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追章・|郷村《Domrémy》
――チュンチュンチュン。チチチチチ。気持ちのいい朝の陽射しと、そよぐ春風に乗って、どこからともなく小鳥たちの織りなす喧騒が聞こえてくる。子供たちの元気にはしゃぎ回る声と、弾むボールの音が村中に響き渡り、無邪気に野を駆け回る子供たちに交じって白い仔猫が宙に揺れる猫じゃらしを追いかけていく。
例に漏れず世界に普く降り注ぐ世界樹の恩寵に与るこの辺境の村は、まさに平穏そのものだった。
――昼下がり。揺らめく木漏れ日の下、他の子供たちからは少し離れた位置で、本を持つ一人の少女が木陰に腰を下ろしていた。ページをめくるはずの手は進まず、本の陰からちらちらと他の子供たちの様子を窺っていた。
『――ボクノコエガキコエル?』
突然頭の中に直接響いた不思議な声に、少女はおっかなびっくりと言った様子で問い掛ける。
「誰?」
『怖がらなくてもだいじょーぶ。僕は――』
~fin~