4話:秘密、共有
秘密の部屋でルナから告げられた言葉の意味を、私はまだ理解できていなかった。
「…《汝の中に眠る力…》…《世界を揺るがす…》…」
ルナの言葉は、まるで古代の呪文のように、私の心に深く刻まれていた。
「ルナ…一体、どういうこと…?」
私は、ルナに尋ねたかった。
でも、ルナは、いつものように「ニャー」と鳴くだけで、それ以上の言葉を発しなかった。
私は、秘密の部屋を出て、カフェに戻った。
レオンさんは、カウンターで、いつものようにコーヒーを淹れていた。
「ただいま戻りました!」
私は、レオンさんに声をかけた。
「おかえり、エリア。どうしたんだい? 顔色が悪いぞ。」
レオンさんは、私の顔を見て、心配そうに言った。
「あ、あの…ちょっと…。」
私は、ルナから聞いたことを、レオンさんに話すべきかどうか迷った。
でも、ルナの言葉が、どうしても頭から離れなかった。
「…《世界を揺るがす…》…」
もし、本当に世界が危機に瀕しているのなら…。
私は、レオンさんに、すべてを打ち明けることにした。
「レオンさん…実は…。」
私は、ルナと秘密の部屋で起こった出来事を、レオンさんに話した。
レオンさんは、私の話を真剣な表情で聞いていた。
そして、私が話し終わると、静かに言った。
「…エリア、ルナの言葉は…嘘じゃない。」
「えっ…?」
私は、レオンさんの言葉に驚いた。
レオンさんは、カウンター越しに私の方に身を乗り出して、私の両手をそっと包み込んだ。
「エリア、落ち着いて聞いてほしい。ルナは…ただの猫じゃないんだ。…そして、エリア、君も…ただの女の子じゃない。」
レオンさんは、私の目を見つめながら、優しく語りかけた。
「どういう…ことですか…?」
私は、レオンさんの言葉の意味が分からなかった。
「エリア…君には、特別な力があるんだ。」
レオンさんは、私の目をじっと見つめ、静かにそう言った。
「特別な力…? 私が…?」
私は、自分の耳を疑った。
「ああ。ルナは、それを…《眠っている力》…と言っていたね。」
レオンさんは、ルナの言葉を引用した。
「でも…私には、そんな…。」
私は、言葉を詰まらせた。
「あるんだよ、エリア。君には、まだ自覚がないだけなんだ。」
レオンさんは、私の手を握りしめ、にっこりと微笑んだ。
その笑顔は、まるで、春の陽だまりのように温かかった。
「…でも、どんな力なのか…。」
私は、不安そうに尋ねた。
「それは…まだ、私もよく分からないんだ。」
レオンさんは、少し困ったように言った。
「えっ…? レオンさんも、知らないんですか…?」
私は、驚いた。
「ああ。でも、ルナが言うには…その力は…いつか、君を、そして世界を大きく変える力になる…らしい。」
レオンさんは、ルナの言葉を思い出して、そう言った。
「世界を…変える…?」
私は、その言葉の意味を理解しようと、必死に考えた。
「エリア…これから、君には、たくさんの困難が待ち受けているかもしれない。」
レオンさんは、私の頭を優しく撫でながら、真剣な表情で言った。
「困難…? どういう…?」
私は、不安そうに尋ねた。
「それは…まだ、私も分からないんだ。でも、ルナが警告してくれたということは…きっと、何かあるんだと思う。」
レオンさんは、ルナの方を見て、そう言った。
ルナは、窓際で、静かに外を眺めていた。
その姿は、まるで、何かを見透かしているようだった。
「エリア…恐れないで。君には、きっと乗り越えることができる力がある。僕を信じて。」
レオンさんは、私の目を見つめ、力強く言った。
レオンさんの温かい言葉に、私は、心から安心した。
「…はい。」
私は、レオンさんの目を見つめ、力強く頷いた。