一緒に笑って、共有して、語り合って。熱い熱いエールは私の甘いおねだりで狙い撃ち♪
「はーい、陽子さん! あ~~ん♡」
「あーん」
「ふふっ、美味しいですかぁ~?」
「美味しいよ、とっても」
「えへへ、よかったぁ」
メイド喫茶に身を固めて数時間が経過したのち、私にもご褒美タイムが訪れました!
休憩時間はなんと二時間! 一時間も多く貰えたのは先ほど困っているところを見ていたのに忙しいことを理由に助けられなかったことと、改めて私に負担を増やしたことに対して痛感を覚えたとかなんとかで残りは他のメンバーと上手く入れ替えながらやっていくそうです。
で、メイド喫茶から解放されて元通り上下共に学校指定の制服に身を通して海原女子高等学校に遊びに来てくれた陽子さんと文化祭ならではのデザートや飲食店などをああだこうだ言い合いつつも笑いあって思い出のページを一枚ずつでも共有してます!
「じゃあ、次は遥の番ね」
「はーい!」
「あ、あーん」
「あーむ……むふぅ~、苺クレープ病みつきになりそうです!」
「そっちのバナナクレープも中々いい味ね。文化祭の出し物だからって少し侮っていたかも」
学校の外に置かれたベンチでのどかな時間。幸せぇぇぇ、さっきまでバタバタしていたのがまるで嘘みたいだ。
「よ~うこさん」
「……ん?」
「次はどこに行きたいとか希望はありますか?」
「希望とかいっても大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。それくらいのわがままなんてむしろ許容の範囲内です」
「ふーん、それならまずはお化け屋敷から巡って――」
「ごめんなさい。お化け屋敷以外でお願いします」
「あれれ? もしかして怖いの?」
「こ、怖いの苦手って前からご存じですよね?」
ホラーは大がつくほど嫌いで、基本的にテレビでそういった特集が紹介されているときは瞬殺でチャンネルを変えるくらいなのに……お家で一緒に映画を見ましょうと陽子さんに誘われたときは飛びはねるほど嬉しかったのにソファーの上に座ってテレビの向こう側で見せられたのは最悪のB級ホラーでした。
始まりから終わりまで不気味な現象の数々と得体の知れない化物に迫られる恐怖は発狂レベルに等しく、あの時は陽子さんの腰に両手を回して必死にしがみついたものです。
「うん、でもね……遥の怖がってる表情ってすっごくそそられるというか。ゾクゾクしちゃってなんだかいじめたくなるのよねぇ」
「嫌です。絶対入りたくありません」
「お化け屋敷なんて私と一緒にいればへっちゃらかもしれないよ?」
「気のせいです。万に一つもありえませんから」
「……お化け屋敷行きたいなぁ」
「無理やり連れていったら失神してバンドをボイコットしますのでそのつもりでいてください」
「ぐっ……そこまでして行きたくないのね。わ、分かった……じゃあ諦める」
「やった!!」
いやぁ~、陽子さんを脅したところで上手く騙せるか自信がありませんでしたが見事に成功しました。
告白の為の舞台であるバンドをボイコットするなんてインフルエンザとかそういうやむを得ない事情を除いて確実に参加するつもりでしたが、一応やってみた価値は充分ありましたね!
お化け屋敷の案は消滅!! ということで陽子さんではなく私が行きたいと思う場所に連れていきましょう!
「陽子さん! ここからは思いっきり楽しみますよ!! 準備はいいですか?」
「ふふっ、はいはい」
隣には陽子さんがいて。文化祭用に飾られた書道を見るにも花を眺めるも常に傍で笑いあったり、驚きあったり。
学生の絵はどんなものかとふと訪れてみた美術部の絵はどれもが素晴らしいもので。
私には到底出せない絵柄。中にはこれは現実なのではないと思ってしまいくらい繊細で非常に美しい絵も混ざっていたりしたので学生といえど侮れないと思います。
「遥は絵を書くのが上手い方?」
真剣に一つ一つ眺めている時に不意に飛んできた予期せぬ質問。
おっとっと……これは返答に困りました。いっそのこと大袈裟に言ってみましょうか。
「ゴッホが思わず唸ってしまうくらいには上手いと思っています」
「ぷっ、嘘をつくならもう少しマシな嘘をついた方がいいよ」
速攻でバレました。えぇ、質問されてもすらっと口に出したはずなのに……一体何故?
苦笑いを浮かべる陽子さんは美術室を去るまでずっとこんな調子でした。
しかし、その表情が変わる出来事がありました。同時にそれは私も一緒で。
な、なんと見回りに回っている梨奈がツインテールの髪型をしている少女にしがみつかれてます。
しかも大胆にも一般人が行き交う細長い廊下で。
「あっ! はっちゃん! 助けて……うげぇ!? なんで、春野がいるの!?」
「あらあら、梨奈ちゃん。見回りの仕事を放棄して他校の女の子とデートでも楽しんでいるのかしら?」
「そ、そんなわけないでしょ! どちらといえばずっとこんな感じで迷惑しているのよ! 主に私が!!」
髪を栗茶色に染めたツインテールの少女はなおも梨奈の片腕にがっつり絡み、もはや自分から抜けようする意思はないようにも思えました。
なんだか……知らない間に随分となつかれてますねぇ。迷惑そうにしている梨奈とは裏腹にこの状況を楽しんでいるかのよう雰囲気を醸し出しています。
「迷惑だなんてぇ、そんなこと言わないでくださいよぉ……梨・奈・さ・ん♪」
「おわっ!? いきなり耳に声吹き込むなぁぁぁ!」
目元は丸く、まつげは短く。小振りな鼻をした少女がけたけたと反応を楽しむ姿は小悪魔のようにも見えます。
からかい上手でうふふと笑う姿はどこかの誰かさんとよく似ていますね……誰とは言いませんが。
「なーに? 人の顔じろじろ見ちゃって」
「別になんでもありませんよ~」
「ふーむ、怪しいなぁ」
小腹つつかないでください……そんなことするなら私も小腹つついてやりますよ? えいえい、えーい。
「……はっちゃん」
「うん? あっ? こ、これは……えっと、なんでもありません」
「お二人とも仲がいいんですねぇ。年の離れた姉妹さんですかぁ?」
語尾伸ばすのが特徴なんだろうか? やたらと声のトーンが高いようにも聞こえるツインテールの少女は未だに梨奈の腕から離れようとはしない。
溜め息を分かりやすく吐いている梨奈は完全に諦めきったのか遠い表情で目線がどこかをさ迷っています。
もう、助けようにもこのツインテールの少女の前では簡単には助けられそうにないですね。
「親戚同士の仲なの。私はよく下の名前で遥って呼んでいるけれど、遥は私のことをお姉ちゃんって呼んでくれるの。ねぇ、は~るか♪」
「はい、お姉ちゃん♪」
「きゃわいい!!」
「わひゃ!?」
ここで抱きつくなんて大胆!! 嬉しいけど周りから目立つからやめてぇぇ! というか、それよりも梨奈の目線が怖い!! 怖いから一旦やめてくださぁぁい!
「くっ、なにそれ? 見せしめのつもり?」
「ふっ、悔しかったらそこの子に抱きついたら?」
「で、できるわけないでしょ! そんなこと!」
「私はいつでもOKですよぉ? 梨奈さん?」
「今日会ったばかりでなにを言ってるのか理解して言ってる?」
「はい、理解しているのでここで熱いハグをどうぞ!」
「駄目だ。なにを言っても通じないなんて」
梨奈が頭を相当悩ませるほどの強敵。この女の子……ある意味強いのかもしれません。
さっきから冷たくしようが一向に態度を変えようとしませんし。
「というか、梨奈ちゃん……その子やたらとなついているようにみえるけどなにか文化祭とかできっかけでもあったのかしら?」
「女の子一人にたむろっているガラの悪そうな男組の連中を追い払った……ただ、それだけのことよ」
「でも、そのわりには」
「はぁ~、分かんないけどやたらとくっつかれて困っているの。これじゃあ、私の仕事が上手くーー」
「梨奈さん! お二人と喋っていないで私と会話してくださいよ~」
「い・や・で・す」
「…………それではお二人ともぉ。私達はこれで失礼しまぁす♪」
「あぁぁぁぁ、待って! そんな強く引っ張らないでぇぇ! 腕千切れるからぁぁ!」
来客もギョッとするほど叫ぶ黒髪のポニーテール平井梨奈の悲痛な叫びと栗茶色のツインテールの小悪魔系少女。
名前をついうっかり聞きそびれてしまいましたが、かなりぐいぐいと攻めてる子でしたね。
あの梨奈すらたじろかせるほどの実力。もしかしたら今後関わることになるのかもしれません。
「あはは、置いていかれてしまいましたね」
「まるで嵐が過ぎ去ったかのような感覚だわ、この感じ」
「ですね。私もそう思います」
廊下でポツリと残される私達。ふと思い立ってスマホの画面を入れてみると休憩まであと30分しかないことに気がつきました。
これは悠長に遊んでいる暇はなさそうです。名残惜しいですが陽子さんをつれ回すのはおしまいにしましょう。
「陽子さん」
「ん?」
「案内したい場所があります。ついてきてもらってもいいですか?」
「いいよ。遥が行きたいと思う場所ならどこにでもついていってあげる」
優しい声のトーンではにかむ陽子さんの顔にドキッとしながらも私はある場所へと先導して向かう。
本当なら手を繋ぎたかったけどひたすら我慢した。ここは学校で一般人の目に触れまくる。
あぁ、凛とした瞳に形もほどよい鼻に思わず襲いたくなっちゃう唇に色白の頬。
隣にいるだけで匂うほのかな甘い香り。時々頭がくらっとなりながらも私はとうとう辿り着く。
催し物なんて一切ない……二人だけの、ここだけが特別な空間と言える場所へと。
「私になにをさせるつもりかな? 可愛いお人形ちゃん♪」
「陽子さんにしかできない特別なエールをください♪ それもたくさんの……これでもかってくらいに!」
「えっ……さ、さすがに校舎裏は誰かに見られる可能性がーー」
「駄目ですか? ど、どうしてもぉ?」
「うっ」
下から覗き込むように出来るだけ声を甘くしておねだりを決め込む。
頑なに拒否を貫こうとする陽子さんの表情にも変化が生じ始めた。
息が荒くて、がっちり両肩を掴まれて。それでいて私だけを見つめる情熱的な瞳。
目を閉じて受け入れるとするりと音を立てる口同士のリップ音。
始まりは優しく、次第に奥深く。絡ませあう舌は私達の物理的な距離を狭めて強烈に身体を密着させて。
くっつきすぎて陽子さんの豊満なおっぱいに身体中に喜びを感じています。
それがあまりにも気持ちよくて、嬉しくて。
「んんっ……ちゅっ、れろっ……れろんっ」
「んちゅ……ちゅ、ちゅう……れろっ、ちゅぱっ……ちゅう」
「んふぅ……れろ、れろぉ……んちゅ♡」
「ちゅるっ、れろっ……んっ……ちゅぷ、れろっ……れろ、れろんっ」
「ん、んん、んぁぁッ♡ ……れろっ……れりゅっ……ん、む、むふぅ……んちゅ」
「れろ、んちゅう……ちゅるっ、れろっ、ん、はッ……ん、れろ……ちゅ、んふぅ」
「ぁ……はッ……いやぁ♡ そ、こ……舐めちゃ……はぁッ」
「ぺろ。も……っと、エール……送るから……さ。受けいれてくれる?」
「はい♡ お願いしまーーんんんんッ!」
「んふっ……れりゅ……ちゅ、ちゅぱ……れろ」
「あふっ……んんっ……んはぁ」
口の中は陽子さんの熱い舌に脅かされて、ずるずると呑み込まれながらひたすらねぶりあいながら両手を背中に回してがっつりと絡めに絡めて。
禁断の場所で禁断のキス。我を忘れて、しまいには目的なんか蚊帳の外に向かって頭からすっぽり抜け落ち最終的には好きの対象である陽子さんからへの無償のキスを味わう。
求めて、求めて、求めまくって。ときには大胆にもキスの最中に舌を陽子さんのお口にじゅくじゅくと音を立たせて。
ここにベッドがあったら押し倒して、無理矢理でも襲ってやりたい。
ヤるなら徹底的に私からヤりたい。誘っておいてなんだけどキスを続けるうちに頭がどうにかなって僅かな理性を引っ張らないと胸が張り裂けそうになる。
こんなにもドキドキが止まらなくて……けれど、陽子さんは私を可愛いお人形ちゃんとして見ているのでしょう。
それでも……受け入れてよ。私のキスは陽子さんにしか捧げるつもりはないから。
責任取ってくださいよ……こんな歪んだ愛が生まれてしまったことに対する落とし前を。
「んんっ……んちゅ、ちゅ……れろ……ん……ぁ」
「ちゅぱ、れりゅ……んふっ……んむ……んんっ」




