表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
可愛いお人形ちゃんにされてしまった私。脅されているのに恐怖よりもどきどきしているのはどうしてでしょう?  作者: 明日のリアル
可愛くなっちゃった(元)お人形ちゃんとべったり甘える(元)飼い主のそれからとこれから~愛はいつまでも、ずっと、ずーーっと、紡がれて~【番外】
55/61

ずっと守ってみせる、愛し尽くす……私の気持ちは絶対に揺るがない、そう……なにがあろうと決して(陽子視点)

「うーちゃん! うーちゃん!」


「ん? どうしたの?」


「どうしたの? じゃないよ! これ見てよ、これ」


「とっても綺麗な花ね。名前とかあるの?」


「これは……えっと、あれ? なんだったかな? ちょっとスマホで調べてみるね」


 色とりどりの花の楽園に訪れた私。その中で花なんかよりも一番輝いて、とても眩しくて悪に染まりきった汚れた手にまみれた私と釣り合いが取れているのか不安になるほど綺麗な花。

 

 旭川遥、海原女子高等学校二年生。今年で17歳の赤いブーゲンビリアの髪飾りを毎日欠かさず付けてくれている黒髪のショートカットで“超”を付けたくなるくらいの美少女。

 

 前は遥と呼んでいたけれど、今はるーちゃんって呼んでいる。


 名前を連呼したって、るーちゃんは笑顔で返事をしてくれる。もれなく名前を連呼してくれるので気持ちが昂る。

 場所さえよければ機会を伺って襲ってしまうくらい大好きだ。いや、大好きを突き抜けて愛してる。


 この気持ちの強さは誰にも負けない、負けてたまるか。


「るーちゃん♪」


「はーい♪」


「大好き」 


「えへへ、私もうーちゃんに負けないくらい大好き♡」

 

 るーちゃんとの出会いは去年の4月。今年は夏の7月で毎年恒例の梅雨の時期をやっと乗り越えたのでかれこれ終盤。


 一応カウントしてみると一年以上は経過している。本人は私との出会いを6月としてカウントしているようだけど。


 それにしたってもうじき遥の夏休みが終わるのかと考えるだけでどうしようもなく寂しくなる。


 泣いても笑ってもるーちゃんが学業の方に優先せざるをえないので昼のシフトがなくてもいちゃつくことが叶わないから。


 キスして滅茶苦茶蕩けて、時々ぽーっとしている顔を昼にも拝められないなんて最悪だ。


 この野郎……呪ってやる。私のるーちゃんを容赦なく奪いやがって。明日から爆弾でも仕掛けて校舎を丸ごと爆破してからるーちゃんをお家に閉じ込めたい。


「歩き疲れたから、そこのベンチで休もうよ……るーちゃん」


「えぇ……なんかヤらしい」


「なんでヤらしいのよ?」


「だって、そこ人目が付かなそうな場所だし」


「……誰かに見られたらキスできないでしょ」


「……ここでするの?」


「うん」


「そっか……バレたら後が怖いけど、うーちゃんがそこまでしたいなら私もしよっかな」


 ノリノリなのか、私の意見に同調すると一番乗りでベンチに座り、平手でペタペタと早く座ってと目線で訴える。

 あまりにも可愛すぎて、キスがそんなにしたいのかわくわくしていて……それから人目なんて関係なく溺れる。


 細くて小振りな眉毛・ぱっちりとした大きな瞳・すっとくっつけたくなる鼻にどれだけ時間を掛けたとしても私の舌の中で埋め尽くしたい小さなお口。

 とっても綺麗なお肌で愛嬌のある顔立ちにちろちろとつついて有無を言わさず舌をがっつりいれていく。

 ぐちょぐちょと音を鳴らし、ねっとりねばついたるーちゃんの唾液を奥深く呑み込んで。 


 あぁ、そうそう……この感覚。消えない、全然消えない。私の中に眠る熱い恋心が。


 想いが成就したからこそ想いが爆発的に広がる。向こう側で花が見えて、そこから下の階段を下った先にある花のフロアではカメラマンや家族連れやカップルが花を観察をしていようともお構い無しに愛し合う。


 遥さえよければ……いいえ、るーちゃんさえよければその半袖の白いシャツと真っ赤なミニスカートを半分捲ってキス以上のことをしたっていい。


 それぐらい私の愛は重いと自覚している。いくら人目が当たらず隠れみのになっている場所だからとキスを超えた先にあるエッチはやり過ぎかもしれないし、無理矢理やって嫌われてもショックなので今回はキスだけで終わらせようと思うけど。


「んんっ……ちゅる……んふぅ……れろ」


「んはぁ……んっ……んちゅ」


「ん、んー……んむっ……れりゅ」


「んくっ……んんっ……ちゅぱ……んっ」


 舌から熱が伝わる。濃密な時間を過ごしていくうちに我を捨てて貪る。

 可愛げな美少女をキスだけでこんなにエロエロにさせて、なおかつスイッチが入ったのかるーちゃんも私と同様に情熱が籠った瞳で私の口を容赦なく犯しまくって。


 叶ってよかった……可愛いお人形ちゃんなんかではなく可愛い恋人としてキスできるなんて夢かなにか錯覚してしまいそうなくらいに幸せに満ちている。

 だって、こんなに合法的にるーちゃんと愛を確かめられるんだから……とっても素敵なことだと思わない?


「じゅるるる、んふぅ……好き、んもぅ……好き」


「んぁぁ……はぁ……ぁ……私も……ちゅき……口いっぱい、うーちゃんで満たされて幸せだよ」


「るーちゃん、一回だけでいいから“陽子さん、愛してます”って言って」


「……陽子さん、愛してます」


「はぁぁ♡ 私も愛してるよ、遥」


 るーちゃんは当初怯えていた。今でこそこんなに笑顔が絶えないとっても素敵な子になったけど……万引きが見つかって意図的に施錠して閉じ込めてやったときに浮かべていたあの表情とは雲泥の差だ。


 万引き自体は別に裁いてやろうとか微塵にも思わなかった。二年前に入ってきたアルバイトとして、なんともくだらない日常を過ごしてきた中で一目見たときから胸がどうしようもなく高鳴った出来事は今でも鮮明に思い出せる。


 がらにもなくこの歳で一目惚れをしてしまった。しかも年下の同性で制服を着た未成年の高校生……けど、あの子の顔・身体・仕草が全部忘れられない。


 それまで色の付かなかったドラッグストアの店内が瞬く間に彩り、その中でも釘付けになる美少女の姿が脳裏に深く刻み込まれる。


 名前は分からない。知りたくても迂闊に聞けない。相手はピチピチの女子高生で私はただのしがないフリーターもどきではとてもじゃないけど近づけない。


 前まで20代前半の頃、とにかくお金が欲しいので男性接待業のキャバ嬢なんかやったりしてだいぶ稼いでいたけど26歳ではもう手遅れ。


 若い頃はやたらと男子も女子も美人だなんて言われて少しくらいは舞い上がっていたけど、この歳になって言われても嬉しくともなんともない。


 でも……あの子に言われたらどうなるんだろ? きっと嬉しすぎて空を舞い上がっているかのような気持ちなるんだろうな。


 あぁ、なんとか無理にでも私の物にならないだろうか? 最悪犯罪に身を染めてでもあの寂しそうな目を私が変えてあげたい。ずっとずっと、願わくば私だけを見つめてほしい。

  

 けれど……美少女は小さな商品を手にとってすかさず鞄に物を詰め込んだ。

 隙間からこっそり覗いていた私は。


「なんか、ちょっとがっかり」


 商品なんか盗んでいないで私のことを見てよ。そんなものより魅力的じゃないの? 


 ねぇ、どうしたら……商品よりも私を見てくれるようになる? 

 

 心がざわつく。帰宅してもなおあの子の横顔を思い出すだけで全身が強く強く熱くなる。


 最終的にはどうしようもなくなるので自分の指を使って、全身の火照りを強制的に冷まさせる。

 終わったあとに襲い掛かる虚しさ。一人で一体なにしてるんだろうと思いながらマンションの一室で眠る。


 そして……私はある考えに至った。


 経過観察をしながら改善が見られないようなら直接手を下す。法的手段なんてものは最初から考えていない。

 絶対的に服従できるような私と美少女だけの秘密の関係で精神的に縛りつけてやろうと。

 

 計画が実際に動いたのは二ヶ月後。この間はドラッグストアで盗みを働く際に浮かべる表情をまじまじと見とれていたり、調査の一貫として無意味な休日を美少女の尾行に全力でリソースを注いだり。


 中でも観察していて収穫があったのは私と同じ母校の高校生だったこと。

 これは驚いた……服装が若干ながら10年前と違うし、なにより私自身高校を卒業してから数年間はこの生まれ住んでいた街から離れていたためにデザインが変化していたことに気付かなかった。

 まあ、なにはともあれ……あの子が後輩であるという事実に歓喜する。


 いつか許されるなら先輩後輩プレイとか制服を着させたまま犯したりしたいなぁ……なんて頭の中では邪な考えが止まらない。

 

 うふふふふっ、あはははっ!


 これだけ夢中になれるのはかつてなく珍しい。いいや、初めてかもしれない!


 無我夢中もしくは恋は盲目。どちらも当てはまっている四字熟語とことわざ。


 26歳になって恋を知るとは思わなかった。そういうのはとっくの前からなくなっていると思っていたのに……案外見つかるもんなんだね。


「ハァ……ハァ……スキ、スキ、ハヤクワタシノモノニシタイ。イマスグニデモホシイ。スキ、スキ、スキ」


 カメラ屋さんで現像したら確実に怪しまれるので、無音スマホで撮影した写真をパソコンからプリンターに経由してまだ一枚も貼っていないアルバムを美少女でいっぱい埋め尽くす。


 好きの大渋滞発生。意味もなく、写真に顔を近づけたり匂ったりはたまた最終的には気持ちが昂りすぎて指で興奮を静めたり。


 とにかくこの美少女のせいで多くの理性が失われた。この歳にもなって、なんでこんなに奥手なんだろうと自分を恨むばかり。


 さっさとアプローチして私の力で落としてしまえばいいのに全然踏ん切りがつかなくて嫌になる。


 で、後悔に後悔を重ねて計画を実行。いつも通り時間はずらすも大体は入店してくる高校生の美少女に狙いを定めて、万引きを確認してから店の外へと出たところで自然と肩を掴む。

 驚くほど華奢か体つきで思わず握ったら壊れてしまうんじゃないかと思うくらい貧弱。  

 私は丁重に扱うことにした。まるで壊れたら何百万もする食器のように繊細な手つきで優しく語りかける。


「ねぇ、ここじゃあれだから部屋でゆっくり話さない? あなたには色々と聞きたいことがあるのよ」


 趣味とか好きな食べ物とか嫌いな食べ物とか他には長所とか短所とかどこの箇所が弱いとか……そして、なによりも一番に聞きたいのは。


 ファーストキスは済ませたか? これだけはなにがあっても聞くつもりだ。

 どんなに手が汚れようとこれは必ず聞き出してみせる。仮にファーストキスが既に終わっていて彼氏持ちとかだったら彼氏には精神的なおきゅうを据えてこの世から抹消してやることも辞さないが……果たして、この子は。


 勇気を出して、震え声になりそうだけどなんとか我慢して余裕のある大人を演じる。


 ついでに名前も入手した。旭川遥……あぁ、とってもいい名前。もう、遥って呼びたい……今すぐ呼ばせてほしい。

 けど、ここは役を演じよう。追い詰めなければこの計画は成功しない……だから、演じた。

 万引きを追い詰めるただのしがないドラッグストアの店員として。


 尋問は、大体好感触。無慈悲な選択肢を与えて追い詰める段階に入った。


 こういうときに悪知恵が働くところはほんとに優秀だと思う。ここまで壊れている人間は全国を飛び回っても中々いないに違いない。


 頭の回転が早くてよかった。才能を恵んでいただいた両親には少なからず感謝しよう。

 

 それからいくらか時間が経過。しかし、遥は肝心のファーストキスに対しての質問に答えてはくれない。

 焦らしプレイとかお姉ちゃんに対してのご褒美かなにか?

 でも我慢ならないので結局タイムオーバーということで強制的に口を重ねた。

 

 キスをするたびに我慢できないのか漏れてくる声に興奮が止まらなくて、口を離してできあがった私達だけの透明なアーチはまさに至高の芸術品と呼ぶにふさわしく……完全に頭が真っ白になっているであろう遥に対して最後の一撃を加えることにした。

 

 お人形ちゃんとして私の傍にいなさいという強要。ここまで丁寧にやっても上手くいくかは本人次第ではあるけれど、結果的に言えばなにもかも成功した。


 可愛いお人形ちゃんになってくれてとても嬉しいし、なによりファーストキスの相手が私であることに感謝しきれない。

 ふふっ、やった……これでこれからは初々しい遥を私色に染め上げられる。

 どんどん離れられないようにしよう。キスもいっぱい……たくさんしてあげなくちゃ。


 その日は夜遅くに雨が大量に降り積もったが逆に私の全身は太陽にも負けないのではと思うくらい熱くなって。


 テンションが昂って結局就寝前に遥のぽーっとなった顔を浮かべながら手を使って発散する。


 今度はあまりにも気持ちよすぎて寝る前にパンツを駄目にしてしまった。

 でも、そこに虚しさは微塵にも感じなかった。これからのことを考えるだけでもワクワクするからだ。


「うーちゃん、疲れた。もう寝たいよ~」


「はい、ここに頭をつけて」


「わーい♪」


「うふふっ、ほんと……可愛すぎ、いつまでも愛でたくなっちゃうくらい」


「す~、す~」


 飼い主とお人形ちゃんの関係は途中トラブルに見舞われ僅か半年経たずに崩壊した。


 けれど、それこそが遥ときちんと向き合えるチャンスだった。


 遥の告白を受け入れてめでたくゴールインを迎えた私は最高にハッピー。

 でも……本当なら遥の誕生日に駄目もとで好きだよ、愛してるって言おうとしたのに先を越されてしまった。


 最終的に奥手な女子で終わってしまったけど今はそれでよかったと逆に思っている。


 年下に告白されるシチュエーションなんて人生に一度あるかないのか体験。

 味わえるものならぜひ味わいたかった。だって密かに私からではなく遥からの告白を待っていたから。


「るーちゃん、るーちゃん……私だけの大事な……るーちゃん」


 神様から最高の贈り物を授かった以上これからもどんどん愛でることになるだろう。


 私の膝の上ですやすやと寝息を立てながらもふにゃふにゃした表情で幸せそうに寝ている遥の黒い髪を撫でて空を見上げる。


 夏真っ盛りなのに、木々が揺られてなお頬に当たる穏やかな風。

 太陽は眩しさを引っ込めて、私達の様子を静かに見守っているかのよう。

 

 まぶたが急に重くなる。ぽかぽかしているかもしくは遥の寝顔を眺めて睡眠作用が働いたのか。


 どちらも断言できなかったけど、これだけは言える。


「何十年何百年経っても……誰よりも……愛して……いるよ、るーちゃん」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ