11話 君自身の手で倒して
「あの不細工をあたし一人で倒せと?」
口悪いね。
でもシールちゃん、少し不安げな様子を見せている。
強がったり、見栄をはる子だけど、さっきはオーリにやられそうだったわけだからね。
内心怖いのかもしれない。
それにオーリはああ見えて成績上位陣だ。理事長の息子だから家柄もある。だからワイズほどではないけど、取り巻きに囲まれてる。
オーリの場合は慕われてるから取り巻きがいるわけではないけどね。長いものに巻かれるような奴らやオーリを金づるにしてる奴らだろう。
そんなオーリに最下位のシールちゃんが勝てないのは、さっきの騒動でわかりきってる事だ。
そこで、僕の出番というわけだ。僕と協力すればオーリに勝てる。それがわかればシールちゃんも僕と組む気になるかもしれない。
「オーリは執念深い。まず間違いなくまたシールちゃんに嫌がらせしてくるよ。僕がいた今回はよかったけど、次はそうはいかないかもしれない」
「……だから組んで、エクスさんが守ると?」
「まあ、それもありだけど、一番効果的なのは、シールちゃんに勝てないと思わせる事かな」
「……?」
かわいく首をかしげるシールちゃん。
「いくらシールちゃんが気に入らなくても、勝てない相手に立ち向かうほど、度胸ある奴ではないよオーリは」
「ヘタレっぽいもんね」
「だからシールちゃん自身で倒す事に意義がある」
「……どーやってぇ?」
僕は不適に笑う。
ここで僕の出番というわけさ……
それはまた、その時が来るのをお楽しみに……
『ちょっとあんた!』
ん? 食堂のおばさまが僕を手招きする。なに?
「なんでしょう?」
「なんでしょうじゃないよ! お金! 代金!」
え、さっき払った……
よく見たらシールちゃん追加でアイスなどのデザートを注文していた……
今彼女はパフェを口にし始めた。
「甘いものはべつばら~」
「……」
僕は財布を確認するが……あ、そうだ、さっきのですっからかんなんだった。
「追加の代金二万円!」
「に、二万……」
やけに高いデザート頼みまくったな……
一応貯めてるお金あるから寮に戻ればあるんだが……
「す、すいません。お金寮に取りにいっても……」
「ダメだよ! そのまま逃げる気だろ!」
「逃げるって……僕はここの学生ですし」
「踏み倒すなり、ここに近寄らないようにする気だろ!」
というか僕を知らないのかな……ナンバーツーだからお金持ってるとわかりそうなものだが……
見覚えないし、新入りの方……?
「その分働いてもらうよ坊っちゃん」
――この日僕は、食堂で一日バイトするはめになった……
ちなみに一日じゃ足りないからまた後日働かされる事に……
♢
「おっ? クセエ匂いがプンプンすると思ったら、人間の小娘じゃねえかあ! ひゃひゃ」
数日後、やはりオーリは取り巻きを引き連れてシールちゃんを煽りにきた。
今この場にはシールちゃん以外は奴と奴の取り巻きのみ。
僕はあえて気づかれないよう柱を背に隠れて、状況を観察している。
シールちゃんにはこう伝えている。
『戦闘になりそうになったら好きに動いて倒していいよ。勝てるから』
前回はそれで上手くいかなかった。ゆえに半信半疑なシールちゃんだった。でも頷いてくれた。
僕はその信用に答えるだけ……
「懲りずにきたな不細工! 正義の名の元に! 貴様を倒す!」
別に煽る必要はないんだけどね……
「このくそガキぃ!」
オーリは簡単に挑発にのった。
なら僕は動くのみ……
僕とシールちゃんの立ち位置に小さな魔方陣が浮かびあがる。
――そして、
「【魔導転移】」
僕はその魔方陣に魔力を送り込む。――瞬間! シールちゃんに膨大な魔力が注ぎこまれた。
「え? なにこれ?」
秘術、【魔導転移】
これは魔力を他者に分け与える秘術。相手の魔力がゼロに等しいほど受け渡しと伝統率が高まる魔法。
つまり、今シールちゃんには僕の魔力の一部が備わったんだ。




