭なかったわ」
……過去に、キューイさんが言ってたね。兄さんを跡継ぎにする条件で母様はリコード家に嫁いだと……
※27話参照。
……母様に惚れ、妻とするためにそんな、そんな嘘を!?
最低だ……最初から兄さんへの愛情はなかったというのか?
「エヌエットもエヌエットだ。長いことワシとまともに口も聞かんで……あいつにもほとほと愛想がつきたわ! 平民風情が調子にのりおって!」
……愛想がつきたのはこちらのセリフだ。
キューイさんが母様を想い、リコード家を恨むのも仕方ないね。当主がこれなんだから。
「大方二人をさらった奴らは身代金目当てだろ? あんな二匹のためにびた一文だすつもりはねえ! わかったら貴様はさっさと学園に戻れ能無し!」
ついには血が上り、荒い口調となった。気性の荒い奴。
――普段ならさっさと帰る気にもなるが……今回に限ってはこの男をぶん殴らないと気がすまないね。
殴るなら……
「……シールちゃん、ちょっと力借りるよ」
「オッケー。やっちゃおうよエクスさん!」
シールちゃんの許可がおりたため、僕は【魔導転移】を発動する。いつもと違い、シールちゃんの身体能力を……僕に!
「エクス! 貴様一族の秘術をいつの間に! それに何のつもりだ! まさか当主たるワシに歯向かうつもりか!?」
「……だったら?」
「教育的指導だな!」
ジースはお得意の闇魔法を披露。プラズマが光る黒い球体を生成し……
「天才と言われ調子にのってるのか知らんが、まだ小僧。当主たるワシにかな……」
「黄金剣矢」
僕は奴の反応できない速度で剣を複数生成し、ほぼ同時に剣を射出。
剣は奴の黒い球体全てを突き刺していく。串に刺さった黒団子状態だね。
これにより、奴の魔力玉は制御を失う。
「なっ!? バカな速すぎる!」
と、言ってる隙に僕はシールちゃん直伝の移動速度で奴の懐に侵入。……そして、
奴の顎にアッパー攻撃! 続けて腹部に拳をおみまい!
「がっ……ご!」
変な声をあげると共に、奴は白目をむいて倒れた。
ざまあみろってとこだね。
僕自身の力でも倒せる自信あったけど、こいつは殴らないと気がすまなかったからね。
それを見て、シールちゃんは笑顔で拍手してくれていた。




