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3話  最下位の女の子

「お前らなんかにわたしは負けない! 今に見てろ!」

「バカ言え。魔力もてんでない落ちこぼれが、どうやっておれらに勝てるんだよ」


 取り巻きの一人がテーブルに乗ってる皿をつかみ、女の子に投げる。

 ――危ない!


 と、思ったがそんな心配はいらなかった。

 皿は彼女をすり抜け、後ろの柱に直撃して割れた。

 

 ――否、すり抜けたのではない。そう見えただけだ。

 彼女の避けるスピードがあまりに速く、残像的映像が残っていたのだ。彼女のいた地点に。


 その残像に皿が向かっていったため、すり抜けたと誤認したわけだ。


 つまり、彼女はその場にはすでにいない。……ならどこにいるのかというと……


「てい!」


 皿を投げた取り巻きの背後!


 女の子は取り巻きの後頭部を掴んで、テーブルに叩きつけた!


 テーブルはその一撃で割れ、その勢いで地面のタイルに相手を沈める。

 地面のタイルも貫いている……


 魔力はないが、凄まじい身体能力……


「わたし、シール・デュラミスは悪には屈しない! 母の意思を継ぎ、強く生きるのだ!」


 女の子は名を名乗り叫んだ。

 そうか、シールというのか彼女は。


 ――《《デュラミス》》?


「くそが。さすがは《《ゴリラ女》》だな」


 頭を地面に叩きつけられた男は、平然と立ち上がる。


 ――まあ、当然の事だ。


 《《魔族は魔力の一撃じゃないと倒せない》》。常識だ。

 身体能力だけで地面に叩きつけるだけでは、奴にダメージの一つも与えられやしない。


 シールという女の子、確かに見た感じ魔力をほとんど感じない。

 生まれたばかりの赤ん坊でも魔族ならもう少しもってるというのに……


 やはり人間の血のせいだろうか?


「このおれ、オーリ様に楯突いた以上、ただですむと思うなよ?」


 一撃くらわされた魔族はそう脅す。


 オーリ……オーリ・マキュラスか?

 確か前回の成績で上位をおさめ、なおかつ学園の理事長、ゼット・マキュラスの息子……


 なるほど、この騒動の中心は奴で、他の連中は理事長の息子たるオーリに媚び売る連中なわけか。


 奴にはわりと黒い噂が多いと聞く。理事長め、ドラ息子の制御くらいしておけ。


「わたしは権力に屈しない! あとランチの恨み……はらさずにはおれん!」


 シールちゃんは目にも移らないほどの超スピードで食堂内を駆け巡る。

 その速度だけで突風が吹き荒れる。


 こんなところでおっぱじめるつもりか!?

 それになんてでたらめな速度だ……


「でやあ!」


 シールちゃんは気づいたら食堂の柱にひっついていた。いつの間に?

 そして彼女はそのまま……


 柱を力ずくで引っこ抜いた!?

 魔力の助けもなしに、腕力だけで!?

 ば、バカ力……ゴリラと酷いあだ名をつけられるだけはある……


 彼女は柱を背負ったまま、速度を落とさずオーリに特攻する。


「ひっさーつ! エボリューションギガントエレガント……」


 長い技名……

 だが柱の攻撃は言い終わる前にオーリに直撃する。その衝撃で柱は粉々に砕け散る。


 オーリは……無傷。


「嘘!?」


 シールちゃんは驚いてるが、さっきも言った通り、魔力のこもってない一撃では魔族は倒せない。

 人間相手なら今ので決まったろうけど……相手が魔族では勝てない。


「消えろカス」


 オーリは手のひらに魔力を集中する。

 魔力の弾丸、通称魔導弾という遠距離の基本技。それをシールちゃんに放とうとしている。


 ……惜しいな。本当に惜しい。

 あの尋常ではない身体能力は武器になる。相応の魔力さえ彼女にあれば、上位に貫けるだけの成績をもてたはずだ。


 僕が欲しいくらいだ。

 あれだけの身体能力と、僕の魔力があればトップのワイズにだって……


 ……《《勝てる》》?


「死ねゴリラ女」


 ――今はそんなことはどうでもいい。

 僕がすべき事は……


「二度とそのツラ見せるな」


 オーリは魔導弾を放つ。

 ――が、弾丸はシールちゃんの方ではなく、あさっての方へ飛んでいった。


 なぜなら、


「て、てめえは……」


 僕がオーリの手を掴み、発射口をそらしたからだ。


「てめえは永遠ナンバーツー!」


 ……ここでそのあだ名は締まらないからやめて欲しい。



 

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