34話 どら息子と理事長
オーリ・マキュラスか……
理事長の息子でシールちゃんをいじめてた……
でもシールちゃんに叩きのめされて、もう懲りたと思ってたんだが……執念深い奴だね。
「エンツー、てめえ人間の女に手なんて貸してよ、恥ずかしくねえのかよ。あ?」
見るからにイラついた態度。
というかあれ? 取り巻きいないじゃないか。
いつもならオーリの太鼓持ちが周りを取り囲んでいたのに。
「てめえがなにか手を貸したんだろあの時も!」
「あの時?」
「とぼけんな! そうでもなきゃ、おれさまが人間なんかに負けるはずがねえ!」
まあ、手を貸したのは事実だ。
でもそれは僕の家の秘術ゆえ、内緒の話。悪いがとぼけさせてもらう。
「そのせいでおれさまは最下位に負けた恥さらしの烙印を押されちまった! 理事長の息子たるおれさまがなめられる立場になったんだぞ! ざけんな!」
身から出た錆というか……
差別意識でいじめするような奴には因果応報といえる気がする。
ただでさえ黒い噂のたえない奴だったし。
理事長の息子だから、なんだかんだ取り巻きはついてきてそうだと思ってたんだけどね。
最下位のシールちゃんに負けたことで、あまりに弱いと勘違いされたから、取り巻きの者達も下についても意味はないと思ったのかな?
そう考えると、本気で慕ってくれてた者が一人もいなかったことになる。
……そこは少しかわいそうではあるね。
実力はけして低いわけではないし、まだ成績でいえばシールちゃんよりは上だ。
せめて真面目にしてれば擁護してくれる人や、同情もあったんだろうけどね……自分の撒いた種だよね。
「ぜってえに許さねえからな……親父の権力使って、二人まとめて退学に追い込んでやる……」
……逆恨みか?
少しは同情しようかと思ってたのに、当の本人がこの態度ではね……
「そんなことはさせませんわよ」
ユーノさんが前に出てくる。
「エクスはわたくしの永遠のライバル。そんなことで退学になんてさせませんわよ。リリス家の力の全てを使って阻止しますわ。お父様のけつ蹴飛ばしてでも動かしますわ!」
頼もしい……リリス家はかなりの家柄だしね。
しかしけつ蹴飛ばすか……本当に面白いなユーノさんは。お父さんもたじたじなのかな?
「それにエクスはリコード家ですわよ? こっちもかなりのエリート。理事長権限だけで、果たして退学にできるかしら? 両家を敵に回すことになりますけど?」
「へっ、知ったことかよ! 親父はゼット・マキュラスだぞ! 先代魔王に支えた幹部の一人だ! そんな連中怖がるわけあるかよ!」
権力には屈しないってとこか。
いや、理事長も権力者だからそういう事ではないか。
ただ理事長も、そんな下らない事でわざわざ敵を増やすようなことはしないと思うが……
どうなんだろうね? 子供に甘い父親というのが事実なら、オーリに頼まれてやりかねないか?
未成年はこの学園の生徒でなければ魔王候補には絶対になれない。
となると、僕は学園から追い出されるわけにはいかない。
理事長がどうでるかだね。
もしオーリの言うこと聞くようなら……わりと面倒になる。
そうか、彼が今までどんな奴にも偉そうなのにはそういう脅しが効いたからなのかもしれないね。
この前シールちゃんに完膚なきまでに負けたから、もうこないと思ってたのに、そう来たか……って感じだよね。
『オーリ。なんの騒ぎだい?』
僕達全員は声のした方へと視線を移す。そこにいたのはオーリの父親、ゼット・マキュラス理事長だった。
グッドタイミングなのかどうなのかはわからないけど。
「親父! この前言ったろ! おれさまを傷つけた奴らだぜこいつら! 退学だろ!」
オーリが叫ぶ。
……というか理事長、この前のシールちゃんとの一件、彼に言って聞かせるんじゃなかったのですか。
「おい理事長ぉ~お詫びは?」
と、シールちゃん。
ああ、オーリとやりあった時に言ってたね。お詫びすると。
「二人で一気に話なさんな。とりあえず、理事長室に来なさいみんな。エクス・リコードくん。君には個人的に話もあるからねえ」
え、僕に……?
お詫びの件ではなさそうだけど……理事長……僕になにを……?




