「想い」
今日も静かな朝だった。
隣に座る玲央に「近い近い」と思いながら、ちょっと赤くなったのをミルクティーのせいにしていた。今日はいつもより距離が近い。結月は缶のミルクティーに集中していた。
「……お……い、結月、おーい」
目の前に玲央の顔がある。
ビックリして、咄嗟に結月は顔を背けてしまった。
ふーっと耳元に息を吹きかけられて「ひゃっ!」と咄嗟に反応してしまう。
「ななな……なにするのよ!」
結月は慌てふためいて叫んでしまっていた。それを見ていた玲央がニヤリと微笑む。
「どうした~結月。顔が赤いけど――」
その顔はいたずらっ子そのものである。「信じらんない!」と言いながら拗ねて向こうを向く。玲央はその仕草が可愛くて仕方なかった。自分の感情が揺らぐ。
「冗談じゃん……それとも」
そう言いながら結月の髪に指を絡ませる。
「俺のこと嫌い?」
そのまま自然な形で耳元で囁いた。結月はパニックである。
「なー!なんなのよ! 玲央さんはそんなに揶揄って楽しいの!?」
そう言ってはいるが、目元がうるっとしている。
玲央はその表情に逆にドキッとさせられ、自分の中で不確かになっていた「想い」に気づく。
無意識で結月の目元を拭う。
「ホントにお前ってカワイイな」
玲央は無意識に呟いていた。気が付いたら毎朝一緒にいて、隣に座って冷や冷やしながらも、その一喜一憂に玲央は惹かれていた。
結月はパニックになっていてそれどころではない。少しずつ自分との顔の距離が縮まることにどうしていいか分らず真っ赤になる。
ふっと、玲央の意識が違う方向へ向いた。