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23話  圧倒的敗北感

 僕は強い敗北感を感じていた。

 

 偉そうに、シールちゃんのサポートに徹すると言いながら手を出し、挙げ句の果てにはワイズに助けられた格好になった。


 助けがなくても勝てる自信はあった。でも、絶対とは言いきれない。もしかしたら、誰かしら大怪我をした可能性もある。


 だから、助けなんていらなかったなんて、口が裂けても言えない。 

 ワイズが出たことで、犠牲はゼロ。誰も怪我一つなかったのだから。


「お兄ちゃん好き好き好き~」


 シールちゃんは笑顔でワイズにくっついてる。そんな彼女を優しく撫でるワイズは、僕を見る。


「すまないね。聞いた話によると、シールの手助けしてくれてたみたいで」

「……いや、その」

「シールは私の妹と知られてる。なのにこの子への嫌がらせは止まらなくてね。どうしたものかと思ってるところだったんだ。常に一緒にいるわけにもいかないし」


 言われてみれば、学園のトップで人気者のワイズの妹なのにいじめられるって少し変な話ではある。

 いくらシールちゃんが人間だからって……


 ワイズからも煙たがられてるならともかく、溺愛してるわけだし。


 取り巻きの女性は嫉妬か何かかもしれないが、オーリ辺りには違和感ある。


 あいつはいじめとか率先してやる奴かもだが、ワイズに喧嘩売る度胸なんてないはずだ。

 僕のように妹と知らなかっただけならおかしくないが……もし違うなら、何かしらの思惑が……?


 なめられがちな僕と違い、ワイズは圧倒的実力者なんだからね。


「ワイズ……やはり天才ですわね。嫉妬とかするのもアホらしくなるほどですもの……」


 ユーノさんの言う通り、ワイズに対抗意識持つものだけでも珍しい。

 僕と他数人ってくらいかな。

 

「お兄ちゃん、エクスさんがね、あたしのサポートして最下位脱出させてくれるのぉ!」

「そう。成績上がるといいねシール」

「えへへ」


 本当に、仲いいな。

 いじめられてるシールちゃんの、唯一味方でいてくれる兄なんだもんね。そりゃあ懐くよね。

 仲のいい兄妹っていいな……


―――――――――――――――――――


『エクス、ファイトだぞ! お前は正当な後継者! リコード家の希望なんだから! 兄ちゃん、応援してるからな! いつまでも!』


―――――――――――――――――――


 ……兄さん。


「じゃあ今回の手柄はシールに全部ってことでいいのかな? エクスくん。ユーノさん」


 と、ワイズが聞いてきた。


 つい、別の事に意識向いてた……


「もちろん。そのつもりだったし。ねえ?」


 僕はユーノさんに同意を求めると、「仕方ありませんわね!」と、ツンとした態度で頷いてくれた。

 

 これだけの依頼をこなしたとなると、シールちゃんの成績は一気に上がるかもしれない。

 彼女が評価されればいじめも減るかもだしね。


「ありがとう。妹のために」


 また、ワイズに頭を下げられた。

 ……優越感なんて感じない……

 ただ、器の差を見せつけられるような気分にしかならない。


 情けない……


「気にしなくていいですよ……」


 僕はそう言うしかできなかった。


 ――そして、僕たちは村長さんに報告に向かうことにした。


 ふと、僕は博士だった残骸の岩を見る。


『《《ある男を殺すための研究》》』


 奴はそう言っていた。

 ある男を殺す……そんな物騒な研究を指示した何者かがいるのか。


 岩……つまり地属性の魔力だ。

 地属性というと、水に強い属性。


 水の属性と言えば……


 ワイズ・デュラミス。


 ……まさかとは思うけど、魔王の座を狙うものなら無茶な研究してでも、ワイズを蹴落としたいと思うかもしれない。


 憶測ではある。


 でもワイズに敵が多いのもまた事実。

 学生に限らず、先代魔王の配下だった魔族たちにも狙われてるという噂もある。


 僕としては、そんな形でライバルに散ってほしくはない。

 自分の力で越えたい壁だから。


 もしワイズが狙われてるとしたら……

 僕はワイズに手を貸すつもりだ。


 

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