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魔女と乙女と地下迷宮  作者: 蜜りんご
第三層 海底迷宮
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金魚鉢と宇宙の意思

 我が用意したロミオット王子は、間違いなくロミオット王子じゃった。

 ただし、外見だけは、なのじゃが。


 うむ。我が用意した通りの、人魚王子じゃな。

 お付きの者も、外見に変更はないようじゃ。

 浅黒い肌に黒い短髪の精悍な護衛人魚と、きゅるんと可愛いお世話役人魚じゃ。

 人魚ときたら姫というのが定番じゃが、王子を採用した。

 人魚ときたら、貝殻ビキニの美女と相場が決まっておるようじゃが、全員男にした。


 理由はある。

 至極、簡単なことじゃ。


 そもそも、この地下迷宮は、じゃ。

 我好みの純朴な男児を使い魔という名の婿にする為に造ったのじゃ。

 そこに破廉恥な女人魚なんぞを投入して、男児の心を奪われてしまっては本末転倒というものじゃろう?

 男児の心を淫らに乱すものは、すべてNGなのじゃ!


 ――――と、それはいいのじゃが。

 我はキザったらしく薔薇を加えた王子を用意しておったのじゃがの?

 なぜに、あ奴は海藻なんぞを加えておるのじゃ?

 おまけに、なんで水槽の中にバスタブを?


「へーえ。王子の方は、半魚じゃなくて人魚だったのか。種族を越えた愛ってヤツか?」

「そー、そそ、そうですね。素敵です……ね?」


 ツッコミどころの嵐に翻弄されておったら、ケータの無邪気な感想が聞こえてきた。

 そう言えば、ケータは半魚王子かと思って楽しみにしておったな……。

 半魚じゃないことにがっかりされなかったのは良かったのじゃが。

 ケータよ、そこか?

 まず、そこなのか?

 いや、確かに。それもそうではあるのじゃが。

 それよりも前に、色々と気になるところがあるじゃろう?

 い、いや。大らかなのは、決して悪いことではないがな?

 それに、種族を越えた愛とかいう以前に、色々と問題があるように思うのじゃがな?

 うーむ。恋愛ごとに興味を持ってくれるのは、願ってもないことなのじゃが。

 この状況で興味を持たれるのは、ちと微妙じゃのぅ……。


「んー。でも、なんで水槽の中に風呂なんだろうな? あ、あれか? お湯が溢れても、保健室が水浸しにならないようにってことか? 人魚王子は、なかなか気遣い屋さんなんだな!」

「そ、そうですね?」


 ん? んん?

 ケータ?

 水槽の中にバスタブが置かれていることに疑問を覚えてくれたことには安心したのじゃが?

 その感想は、どうなのか……?

 いや、の?

 他人の気遣いに気づけるのは、心が優しい証拠だとは思うのだが?

 あれは、果たして気遣いからなされたことなのか?


「人魚王子は、海藻が好きなのかなー? 糸で揺らしているのは、水中で暮らしていたころを懐かしんでるってことか? うーん。あの海底学校、海の底にあるはずなのに、校舎の中には水はないみたいだからな。もしかして、海底学校に水を取り戻すことがミッションか!?」

「どう……なんでしょう……ね?」


 うーむ?

 いや、海中生活を懐かしむにしても、だからって海藻を口に咥えて、尚且つそれを糸で吊ってまで揺らそうとは、普通はしないと思うぞ?

 海底学校に水を取り戻すというのは、悪くないミッションだとは思うが、これまでにそれを思わせるようなエピソードはなかったように思うぞ?

 何より、海底学校攻略前に校舎を水で満たしてしまったら、女勇者は呼吸が出来なくなるのでは?

 

「あ! でも、それだと、リンカがヤバいのか! うーん…………そうだ! 水を取り戻す前に、人魚か半魚に変身する秘薬を手に入れればいいんだ!」

「…………姿はそのままで、エラ呼吸が出来るようになる秘薬というのもいいですね? もしくは、呼吸が出来る魔法の金魚鉢を被るとか?」

「金魚鉢か! 宇宙服みたいで、なんか、いいな!」


 おお。ちゃんと自分で気づきおったか。

 くっ。じゃが、女勇者の話題をケータから持ち出されるのは、モヤッとするのぅ。

 それと、人魚化・半魚化の秘薬は当然却下じゃ!

 女人魚勇者なんぞ破廉恥極まりないし、半魚もアレじゃ。

 ケータは半漁姫のことを気に入っておったようじゃからの。

 万が一のことがあってはいかん。

 と思って、我からもエラ呼吸と魔法の金魚鉢を提案してみたのじゃが。

 ケータは、金魚鉢案を気に入ってくれたようじゃ♡

 宇宙服みたいだとか、男児らしくて実に良いではないか。

 いっそのこと、本当に宇宙服を用意するというのもいいかもしれんのぅ。

 どれ、ここは一つ……………………ぬぁっ!?

 そ、そうじゃった!?

 我は今、地下迷宮に干渉できんのじゃった!


 はっ!?

 待てよ、なのじゃ!?


 これは、つまり。

 宇宙の意思が、ついついダンジョンマスターとしてホスト役を務めようとしてしまう我に、もっと映画館デート気分を満喫せよ、と言っているのでは!?

 ケータの口から、宇宙服という言葉が出てきたのが、その証拠なのでは!?

 そして、ケータもまた、じゃ。

 我に、ホスト役のことは忘れて、デートに集中してほしいと感じている、ということのなのではないのか!?

 二人の時間を大切にしよう、と。

 そういうことなのでは、ないのか!?


 うむ。

 きっと、そうに違いない。

 そうに違いないな!


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