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13話  完全勝利

「え、ええ!? お、オーリの旦那がま、負けたあああ!?」


 オーリの取り巻き連中が叫ぶ。


「そ、それも最下位の人間に!?」

「嘘だろ!?」

「なんかの間違いじゃねえのか!?」


 間違いで負けるようなら所詮その程度でしょ。


 だが、いいぞ。取り巻きがいたことは功を奏した。


 なぜなら目撃者が多いからだ。


 オーリ敗北を目にしたものがこれだけいれば、奴はどんないいわけもできない。

 シールちゃんに負けたという事実にね。


 そして僕が影から助けた事で、誰もがシールちゃん自身の力でオーリを倒したと誤認するはず。


 学園の実力者たるオーリを実力で倒したシールちゃん。たとえ気にくわない人間でも、自分より強い奴に果たしていじめを行えるだろうか?

 もしそれでもいじめ続行できるなら逆に大したものかもしれないがね。強者に立ち向かえるわけだし。


 でも取り巻きにそんな度胸はないと思う。オーリとつるんで悪事をやってると噂だしね……


 これに懲りて、差別やいじめなんて下らない事やめてくれることを願うよ。

 そのためにシールちゃんをこの場でオーリと戦わせたのだからね。


『なんの騒ぎだね』


 騒動の中に一人のイケオジが現れる。姿勢がよく、背の高い壮年……この人は、


「ゼット理事長!?」


 オーリの父親、この学園の理事長だった。


「実は……」

「お前が悪の親玉か!」


 取り巻きが事情を説明しようとしたが、シールちゃんが理事長を指差す。


 シールちゃん、理事長を知らないのか……


「残念だったな! お前のドラ息子はあたしが倒したぞ! ハーッハッハ!」


 ……高笑いするシールちゃん。オーリの父親とはわかってるのか。じゃあ理事長と知ってるのに親玉?

 ああでも、オーリの悪事を揉み消してるのが事実なら、悪の親玉なのは間違いないか……


「ふふ。元気なお嬢さんだ。……どうやら不肖の息子が無礼を働いたようじゃないか。すまんね」


 ニコリと笑いかけた後に、深々と頭を下げた。

 ……意外だな。親バカでオーリに甘いとばかり思っていたが……


 理事長は魔法でオーリを宙に浮かす。


「説教しておくから、ここは勘弁してもらえるかな?」

「やだ」


 フフ。ここで嫌だと言うのがシールちゃんクオリティだね。

 普通許す所だと思うかもだけど、それだけ奴に対する恨みが根深いのかもね。


 頭をかく理事長。


「まいったねえこれは。じゃあ後でお詫びするからさ」

「え、じゃあ許すと言ったらお詫びする気なかったの? セコ」


 フフ。シールちゃんのペースだね。この子なかなか口が達者だよ本当に。


「セコくなんてないさ。わかった! 気のすむだけお詫びするよ後日ね。では!」


 軽く敬礼すると、理事長は空に浮かぶ。そして鳥のように飛び去っていく。オーリも魔法で勝手に飛んでいった。


「ああ~! 逃げた! 親玉め! 許さん!」


 カンカンなシールちゃん。どうやら理事長が気に入らないみたいだね。

 今の様子を考えると信じられないが、オーリを野放しにしていた以上、品行方正な人ではないと僕も思う。


 何か裏でもあるのかと思いたくなる。


「お、おれたちも行こうぜ……」


 取り巻き達も逃げるように去っていく。


 一人になったシールちゃんは僕に向けてVポーズをとる。


 僕は軽く笑いかける。

 上手くいったね……これでシールちゃんはどう思ったか……


「ねえねえエクスさん! すごくない!? これあたし最強なんじゃない!?」


 オーリに圧勝したことでウキウキなシールちゃん。

 

 だが、言ったら悪いが最強には程遠い。

 あれくらいならワイズはおろか、僕でも対処できるしね。


「シールちゃんどう? 僕と組む気になった?」


 それよりもまずはそれが重要な話だ。

 僕がワイズに勝つためには彼女の力が必要なのだから。


「エクスさんはあたしと組んでどんな利点があるの?」


 シールちゃんは素朴な疑問をぶつけてきた。

 ……僕は答える。


「今の逆がしたい。君の身体能力を僕に渡してほしいんだ。ワイズとの戦いの時に」


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