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ボーカルHARU、これにて誕生!! 陽子さんが帰ってきたら報告……の前にいっぱい甘えます(鉄の意思)

「えっ、本気? 浅倉が作り出した妄想とかではなく?」


「うん、文化祭の軽音ライブでボーカルとして歌を歌うことになった。決して冗談とかじゃないぜ」


「浅倉」


「あ?」


「なんか脅した?」


「脅してねえよ」


「はっちゃん」


「ん?」


「弱味でも握られたの? 事実なら言ってね……そのときは浅倉に鉄拳を食らわしてやるから」


「は?」


「でも、まだしぶとく抵抗するようなら顔面に回し蹴りで黙らせてあげる。そしたら、はっちゃんに危害が及ぶことは一生ないだろうし」


「逆に私は危害だらけじゃん。下手したら病院行きなんだが」

 

 紅葉はまだ日の目を見ることはなく、穏やか風と緩やかな曇り空で広がる平日が始まったばかり教室で食べるランチタイム。

 翌日、文化祭実行委員の立場にある梨奈に報告を兼ねてお昼は私と由美さんを含めた三人グループで机をくっつけて食べている最中なのですが……ご覧の通り、空気がひしめき合っています。


 梨奈は私がボーカルを承諾したことに疑っているのか由美さんに対しての視線が尋常になく怖いです。

 炎がメラメラと沸いています。早く鎮火しないと取り返しのつかないこと待ったなしです。


「はっちゃんを守るためなら致し方ないよ」


「いやいや! 駄目だろ、暴力は! 暴力反対!!」


「教室では静かにしてよね、全く」


「梨奈」


「どうしたの? やっぱりいじめられてたの!?」


 由美さんがどれだけ取り繕ったとしても梨奈を納得させることは非常に難しいのかもしれません。

 交渉を有利に進めるためにも私が前に出向いた方がよさそうです。昼食の弁当を食べ終えてお弁当箱に蓋をしたところで梨奈と目を合わせる。


 伝えるのって、ちょっと緊張する。梨奈からしたらおどおどしている私が人前で歌うなんて信じられないのかもしれないけど……どれだけ時間が掛かったとしても納得してもらうんだ。

 これは好きな人に堂々と自身を持って告白をするための大掛かりな前置き。

 そう思うと身体の内側から徐々に言葉にしがたいパワーがみなぎってきました。


「私、文化祭の日に由美さんと一緒にバンドのボーカルとして歌うことにしたから。これは強制とか命令とでもなく引き受けたのは私の意思。冗談じゃなくて……全部本気だから」


 ずっと目線を逸らさず、一定のトーンでありのままの言葉を伝えました。

 お願いします、私の気持ち届いてください!!


「……はっちゃんが嘘をついているようにも見えない。ということはこの話って作り物じゃなくてマジな話なんだね」


 良かったぁぁ! 勇気を出して正解でした!!


「当たり前だろ。あほかお前は」


 おや? な、なんか変な方向に捻れているような?


「あほはあなたでしょ? 全教科クラスでビリの浅倉さん?」


「人をおちょくるのも大概にしろよ、このやろう!!」


 そうして、またにらみ合いが始まりました。乱闘しないだけで随分とマシな方かもしれませんが……いつも喧嘩が絶えませんね、この二人は。


「はっちゃんがボーカルかぁ……なら、文化祭当日は全力で応援にいくからね! 具体的にはチアガールでポンポンふってエール送っちゃうよぉぉ!」


「文化祭実行委員って当日あれじゃね? 見回りとかそういうのねえのかよ?」


「あ、あぁぁぁぁぁ」


 ひざまづいている、苦しんでいる、噛み締めている。この光景、クラスメイトに見られているけど大丈夫なの?


「なんで、あんなにヒステリックになっているわけ?」


「さ、さぁ……なんでだろうね」


「こうなったら、見回りの最中に抜けてはっちゃんのライブに行ってやる! それでビデオカメラで全部はっちゃんを動画に収めてコレクションにしてやるんだからぁぁ!!」


「すげえな、ハル。歌う前から大ファンがいるぞ」


「そ、そうだね……あはは」


 大ファンというかなんというか言葉の表現が難しいけど、梨奈は私を一人の女の子として真剣に見ているからなぁ。

 振ってもなお私に対する好意が消えていないというのはなんだか申し訳なさもある。


 こんな私なんかよりももっと梨奈のことを理解してくれる魅力的な子と結ばれてほしい。

 その相手が男子でも女子でも私は心の底から幸せになってほしいと願っている。


 けれど、自分の立場すら捨てようとしているところをみるとまだまだ未練は断ち切れていないように思えてしまう。

 助けてあげたい、手を伸ばしたい。でも、それをすれば梨奈自身の成長に繋がらない。


 残念だけど、ここはもうしばらく時間を置く必要がありそうだ。

 きっと時が経てば解決してくれるに違いない。


「うぉぉぉぉ! はっちゃん、私やるよ! 必ずやってやるから!!」


「平井、熱意に溢れるのがけっこうなことだが……その前ににちと相談したいことがあってな」


「ふむ、具体的には?」


「どうしてもって時以外ハルを軽音部のメンバーと一緒に演奏させていいか? 一ヶ月で波長を合わせないとこっちもこっちもで息の合ったバンドが完成できないからな」


「大丈夫よ! そういう相談なら全力でフォローするから! なんてったってはっちゃんの天使な歌声が会場に広がるのよ? 文化祭の準備なんかよりもそっちのことに集中しなさい!!」


「話が早くて助かるねぇ。サンキュー、平井!!」


「ふっ、なーにお安いご用よ……これくらいなんてことはないっての」


「いやはや、こりゃあ文化祭のコンサート盛り上げねえとな!!」


「当日ははっちゃんの素敵な歌声で大盛況間違いなし。メイド喫茶もはっちゃん一色で盛り上げてみせる……うふふふっ」


「…………」


 二人で勝手に盛り上がっているんですけど? 話の輪に入るべきなのに半分蚊帳の外に放置されているんですけど?

 嘆きは届くはずもなく、そのまま昼食が終わり授業もあれこれやって放課後に由美さんと雑談というよりも仮の打ち合わせをしてから本格的に解散です。


 夕焼けが目に当たって眩しい。とぼとぼと歩く帰り道の最中に陽子さんにお話したいことがあるので私の家に来てくれませんかとメッセージを送ってみる。

 すると、何分か経過して返ってきた返事は。


『いいけど、今日は夕方にシフトが入ってるから帰り遅くなるよ? 9時以降でもいいなら行くようにするけど、大丈夫なの?』


 まあ、いきなりですからね……こういう反応になるのも仕方がないでしょう。

 けど、急に無理言ってもなんだかんだ予定作ってくれるからほんとそういうところが好きになっちゃうんですよねぇ。


『全然構いませんよ。私は家から一歩も出たりしないので』


『OK。だったら、仕事もなるべく早く切り上げて帰るからお行儀よく待っててね♪』


『はーい、分かりました!!』


「えへへ、楽しみだなぁ」


 ふわふわと心地よく吹きつける風に酔いしれながら、自宅までの道のりをスキップしながら足を弾ませて。

 道中視界に映ったドラッグストアにしみじみ思いながらも店の中で働いてる陽子さんにエールを送ったり。


「思えば、ここから始まったんだよねぇ」


 買い物は制服のままで家の近くにあるスーパーに立ち寄って帰宅。

 スーパーの袋の真下に置いておいた冷蔵品は予め冷蔵庫へ。それから食材を散りばめて。


 陽子さんが帰ってくるまで急いで自分の用事を済ませてしまいましょう。

 全部終わったらなにもかも考えることなく陽子さんに甘えたい放題! なんと素晴らしきことでしょう! これのためならいくらでも頑張ってみせます!


 夕方6時~夜8時の間はそんな感じで自分を焚き付けて用事やら料理を最優先。

 そうして、あれやこれややっているうちに。


「ただいまぁ~、疲れたよぉ~」


 心身ともにへとへとであろう陽子さんのご帰宅です! では……ここは少し趣向を変えて、ご帰宅をおもてなしするとしましょう。

 元々いつかはやろうかなと思っていましたから。喜んでくれたら嬉しいなぁ。


「お帰りなさいませ、ご主人様♡」


「…………きゃ」


「きゃ?」


「きゃわいいぃぃ!! うっ、もう辛抱ならなぁぁい!!」


「わひゃ!?」


 黒のジーンズにカッターシャツ。ちょっとやつれた表情を浮かべていた陽子さんが一転して顔色がパッと変わって思い切りぎゅうぎゅうに抱き締められてしまいました。

 顔に当たる豊潤なおっぱいの弾力といい、カッターシャツから香るほんの僅かな汗の匂い。


 あぁぁぁ、すっごく飛べる。今ならどこにでも羽ばたけそうです。


「……お待ちしていましたよ。陽子さん」


「ごめんね、待ったでしょ?」


「いえいえ。帰りを待っている間に用事はできるだけ済ませておいたので大丈夫ですよ。それよりも……まずは料理にしますか? お風呂にしますか?」


「ううん、料理もお風呂も後回しにして最初はあなたの口から頂いてもいいかしら?」

 

 選択肢に自分のことは一言も言っていないのに……ははっ、困った人だなぁ。

 でも、まあ陽子さんからしてくれるのであればいっぱい甘えても問題にならないよね♪


「ふふっ、いいですよぉ♪ 気が済むまでお好きにどうぞ」


「遥……今日も可愛いね」


「陽子さんも……今日も変わらず綺麗ですよ」


「んふっ」


「んっ」


「ちゅる……じゅる……れろ……んちゅ」


「ふぁ……ぁ……んむっ……んぁ……ちゅぱ」


「ぁ……はぁ……いい……すっごく」


「陽子さん……もっと、もっと、くだしゃい」


「んふぅ……いいよ♪」


 リビングでお出迎えして、その場で舌を転がし合いながら気持ちを高ぶらせていきながら。

 そうして顔も火照って鼓動も異常に早くなって視界に見えるものは陽子さんだけで。

 

 いつの間にかソファーに寝転がってまた抱き合いながら互いにキスをまさぐり合う。

 身体は触らずとも息は荒れて、けれどすぐに乾いてしまう口はまた求めて。

 ずぽずぽと陽子さんの舌を舐めとりながらふと考えが別の方へと持っていかれてしまう。


 耳たぶを含めて赤くなった耳。ふやけてしまいくらいに食べてみたい……欲しい、私も舐めてみたい。

 身体が勝手に持っていかれる。まだ聞いてもいないのに陽子さんの耳に近づけてじゅるりと舐めとった。


 あぁ、なんて気持ちのいい味をしているんだろう? 癖になった、いえ既になっていたのかもしれません。


「はぁぁ♡ い、いきなり……やめ……てぇ♡ あぁん♡」


「ちゅる……じゅるるる……んん……れろれろ」


「ひぅ!? いやぁ……はぁ……ん」


「んはぁ……お……い……しいですね」


「はぁ、はぁ、はぁ……へ・ん・た・い」


「陽子さん……続きしてもいいですか?」

 

「うーん」


「えー、嫌ですか?」


「嫌じゃないよ。むしろ、私にとっては好物だし」


「うふっ♪ 良かった♪」


「ちゅ」


「んむっ」


 たくさんキスしましょうよ。時間が許されるまではたっぷりと。


 プライベートは後回し。それからいっぱい語らせてくださいね? 陽子さん♡

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