12話 パワーアップはいかほどに?
「なんかよくわかんないけど! 強くなった気がする! スーパーシールって感じ!」
シールちゃんは溢れる魔力にワクワクの表情を見せる。
早くこの力を試したい、そう言ってるかのよう……
対するオーリは余裕の態度を崩さない。
まあ僕が隠れてやったこと。
シールちゃんの全身にオーラのように魔力が漂っているが、おそらくオーリはなんか小細工してるとしか思ってないんだろう。
つい先日、シールちゃんが弱いと奴は確認済み。だから負けるなんて映像が奴には浮かんでいないんだろう。
「オーリさん! ズタボロにしてやりましょうぜ!」
「そうだそうだ! 泣きわめく所写真にでもとりますか!?」
「二度と逆らえないようにしてやりましょうぜ! ゲヘヘ!」
取り巻き連中がうるさいね……
よってたかって弱い女の子に対して……虫酸が走る。
嫌いな人間だからって……品性を疑う。
こいつらもこの学園の生徒。つまり、それ相応の家柄のはずだ。
そんな跡取り候補達がこれでは……
ワイズが魔王になって差別をなくそうと考える意味がわかったよ。
差別意識はここまで深く根深いものだったんだね……
あまり外に目を向けてなかったからこそ、僕はこんなことにも気づいていなかったんだ。
……反省しないとね。
「へっ。連れの奴らがああ言ってんだ。悪く思うなよ? 最悪再起不能で学園辞めることに……」
「恥かいて学園辞めるのはお前だ不細工」
「……殺す!」
オーリは周囲に火の玉を多数精製する。
学園上位クラスの成績ゆえに、魔力の量と精製能力は目をみはるものがある。
あの火の玉……いわゆるファイアボール。火属性の初級魔法だ。
火属性の魔族ならみんな使えると言っていい魔法。
だが奴は綺麗な球体として精製している。これは完成度が高い証拠。並みの魔族ならファイアボールとは名ばかりの、ただ火を飛ばすだけの形を成してないものだったりする。
おそらく中級魔法並みの威力はあるだろう。
そしてそれをいとも簡単に、一瞬で多数精製する能力は見事と言える。
魔法発動速度、魔力量、精度、どれをとっても一級品だ。
……伊達に前魔王の片腕、理事長ゼットの息子じゃないってわけか。
顔が親子で全然似てないから、血が繋がってないんじゃないかとか噂されてるが、この能力の高さなら血縁はあるんじゃないかと思えるね。
ただ失礼ながら……
良い練習相手とも言えるね。
「消えろ! 散弾火の玉銃!」
オーリは精製した、多数の火の玉をシールちゃんに向けて連射。
明らかに殺すつもりとしか思えない。普段のシールちゃんなら耐えきれず、死にかねない技だ。
そう。普段のシールちゃんなら……だ。
「正義の鉄拳、受けてみろぉ! ハイパーガトリングスーパー」
と、シールちゃんは叫びながら拳を連打連打。
その拳は、オーリの放った火の玉をことごとく粉砕。砕けた火の玉は、ただの小さな火花となって地面に落ちていく。
「ば、バカなあ!?」
驚くのも無理はない。この前までのシールちゃんが同じことをしていたら、粉砕などできずに拳は焼け、火だるまになってるところだ。
だが今のシールちゃんは僕の魔力を一部秘めている。その魔力はオーリを凌ぐ。
ゆえに、拳に秘められたその巨大な魔力が奴の魔法を砕いて見せたのだ。
元々奴の魔法速度を見抜ける目はあった。そしてそれに対抗できるほどの拳の速度も。
足りないのは魔力だけ。
そんな足りない魔力が手に入ったというのなら……
彼女が、オーリに負ける事はない。
「あれぇ? もう撃ち止め?」
シールちゃんは全弾拳で打ち落としてみせた。
その光景に、あっけにとられたオーリだが、すぐさまもう一度火の玉を精製……
「おそーい! 必殺! エクストリーム・ギガント……」
言い終わる前に、シールちゃんはオーリの眼前にワープしたかのような速読で近づき……
渾身の拳を腹部に直撃させた。
凄まじい衝撃音が鳴り響くと同時に……オーリは吐血。
「ごっ……ば、」
そうして白目をむいて、奴は倒れた。
死んではいない。そこまでの魔力は送ってないからね。
シールちゃん、加減知らなそうだからな……まだ。
あれ以上魔力渡してたら殺しかねない……
「ドームエクストラ……サンダー」
あ、まだ技名終わってなかったんだ。




