2話:黒猫の予感
リナ先輩に飛びかかったルナは、私の声で我に返ったように、慌ててリナ先輩の腕を離した。
「ニャー…」
ルナは、まるで謝るように、小さく鳴いた。
「リナ先輩、大丈夫ですか!? 怪我はありませんか?」
私は、リナ先輩の腕を心配そうに覗き込んだ。
「ううん、大丈夫みたい。ちょっと驚いただけ。」
リナ先輩は、腕をさすりながら、苦笑いを浮かべた。
「よかった…。」
私は、ホッと胸を撫で下ろした。
「でも、ルナが人を噛むなんて、珍しいわね…。ルナは、いつもおとなしいのに…。」
リナ先輩は、不思議そうにルナを見つめた。
「そうなんです…。ルナは、普段はすごく穏やかな猫で、人を噛んだりするような子じゃないんですけど…。」
私も、ルナの行動に首を傾げた。
「もしかして、私のことが嫌いなのかな…?」
リナ先輩は、少し寂しそうに言った。
「そんなことないですよ! ルナは、きっと、何かを感じ取ったんだと思います…。」
私は、ルナを庇うように言った。
「何かを…感じ取った…?」
リナ先輩は、私の言葉に首を傾げた。
「はい…。ルナは、特別な力を持った猫なんです。人間の言葉を理解するし、心を読むこともできる…そして、時々、未来の出来事を予知することもできるんです。」
私は、ルナの秘密を打ち明けた。
「ええっ!? そんな…まさか…。」
リナ先輩は、目を丸くして驚いた。
「本当なんです。だから、きっと、ルナは、リナ先輩に何かを感じて…それで…。」
私は、言葉を濁した。
「それで…?」
リナ先輩は、私の言葉を促した。
「それで…もしかしたら、リナ先輩に、何か危険が迫っているのかも…と…。」
私は、恐る恐る言った。
「危険…? 私が…?」
リナ先輩は、信じられないといった表情を浮かべた。
「はい…。ルナは、時々、未来の出来事を予知することができるんです。そして、その予知は、いつも当たっているんです…。」
私は、真剣な表情で言った。
「でも…私に、一体どんな危険が…?」
リナ先輩は、不安そうに呟いた。
「それは…まだ、分かりません…。でも、ルナが警告してくれたということは…きっと、何かあるんだと思います…。」
私は、ルナを見つめながら言った。
ルナは、じっとリナ先輩を見つめていた。
その目は、まるで、何かを伝えようとしているようだった。
「…わかったわ。エリアちゃん、ありがとう。気を付けるわ。」
リナ先輩は、深呼吸をして、そう言った。
「はい! リナ先輩も、どうかお気を付けください。」
私は、リナ先輩に笑顔を向けた。
「うん。それじゃあ、私はこれで…。」
リナ先輩は、そう言って、カフェを出て行った。
私は、リナ先輩を見送ると、ルナを抱き上げた。
「ルナ、リナ先輩に、何かを感じたの?」
私は、ルナに尋ねた。
ルナは、私の顔を見つめると、小さく鳴いた。
「ニャー…」
その声は、まるで、「そうだ」と言っているようだった。
私は、ルナの頭を優しく撫でた。
「ありがとう、ルナ。教えてくれて…。」
私は、ルナに感謝の気持ちを伝えた。
ルナは、私の腕の中で、静かに目を閉じた。
私は、ルナを抱きしめながら、心の中で誓った。
(絶対に、リナ先輩を守ってみせる…!)