39話 保留
「ちなみに、ワイズを除く成績トップ10。全てに声をかけ9対1にしてみたいんだよ。すでに半数には協力を承諾してもらっている」
半数……!?
誰だその半分は……こんな人の口車に乗り、ワイズを倒そうなんてバカな真似考えてるのは……
……それとも、僕のように協力せざるを得ないような条件を突きつけられたのか? それなら仕方ないとも言えるが……
「でも、考えが甘いですね。ワイズを9人がかりなら倒せるとでも? プラス理事長、あなたが協力すると考えても、ワイズにそれくらいで勝てるわけがない」
低く見積りすぎだ。ワイズがそれくらいで倒せるはず、ない。
できて、かすり傷負わせるのがやっとくらいなものだろう。
「そんなことはわかっているさ。でも9人でかかれば疲弊させたり隙を作るくらいはできるだろう? そこで実験の成果を見せる時さ」
……例の人体実験の話か。
研究、成功したとでもいうのか?
「それに、君には何か奥の手があるんだろう? こそこそと、そこの眠ってる小娘と協力して」
すやすやと寝息をたてるシールちゃんに視線を向ける理事長。
……お見通しってわけか。
「あきらめず、エンツーなどと笑われても、ワイズに挑むその強き心……評価してるのだよ。ククク」
単純に評価されてるならともかく、自らの欲望を叶えるために使えると思われたからの評価だろ。
嬉しくもなんともないよ。
「ユーノくん。彼女は協力してくれそうもないが……君がつくというなら協力してくれそうな気もするねえ……お付きの女性はわたしに協力的なんだけどね」
ユーノさんの性格考えれば協力はありえないね。僕が頷こうが関係ないだろ。何を言ってる。
それにあのお付きの人は何を考えてるんだ……
「で、協力してくれるよねえ? あのゴミ虫、もといワイズのカスは君にとっても邪魔だし、お兄さん助けられるよ? 実母にも会えるよ?」
この男……
今すぐNoと突きつけたいところだが……そんなことしたら兄さんと母様になにかしてくる危険性もある。
病気を治せるかどうかも調べておきたいし……
――ここは……
「少し、考えさせてください」
「よかろう。でも長くは待たんよ」
♢
その後、僕たちは学園から少し離れた食堂に向かった。
シールちゃんはまだぐっすり眠ってる。
そこで僕はユーノさんに事情を話した。彼女は信用できるからね。
「ふざけた事ほざきますわねあのおっさん! ぶちのめしてやりたいですわ!」
ユーノさんは注文したステーキに、豪快にかぶりつく。
「なんですのこの肉! 安物ではなくて!」
料理に口出すのはやめて頂きたい……
「でもあなたのことですから、即座に断るものかと思いましたけど……」
「兄さんが人質にとられてるようなものだからね……とはいえOKするわけにもいかなかったから」
「わたくしの家の連中に護衛でもさせます? お義兄様とお義母様の」
それはすごくありがたい提案だが……
「いいんですか? 別にリコードとリリスは仲の良い家柄ってわけでもないのに……」
「いいんですのよ。いずれ親戚関係になりますし……」
「え?」
「ご、ゴホン! とにかく! 何かしら理事長を調べる必要がありますわね!」
「それは同意見ですが……どう調べればいいものか……僕らの動きは警戒してそうですし」
理事長も、そう易々と兄さんの病を治す方法教えてくれるわけもない。そもそも治せる保証もない。
だからこそ、研究資料なり手に入れることができれば……
兄さんの病だけでなく、奴を失脚させる事もできるかもしれない。
どう考えても、奴のやってることは法を破ったもの。いかに魔王が不在の今でも、最悪魔王になれる権利だけでも失くならせたいものだ。
「エクス、あなた協力してくれそうなご友人とかいませんの?」
「あいにく……友人は皆無に等しくて……」
「まあわたくしも似たようなものですけども」
「ユーノさんはファンがいるじゃないですか」
「あんな路傍の石、使い道ないでしょう。うっとおしいだけですわ」
辛辣だね……
「小娘はどうかしらね。こっちも警戒されてるかしら?」
「相棒の僕と離れて行動してたら違和感感じさせるかもしれませんね……」
理事長の事、何かしら知ってそうな人物……
「そうだユーノさん……お付きの人と、お話できますか?」
「お付き? 婆やの事? なら……実家に来るといいですわ」
「え?」




