9話:不思議な客
午後の猫カフェ「ルナ」は、まったりとした空気が流れていた。
窓際では、ミケが気持ちよさそうに日向ぼっこをしている。
カウンター席では、常連のおじいさんが、いつものようにブラックコーヒーを飲みながら新聞を読んでいる。
ソファ席では、若いカップルが猫じゃらしで猫と遊んでいる。
私は、カウンターの中で、洗い物をしながら、猫たちの様子を眺めていた。
その時、入口のベルがチリンと鳴った。
「いらっしゃいませ~」
私は、笑顔で入口の方を見た。
そこに立っていたのは…
…見慣れない女性だった。
その女性は、真っ白なワンピースを着て、長い黒髪をなびかせていた。
顔は、まるで人形のように整っていて、吸い込まれるような青い目をしていた。
年齢は、20代後半くらいだろうか。
どこかミステリアスな雰囲気を漂わせる、美しい女性だった。
女性は、店内を見渡すと、ゆっくりとカウンター席に座った。
「…ご注文は…?」
私は、少し緊張しながら、女性に尋ねた。
女性は、私を見つめると、静かに言った。
「…黒猫…ルナに…会いに来た…。」
その声は、鈴の音のように澄んでいて、どこか懐かしい感じがした。
「…ルナに…?」
私は、女性の言葉に驚いた。
ルナは、この猫カフェの看板猫だ。
でも、ルナに会いに来るお客さんは、珍しい。
ルナは、人見知りが激しくて、あまり人に懐かないからだ。
「…はい…。」
女性は、静かに頷いた。
「…ルナは…どこ…?」
女性は、ルナの姿を探しているようだった。
「…ルナは…今…。」
私は、ルナの姿を探した。
ルナは…
…カウンターの端で、眠っていた。
「…あそこにいます…。」
私は、女性にルナを指さした。
女性は、ルナの姿を見つけると、ゆっくりと近づいていった。
そして、ルナの目の前に座り込んだ。
ルナは、女性の気配を感じて、目を覚ました。
そして、女性を見つめた。
…二人の間には、不思議な空気が流れた。
まるで、時間が止まったかのように…。
女性は、ルナに優しく微笑みかけた。
そして、静かに言った。
「…久しぶりね…ルナ…。」
ルナは、女性の言葉を聞いて、大きく目を見開いた。
そして、女性の顔にすり寄った。
…ルナが、人に懐くなんて…
私は、驚いて見ていた。
女性は、ルナの頭を優しく撫でながら、言った。
「…覚えてる…? …私だよ…。」
ルナは、女性の言葉に、小さく鳴いた。
「…ニャー…。」
その声は、まるで、嬉しそうに聞こえた。
女性は、ルナを抱き上げると、カウンター席に戻った。
そして、私の方を見て、言った。
「…ありがとう…。」
「…いえ…。」
私は、まだ状況を理解できずに、戸惑っていた。
女性は、ルナを膝の上に乗せると、私に言った。
「…紅茶を…ください…。」
「…はい…。」
私は、紅茶を淹れて、女性に渡した。
女性は、紅茶を一口飲むと、ルナに話しかけた。
「…ルナ…元気だった…? …私は…ずっと…あなたに…会いたかった…。」
ルナは、女性の言葉に、喉をゴロゴロ鳴らした。
女性は、ルナを優しく抱きしめながら、窓の外を眺めていた。
…窓の外には、夕日が沈んでいくところだった。
オレンジ色の空が、猫カフェ「ルナ」を優しく包み込んでいた。




