5話:本当のこと
「…君には、特別な力があるんだ。」
レオンさんの言葉が、私の頭の中をぐるぐると回っていた。
特別な力…?
私が…?
そんな…バカな…。
「…信じられない…。」
私は、思わず呟いた。
「信じられないのも無理はないよ、エリア。僕だって、最初は信じられなかったんだから。」
レオンさんは、優しく微笑んだ。
「レオンさんは…いつから…知ってたんですか…?」
私は、レオンさんに尋ねた。
「僕がこのカフェを始めたのは、5年前のことだ。…その頃、僕は、ある夢を見たんだ。」
レオンさんは、少し遠くを見るような目をして、語り始めた。
「夢…?」
「ああ。それは、とても不思議な夢だった。…夢の中で、僕は、一匹の黒猫に導かれて、ある場所へとたどり着いたんだ。」
「黒猫…? もしかして…ルナ…?」
「そう、ルナだ。ルナは、僕に…《世界の調和を守る者》…と、言ったんだ。」
レオンさんは、ルナの言葉を真似て言った。
「世界の調和を…守る者…?」
私は、レオンさんの言葉の意味が分からなかった。
「ああ。…正直に言うと、僕もまだ、その言葉の意味を完全に理解しているわけじゃないんだ。でも…ルナは、僕に、このカフェを開くように…と、言ったんだ。」
「このカフェを…?」
「ああ。ルナは…このカフェが…《世界の調和を守るための、大切な場所》…になると、言ったんだ。」
レオンさんは、真剣な表情で言った。
「…そんな…。」
私は、レオンさんの話を信じることができなかった。
猫カフェが…世界の調和を守る…?
そんな…ありえない…。
「…信じられないかもしれないけど…エリア、これは本当のことなんだ。…少なくとも、僕は、そう信じている。」
レオンさんは、少し寂しげな表情で言った。
「…でも…どうして…?」
私は、レオンさんに尋ねた。
「どうして、ルナは、レオンさんに…そんなことを…?」
「それは…まだ、僕もよく分からないんだ。…でも、ルナは…きっと、何かを知っているんだと思う。…そして、僕にも…何か…役割があるんだと思う…。」
レオンさんは、ルナの方を見て、そう言った。
ルナは、窓際で、静かに外を眺めていた。
その姿は、まるで、世界のすべてを見透かしているようだった。
「エリア…ルナは…君にも…何かを…伝えようとしているんだと思う。」
レオンさんは、私の手を握りしめ、優しく言った。
「…私に…?」
私は、レオンさんの言葉に、胸がドキドキした。
ルナは…私に…一体、何を伝えようとしているんだろう…?
「エリア…君には、まだ自覚がないかもしれない。…でも、君には…特別な力があるんだ。」
レオンさんは、私の目を見つめながら、そう言った。
「…特別な力…。」
私は、レオンさんの言葉を繰り返した。
「ああ。ルナは、それを…《眠っている力》…と言っていたね。…そして、その力は…いつか、君を、そして世界を大きく変える力になる…。」
レオンさんは、ルナの言葉を思い出して、そう言った。
「世界を…変える…?」
私は、その言葉の意味を理解しようと、必死に考えた。
「エリア…これから、君には、何が起きるのか…僕にもわからない。…でも、恐れないで。君には、きっと乗り越えることができる力がある。…僕を信じて。」
レオンさんは、私の目を見つめ、力強く言った。
レオンさんの温かい言葉に、私は、心から安心した。
「…はい。」
私は、レオンさんの目を見つめ、力強く頷いた。