9話 試してみないかい?
とりあえず、ユーノさんには悪いけど、話を戻させてもらおうかな。
「シールちゃん。さっきの話に戻していいかな?」
「え、組んでくれって話?」
僕はゆっくりと頷く。
「でもさ~インチキでしょ? それに最下位のあたしのどこに興味あったのぉ?」
「身体能力、あれは凄まじい武器になる。君に相応の魔力があれば……天下を取れる可能性だってある」
「マジぃ? でもその魔力ないからまだ正義の味方にはなれないわけだし」
「正義の味方……」
そういえば彼女はその言葉にこだわってたな。
「差し支えないなら教えてくれないかな? 正義の味方になりたい理由」
「テレビ番組」
「……は?」
て、テレビ番組?
な、なんの話だ?
「亡くなったお母様がね、見せてくれたの人間界の娯楽」
「娯楽?」
「それでね、正義の味方、ヒーローの番組を見せてくれたの」
……架空のお話に憧れた……
そういうことだろうか?
「すごいんだよ、あたしみたいに差別されてる人にも手を差しのべてすくっちゃうの! 憧れたのぉ!」
そうか、差別されてきた彼女にとって、分け隔てなく手を差しのべてくれる善人……憧れるのも当然の話か。
というかさらっと流されたが、お母さん亡くなってるのか……
察するにその母が人間……
人間の母が亡くなり、別の者が母になったのなら、立場が危うくなるのも察せられる。
多分、守ってくれるのは兄のワイズくらいなんだろうな……
「差別? なんの話ですの?」
ユーノさんが話に入ってきた。
「ああ、その、実は……」
人間と言っていいものか迷う。
ユーノさんは悪い人ではないとは個人的には思っている。差別なんてしないはず。
だがおいそれと話していいものか……
「え、というかあなた、ワイズの妹の人間じゃなくって!?」
驚愕する表情を見せるユーノさん。知ってたのか……
やはりNO.1の妹ならそれ相応に有名か。人間でもあるわけだし。
「……人間、わたくしより、人間を……?」
少し震えている。どうかしたのだろうか?
「エクス・リコード! 見損ないましたわよ!」
扇子を僕に向けてにらんでくる。
「わたくしが認めたライバルたるあなたが、こんな人間風情などと組むだなんて!」
風情?
……ユーノさん。僕はあなたを差別するような人だとは思ってなかったのに……
がっかりさせないでほしい。
「そ、そもそも! あ、えっと、く、組む相手! ほ、ほしいならわ、わわわわわわた……ゴホン!」
今度は視線を泳がし照れた様子を見せて咳払い。なんなのだ?
そもそも何しにここに……
「と、ともかく! そんな人間などと組んでワイズに勝てるわけありませんわ!」
「そんな人間じゃない。シール・デュラミスさんだ」
「え」
シールちゃんは少し驚いた表情を見せた。
もしかすると、人間人間とバカにされ続けて、名前をちゃんと呼ばれた事もなかったのかもしれない……
「それに彼女は身体能力に限れば君を凌駕すると僕は思うよ。女子生徒NO.1のあなたをね」
癇に触ったか、眉をピクリとさせシールちゃんをにらむユーノさん。
「……言いますわね。ならお手並み拝見させてもらおう……」
即座にシールちゃんの背後に回る。――そして、
「かしら!」
回し蹴りを彼女に向けて放つ!
――しかし、蹴りは空を割くのみ……
またも残像を蹴っただけだったのだ。
「嘘!」
「なにすんのぉ! いきなり!」
シールちゃんはユーノさんの頭上に現れ、彼女を踏みつけて組み伏せてみせた!
「なっ!? こ、小娘どきなさい! 高貴なわたくしを踏みつけるなど!」
やはりシールちゃんの方が上だ。
ユーノさんは身体能力も男子にひけをとらないほど優れている。
魔力特化で身体能力の低い僕とは違う。
そんな彼女すら上回るシールちゃん……
やはり身体能力に限れば、学園最強もありうる。
シールちゃんしか、いない。
ワイズに勝つためには!




