25話 エクスの生まれ
順を追って、僕は二人に説明することにした……
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僕の実家、リコード家。
この国でかなりの大貴族として、世間では有名な家柄だ。
現当主で僕の父親、ジース・リコードは僕が生まれる前に、一人の女性を迎え入れた。
それが僕の母、エヌエットだった。
母は未亡人な上に、すでに子持ちだった。
当然祖父母には結婚を反対されたらしい。
だが、二人はそんな周りの反対を押し切り結婚したのだという。
父には周りを黙らせるほど、能力に優れた人だったからできたことらしい。
――だが、試練は続いた。
母は病気を煩い、子供が産めない体になってしまったらしい。
母には連れ子がいるとはいえ、リコードの血筋の子ではない。
名家ゆえに、跡継ぎ問題は出てくるもの。
結婚に反対な者達はこぞって、そこをついてきた。
跡継ぎを産めない者など追い出せだの、離婚しろだの大騒ぎになったのだとか。
結果的に、父が側室をたてることで決着をつけた。
母も離婚になるくらいならと、折れたらしい。不服ではあったみたいだが。
そして、側室が父の子を産み、リコード家の跡継ぎ問題は終結した。
……そう。その側室の子供というのが僕、エクスなんだ。
だから僕と母に血の繋がりはない。
母と血が繋がってる子供は連れ子だった僕の兄、アールスだけだ。
父は跡継ぎが生まれたことで、これ以上側室との間に子を作ろうとはしなかった。
祖父母達も、それを許した。
なぜか? それは僕が生まれながらにして高い魔力を秘めていたからだ。
リコード家は代々跡継ぎ問題で揉める事も多かったらしい。父もまたそういった、いざこざに巻き込まれた立場だった。
ゆえに、大貴族でありながら、子供の数は最小限にとどめてきた歴史があったらしい。
本来なら家を継ぐのは長兄のアールス兄さんになるはずだが、兄さんはリコードの血を持たない。ゆえに、跡継ぎ候補は僕しかいなかった。揉めようがなかったわけだ。
兄さんは優しい人だった。
弟の僕に跡継ぎを取られるのを承知の上で、僕に優しく接してくれていた。いつも励ましてくれた。
厳しい父とかなんかより、僕は兄に懐いた。
そして、恥ずかしながら僕はマザコンでもあった。
小さい頃から母について回り、母の手伝いを率先してやっていた。
兄と母は優しかったから。
教育教育小うるさい連中や、愛してない者との子供であった僕に、愛情の一つも見せない父のジースなんて嫌いだった。
ちなみに僕は、産みの母を知らない。会ったこともない。
すぐに亡くなったと聞かされてる。
兄は魔力などは平凡だったが、とても人に慕われていた。優しさと人間性、いや、魔族性か。
本当にできた人だったから。
友達も皆無で、能力だけの僕とは違ってね。
病弱だった僕の面倒もよく見てくれてたし……
でもある日、そんな幸せが瓦解する。
兄がある病にかかったんだ。
どれだけ手を尽くしても、兄の体はよくならない。
日に日に弱っていく兄を、僕は見てられなかった。
当時の僕はまだ10にも満たない年齢だったけど、この日の事はよく覚えてる……
兄を想い、いつも母は泣いていた。愛する息子がなんでこんな目に……そう嘆いていた。
僕はその時、母を慰めたい一心で声をかけた。
『母様、元気だして……兄さんは大丈夫だよ。僕が側にいるから……』
今にして思えば、なんの根拠もなく大丈夫など言うべきではなかった。
その後の母さんの涙と憎しみの表情はいまだに忘れられない。
『なんであの子がこんな目に……エクス、あんたが、あんたが、こうなればよかったのに!』
ショックだった。
兄の代わりに僕が病気なら母は満足なのかと……
そう。この時からあの数字は僕にまとわりついていたんだ。
僕は母からの愛情も二番だったんだ。




