40話 リリス家にお招きされる
――後日、僕とシールちゃんはユーノさんの実家、リリス家に招かれた。
「こちらですわエクス・リコード。ここがリリス家本邸ですわ」
バカでかい敷地を歩いた後、ようやくたどり着いたリリス家。
想定以上の、豪華絢爛な、城のような邸宅だった。
僕もシールちゃんも貴族だし、それ相応の家には住んでるが、ユーノさんの実家はその比ではないね。
貴族としての地位は格上だね……
「さすが成金お嬢ぉ~」
「誰が成金ですって!」
こんな時まで喧嘩しないで……
「とりあえず両親にあいさ……」
ん? ユーノさんの顔が赤くなる。
「挨拶に行くってつまりはそういうことですわよね……グフフ。外堀埋まればこっちのもの……グフフ」
どうしたのですかユーノさん。またヨダレたらして笑っちゃって……
挨拶ってそもそもご自分で言い出したことなのになにを……?
僕はまたハンカチを差し出す。ユーノさんは受け取り、ヨダレを拭く。
これで三つ目だね。
「さあいきますわよ! まずはお父様たちに挨拶に!」
というと、ユーノさんはドアを蹴るように開ける。
え、豪快ですね。
すると邸中にいたメイドさん達が騒ぎ出す。
「だ、誰!?」「泥棒!?」「いきなり侵入者!?」
あらら……あまりの入りかたで強盗でも来たのかと疑われてますよ。
「あ、あれ? お嬢様?」
侵入者がユーノさんだと皆さんが気づく。
全員頭下げてお帰りなさいませ、的なこと言うかと思っていたが……
「お嬢様……何しに?」「えええ……あまりお世話したくない。あなたやってよ?」「ええ……ワガママだから嫌よ」
……ヒソヒソと煙たがるような反応……ユーノさん……
「聞こえてますわよ!」
血管浮き出るほどキレたユーノさんの怒号。皆さん震え上がりながら頭を下げる。
「も、申し訳ありませんお嬢様! 今キューイさん呼んできます!」
と、一人のメイドがそそくさと逃げるように走り去る。
キューイさん?
「エクスが話を聞きたいと言ってた婆やですわ。基本わたくしの身の回りの世話はそのキューイがしてたものですから」
なるほど。だからその人を呼びに行ったと。都合がいいね。
「そ、その間に……り、両親に挨拶しませんこと? エクスを紹介というか、み、未来の……だ、だだだだだ旦」
ユーノさん鼻血鼻血!
僕はまたもやハンカチを出し、ユーノさんの鼻血を拭いてあげる。
『ゆ、ユーノ……何しに帰ってきたの?』
豪華な階段から降りてきた二人の人物。その中の一人の女性がユーノさんを見て、頬をひくつかせながら言ってきた。
豪華なドレスにアクセサリーの数々……どう見てもメイドではない。親族の方か……?
「あらお姉さま。戻ってらしたの? またお見合い失敗かしら?」
鼻血を拭きながら煽るユーノさん。
ああ、お姉さんか。
「だまらっしゃい! 相手が格下だからこっちから願い下げだっただけよ!」
「選り好みできる身分なのかしらね……」
「なんですって野蛮猿!」
「はああ!? 誰に向かって口聞いてらっしゃるの!? この豚足!」
……なんか姉妹喧嘩が始まってしまったぞ。
「おほほほ! おねえしゃま! お久しぶりでごじゃいますわ!」
ん? お姉さんの隣にいた、もう一人の幼い子供がユーノさんみたいに高笑いして挨拶してきた。
妹さんか? ドレス着て髪飾りもつけられてかわいらしい。
「あらエスト。ご機嫌うるわしゅう」
「うるわしゅう~」
フフ。どっちもかわいいね。和む。
「エクス、紹介しますわね。小うるさい姉のエムノと」
「誰が小うるさいですって!」
この姉妹似てるな……
「弟のエストですわ」
「ですわ~」
……
……ん?
弟?
「え? 弟ぉ~? どう見ても女の子じゃん。ドレスも着てるしぃ」
シールちゃんの言う通りだ……
髪も長いし、ユーノさんを小さくしたみたいなかわいらしい子なのに……
「正真正銘、弟ですわ。わたくしに似てかわいらしいので、よく女装させてあそんでたのですが、本人も気に入ったようでご覧の有り様ですわ」
いやそれユーノさんのせいではないですか。
「男の子なら将来的には家督継ぐんですよね……?」
「わたくしは家を継ぐとか興味ないですし、そうなるでしょうね」
「大事な跡継ぎに女装癖あっていいんですかね……」
「本人が好きでやってるからいいんじゃなくって?」
……まあ、それもそうか……
「ところでエクスも女装似合いそうですわよね」
「……やめてください」
「嫌がって、泣きながら女装させられるエクスとか……興奮しますわね……」
鼻息荒いですよ……また鼻血でますよ。冗談でもやめていただきたい……
しかし、仲のいい姉弟なんだと端から見てもわかる……
いい家族……うらやましいね。
『え、エクス・リコード!?』
背後から声がした。
この声は今回の目的……
お付きのキューイさんだった。




