10話 学園に入った理由
「やーいやーい」
「キー! なんてムカつく小娘ですの!」
未だにシールちゃんはユーノさんに乗ったまま動かない。
……ただユーノさんが魔力を全く使わないでいてくれたからの結果だ。
魔力を使えば今みたいに踏んづけられたりしないし、今も魔力でシールちゃんを弾き飛ばす事くらい彼女なら容易だからね。
「シールちゃん。その辺で」
「は~い」
素直にシールちゃんはユーノさんを解放する。
ユーノさんは鼻息荒くしながら、すぐさま距離をとった。
「あ、というか名前とちゃんづけしてごめんね。嫌じゃないかな?」
「え? いいよシールちゃん呼びで。そもそも名前呼ばれる事あんまりないから嬉しいぃ~」
ニコニコしててかわいらしい。
……さて、これでユーノさんも彼女の力分かったわけだし、邪険にしないだろう。
話を戻すとするか。
「で、どうだろう? 僕と組んでくれたりしないかな?」
「うーん」
「やはりお兄さん裏切りたくない? お兄さんに魔王になってもらいたいのかな?」
「いや、魔王の件は別に……お兄ちゃんに迷惑かけたくないし」
「……迷惑?」
迷惑とはどういう事だろうか?
よくわからないが、もしワイズが魔王になることに反対なのだとしたら、付け入るスキはあるのかもしれない……
そもそもシールちゃんがこの学園に入学し、何を目指してるのかにもよるな……
単に実力をあげたいとか、魔王の直属になりたいとかなのか、彼女自身が魔王になりたいのか。
もし魔王になりたいのなら、彼女にとってもワイズを蹴落とすメリットはある。
結果的に僕と争う運命が待ってるかもしれないが、今現在一番魔王に近いのはワイズ。
なら僕より、まずワイズをって話になるはず……
だが彼女ブラコンだからな……
「お兄ちゃん、別に魔王になりたいわけではないんだよ」
え? ワイズが!?
「それ本当なのかい?」
「うん。魔王になろうとはしてるけど」
?????
なりたいわけではないけどなろうとしてる?
それは一体……
「お兄ちゃんが嫌々でも魔王になろうとしてるのはあたしのためなの」
「シールちゃんの?」
「魔王になって、この国の差別をなくしたいんだって」
差別をなくす? 法律とかでか?
よくわからないが私利私欲ではなく、家族のために魔王をワイズは目指してる……そういう事か。
……どこまで完璧なんだあいつは。
「でも、自分の事くらい自分で何とかしたいのぉ。お兄ちゃんに無理させたくない」
「つまり、シールちゃんは魔王になるためにこの学園に?」
「もち」
……なら、いけるかもしれない。
「ならやっぱり、僕と組んでくれないかな? 君の力を借りて、ワイズに勝ちたいんだ。そうすれば彼は魔王にならずにすむ。現在の魔王筆頭は彼だからさ……協力して、」
「エクスさんはなんで魔王になりたいの?」
「――!?」
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『なんであの子が……あんたならよかったのに! エクス、あんたが変わりにああなればよかったのに!』
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……嫌なこと思いだしちゃったな。
「まあ、その、僕も家族のため……みたいなものかな」
「ふうん。エクスさんが魔王になって、あたしの望み叶えてくれるなら考えてもいいけど」
「本当に!? なんでも叶えるよ!?」
さっきの奢りといい、簡単に安請け合いするもんではないのかもだけど、藁にもすがるしかない。
「待った! 考えてもいいってだけだよぉ! やっぱり自分で魔王になりたいし!」
「でもさ、言っちゃ悪いけどシールちゃん一人の力ではそれは無理だよ」
「むっ!」
むくれるシールちゃん。
すまないけど事実だ。魔力のないシールちゃんが魔王になることは不可能……
「どちらが魔王になるかは協力してみてから決めないかい?」
「というと?」
「オーリ。さっき君に因縁つけた奴、またシールちゃんに何かしてくると思うんだ」
「なんか執念深そうだもんね」
「だからさ……僕の力を使い《《シールちゃんがあいつを倒すんだよ》》」
「――え?」




