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可愛いお人形ちゃんにされてしまった私。脅されているのに恐怖よりもどきどきしているのはどうしてでしょう?  作者: 明日のリアル
可愛くなっちゃった(元)お人形ちゃんとべったり甘える(元)飼い主のそれからとこれから~愛はいつまでも、ずっと、ずーーっと、紡がれて~【番外】
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誰であろうと許さず、仮に動物にしつこく懐かれていても問答無用で嫉妬するようです。うーむ、これは焼きもちって奴ですかねぇ?

「はぁ~、疲れたぁ~」


「お疲れ、旭川さん。初のバイト……よく頑張ったね♪」


「まだまだ不馴れで大変ですけど、やりがいはありそうです」


「んふふっ、バイトって意外と難しいでしょ? 楽そうに見えて実際やることけっこうあるし、なにより肉体労働がつきものだし」


 レジ操作もおぼろげで、品並べもどこにどれがあるのか探すのに手間取って、商品全然把握しきれていないから年老いたおじさんに注意されたり、自宅の掃除とは違って店内の清掃なんてやりも分からないから一から十まで教えてもらったりと初日にやらかしたことは数知れず。


 その、多くは店長やうーちゃんにフォローしてもらったりしてなんとか命からがらこうして昼食の時間に入れたのですが今思うと全身からドッと疲れが蔓延しております。


 事務室には店以外の持ち出し不可の重要ファイルと難しい言葉と漢字で埋め尽くされ全部読もうにも数週間は掛かりそうな就業規則のファイルが棚に置かれており、まあまあ高そうな椅子と固そうな机の上にポンっと置かれたお高めのパソコンには受注数と発注数とか売り上げに関する詳細がデスクトップに映し出されていて。

 

 私達がこうして別の机でうーちゃんとお食事をしている間にも仕事が回っているんだとしたらなんとも言いがたい感情がにじみ始めました。


 こんなに忙しなく働いて、それで地道にコツコツと商品を売ろうとしているのにどうして私は自分の感情を優先して無断で盗みとるのか。


 あー、とっても愚かです。ほんと一時期の感情とはいえ馬鹿なことをしてくれましたね。


「旭川さん……」


 うーちゃんと目が合う。ここでなら店長も働いて、昼の時間から店内に回っていったアルバイトがいるので事務室でならこっそりとあだ名で呼べるかもしれない。


 けど、職場でそういった発言は控えるべきかもしれない。あとから見つかったらどうなるか分かったものじゃないから。

 でも、どうせ店長からは仲のいい親戚という設定で通しているんだし少しくらいなら。


「うーちゃん、ごめん。私最低だ……働くまで気づかなかったよ。店の商品勝手に取ってそれで達成感に浸っーー」


「るーちゃん、めっ!」


「ふぎゅ!?」


 私まだ喋っている最中!! 両手でほっぺをおしゃえないでぇ!


「もう終わったことなの! るーちゃんの罪は私が消した。だから墓に入るまで一生忘れて。いい? 私だけの可愛い恋人さん?」


「分かりまひた」


「ふふっ、じゃあ残りの仕事も一緒に頑張りましょうね! レッツ、ファイトだよ! るーちゃん!!」


「はーい」


 職場に先に戻ると言ってから私が作った空っぽの弁当箱の上でご馳走さまをしてから、ご機嫌なのか足どり軽やかにうーちゃんは事務室を去っていってしまいました。

 

「むー」


 今日はうーちゃんがここの先輩という立場もあって余計にペースに乗せられっぱなしでいかんせん釈然としません!!


 どっかで仕返ししたいなぁ。あの余裕ぶった表情をドロドロに崩したいなぁ。

 

 空っぽの弁当箱を意味もなく見つめてそれから無言で両手を合わせてから容器を全部片付ける。

 あっ、うーちゃん! 弁当箱くらい片付けてから職場に戻ってよ! 全く、もう!


 ぷんすかぷんすかしながらも仕事モードに切り替えることにした私は午後は午前よりもさらに頑張るように前のめりにして仕事に向き合っていきます。


 レジに関しては全部が全部マスターできたわけじゃないけどある程度は仕上がり、店長からはその調子だよと言われたので思わず声が上擦って素直に喜んでしまいましたと同時にうーちゃんの目がちっとも笑っていないのが気になりました。


 あぁ、怖い怖い。なんで、そんなに目を光らせてるの?

 

 時間もいい具合に進行中。途中店長と一緒に外に出て必要な掃除用具とやり方を口で説明してくれました。

 当然ながら、これもメモ帳にカキカキ。あとで自宅でも見直せるようにぐだぐたに書いた言葉を整理しておきましょう。

 ではでは、店長から最後に任されたお掃除開始です! 張り切っていきましょう……っ!?

 

「ニャ~」


「うひゃ!?」


「ニャ~オ」


「わわわわっ!?」

 

 店外のごみ取りからわずか数分で猫乱入!! えー、あれ? なんか段々近づいてきたんですけど……って、また増えた!?


 なんということでしょう。私のことを気に入っているのか一匹増えたらまた増えてまたまた数を揃えて増えるではありませんか!!

 猫さんが私の回りをうろちょろとニャ~ニャ~、鳴いてから足回りにすりすりぃ。


 動けない!? 動きたくても身動きが取れません!?


「こ、こらぁ! 集まったら駄目! 仕事できないからぁ!!」


「ニャ~オ♪」


「ニャァ~♪」


「ニャ~」


 皆さん、野良猫でしょうか? 白と黒とかがやたらと目立っており全部で三匹の猫さんが大集合しております。

 そして、歩こうにもひたすら付きまとわれるので中々行きたいところに行けないという事件が発生!

 

 私ってこんなにも動物に好かれる子だっけ? いやいや、それよりなんとか追い払う手段を探さないと!


 いや、でも無闇に追い払うのは……猫さんが可愛そうだし、なんとか穏便に帰ってもらう方法とかないかな?


 ひとまず店内入り口の掃き掃除は後回しにして、数台分駐車可能な駐車場へと移動……と同時に三匹の猫さんも近くをうろちょろしながら尾行。


 アスファルト製の駐車場にはゴミがいくつか散乱していました。


 やれやれと思いながら、ほうきを使ってささっとごみを集めてぇぇぇ……うぅぅぅ、やりづらい!!


「もう、やめて! 仕事に集中できないから邪魔しないで!!」


「ニャ~♪」


「絶対分かってないですね、これは」


「ニャ~オ♪」


「ニャ~」


 立ったまま注意するから伝わっていないのかも。仕事を一時中断して膝を曲げて極力姿勢を低く維持。

 猫さんとちゃんと目を合わせるようにして説得すればおとなしく帰ってくれるはずでーー


「ふにゃ!?」


「ニャ~~♪」


「あふっ!? ちょ、やめっ……てぇ!」


 飛びつかれた上にペロペロ舐められました!! えっ、えっ!? 理解が追い付かない!?

 な、ななんで私こんなに懐かれているんですか!? うわぁぁぁ、やめてぇ!! そこくすぐったいからぁぁ!?


「この、クソネコ!! るーちゃんから離れなさい!!」


「ニャ!? ……グルルル、シャアアー!!」


「なに、喧嘩のつもり? 上等よ、私の可愛い恋人に手を出したことここで後悔させてやるから死ぬ気で掛かってきなさい!!」


「うわぁぁ! ストップ! ストップ! うーちゃん、こんな場所で物騒なことしないで!」


 拳を振り上げようとするおとなげのない女性春野陽子。メラメラと湧き上がる闘志と逆立つ桜色の髪を持ったミディアムが異様なほどに存在感を立たせて、まるで今からコロシアムのような本格的な戦いが始まるのではないかと思ってしまうくらいに猫三匹と睨み合っています。


 一触即発……宥めないと本気で戦争が始まりそうな予感。うーちゃん……事態を余計に拗れさせないでよ。


 というか店の中、いつまでも店長一人だけはまずくないですか? 

 立ち向かうにしても、まずなにより先に店の方に目を向けてください!


「どきなさい!!」


「まぁまぁ……動物相手にそんなに怒っちゃ駄目だよ」


「私の可愛い恋人に無断で手を出したのよ? だったら怒るのも当然よね?」


「一回その拳沈めて。相手は動物なんだから手を出したらバイトの立場はおろか虐待として見なされるんだからもうちょっと穏便に済ませようよ……ね?」


「うーん、るーちゃんは……このクソネコに対して怒りとか湧いていないの?」


「怒りとかじゃなくて困惑とかならあるかも。こんなに懐かれている理由が分からないからなおさらって感じ。」


「それはね……るーちゃんがいかに可愛いか自分で理解していないだけだから」


「私よりもうーちゃんの方が可愛いよね? 最近は特に」


「いやいや! そこはるーちゃんだから!! この世で一番可愛くて可愛くて可愛すぎて下手したらギネスに載るくらいだから!!」


 ギネス!? とはまた、大袈裟なことを言い出しましたね。いくら私にメロメロだからって言っていいことと言ってはいけないことくらい気づいて欲しいものです。

 可も不可もない……この顔立ちが可愛く可愛くて可愛すぎるはずがありません!

 

 うにゃあああ! だから静まってくださいよぉぉ! 私の胸のドキドキィィィィィ!!


「しゃああああ!」


「シャアアアア!!」


 って、また始めたの!? でも、今度はなんで同じ声のいがみ合い? 

 姿勢を低くしながらも距離を取るうーちゃんに近づこうとする猫三匹。

 これは一斉に襲われたらたちまち引っ掻き傷しか残らないですね。

 動物相手に暴力を振るおうとするうーちゃんなんて見たくないのでやめさせましょう。


「う~ちゃん♪」


 なで声で名前を呼んでみると大体うーちゃんも。


「な~に?」


 という具合で間違いなくなで声で返してくれます。なぜなのかは分かりませんが恋人になってからより一層私しか見えていないので私に対してだけはとことん甘いのでしょう。


 お店で働いているうーちゃんはまあよく働き、よくフォローしていて気が効く女性って感じですけど私のことになると全然周りが見えていないのでこれまた不安になりそうです。


 しかし、幸いにもうーちゃんが仁王立ちしている場所は駐車している車に隠れた隅っこで上手い具合に私達が見えていない。


 当然ここの車を所有しているドライバーさんが戻ってきたらアウトだけどこの様子なら……まあ、できなくもないか。


「身を屈めて」

 

 姿勢を低くしてくれないと行動に移せないのでまず促します。まぁ、私の命令に対してはすぐ言うことを聞いてくれるので拒否とかはそういうのは一切ありませんけど。


「へ?」


「早く」


「は、はい」


「猫さん♪ じっとしててね♪」


「ニャ~♪」


「ニャ~オ♪」


「ニャ~」


「一体なにがしたいの? るーちゃん……んんんんッ!?」


「んっ……ちゅぱ……れろ……れりゅ……ちゅる」


「んんっ……んくっ……んふぅ……んっ」


「んちゅ……んんっ……んむっ……ぷはぁ」


 店の外なのでこれくらいに留めておきます。さすがに店員がこんな淫らな行為をすることは頭がどうにかしているとしか思えません。

 唇を重ねて、舌を入れてうーちゃんの怒りが沈むのを目でばっちり確認してから口からこぼれ落ちそうな唾液を舌でべろんと舐めとり立ち上がる。


 おろおろしながら、ゆっくりとガクガク立ち上がるうーちゃん可愛すぎ!! 

 顔真っ赤でゆでダコみたいで面白いですね!!


「この続きがしたかったら……猫さんのこと、私に任せてくれるかな?」


「はい! もう任せます! あとはよろしくぅぅぅ!!」


 あはは。攻めにとことん弱いのかうーちゃん顔赤くして全速力で退場してしまいましたね。

 家に帰ったらたくさん愛でてあげましょう……その前に私の周りをしつこくうろつく猫三匹を説得しなければなりませんが。


「私達はね……すっごく、愛し合ってるの♪ だから、あんまりベタつかないで欲しいな。うーちゃんは私が他の子と仲良く話しているだけでも異常なほど嫉妬する……というよりも」


 焼きもちですかね? ああいうのは。まあ、なんにせよ……さっきの光景を見たおかげか猫さん達は急に聞き分けが良くなってしまいましたので掃除続行です。

 

 汚れがないように再度周辺を見渡して、それから店で一通りの業務を済ませて家に帰ったら真っ赤にしているうーちゃんをベッドに連れ込んで衣類を剥がしてたっぷりと可愛がってあげましょう。


 とか想像していたらムフフが止まりません。あー、今からとっても楽しみです……うふふふっ。


「ニャ~♪」


「ニャ~オ♪」


「ニャ~~ン」

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