3話:秘密の部屋へ
ルナを抱きしめながら、私はリナ先輩のことが心配でたまらなかった。
「ルナ、リナ先輩に、どんな危険が迫っているんだろう…?」
私は、ルナに尋ねた。でも、ルナは、私の問いかけに答える代わりに、私の腕から飛び降りると、カフェの裏口へとスタスタと歩いていく。
「ルナ、どこに行くの?」
私は、ルナの後ろをついて行った。
ルナは、裏口を出て、建物の裏側へと回り込んだ。そして、建物の壁に沿って歩いていくと、小さな扉の前で立ち止まった。
「あれ? この扉…初めて見た…。」
私は、その扉に見覚えがなかった。
ルナは、扉の前で振り返り、私を見つめた。
「ニャー。」
まるで、「こっちへ来なさい」と言っているようだった。
私は、恐る恐るルナに近づき、扉の前に立った。
扉は、古びた木でできていて、鍵穴も取っ手もない。
「どうやって開けるんだろう…?」
私が不思議に思っていると、ルナが前足で扉を軽く叩いた。
すると、扉は、まるで魔法のように、スーッと開いた!
「ええっ!? 嘘っ!?」
私は、驚いて目を丸くした。
扉の向こうには、薄暗い階段が続いていた。
「ルナ、ここ、どこ…?」
私は、不安そうにルナに尋ねた。
ルナは、階段を下り始めた。
私は、ルナの後ろをついていくことにした。
階段は、狭くて急で、足元が不安定だった。
私は、壁に手を添えながら、慎重に階段を下りていった。
階段を下りきると、そこは、小さな部屋だった。
部屋の中央には、古びた石碑が置かれ、その周りには奇妙な文様が刻まれていた。
壁には、古い書物が並べられた本棚が置かれ、部屋の隅には、小さなテーブルと椅子が置かれていた。
「ここ…一体…?」
私は、部屋の中を見渡しながら、呟いた。
ルナは、石碑の前に座り、私を見つめた。
その瞳は、いつもより深く、何かを語りかけているようだった。
私は、ルナの隣に座った。
ルナは、石碑に前足を乗せ、目を閉じた。
すると、ルナの体が、淡い光に包まれた。
「ルナ…?」
私は、驚いてルナを見つめた。
ルナの体が、光に包まれたまま、宙に浮き始めた。
そして、ルナの口から、不思議な音が流れ出した。
それは、まるで、風の音のようでもあり、水の流れる音のようでもあり、鳥のさえずりのようでもあった。
私は、その音に耳を傾けた。
その音は、私の心に、直接語りかけてくるようだった。
「…《汝、選ばれし者…》…」
それは、古代の言葉のようだった。
私は、その言葉の意味は分からなかった。
でも、なぜか、その言葉が、私の心に深く響いてきた。
ルナは、目を閉じたままで、言葉を紡ぎ続ける。
「…《汝の中に眠る力…》…」
「…《その力、やがて目覚める時…》…」
「…《世界を揺るがす…》…」
ルナの言葉は、まるで、予言のようだった。
私は、その言葉に、胸騒ぎを覚えた。
ルナは、ゆっくりと目を開けた。
そして、私を見つめ、静かに言った。
「ニャー…」
その声は、いつも通りの、優しいルナの鳴き声だった。
でも、私は、ルナの瞳の中に、深い悲しみと、強い決意を見たような気がした。