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ピンチをチャンスに!? 力を合わせて姉妹プレイで乗りきってみせます!! の知られざる裏側(梨奈視点)~はっちゃん、どうして私を見てくれないの?~

 一目惚れ、意味:一度見ただけで惚れることを指し、一般的には一目見た瞬間に特定の相手にのみ夢中になる体験、もしくはその心的な機能のことを指す。

 他にも色々言い方があるようだけど、これが私にとっての最適解。


 中学の頃まで一目惚れというものがどこかにあるのだろうとずっと思っていた。 

 だってお花を活けることが趣味なお姉ちゃんがよく言ってたから。


 一目惚れをした。近い将来両想いで結ばれたいと。で、結果的にそのお姉ちゃんがどうなったかって話になるけどそれには触れないで欲しい……とここまで言い切ってしまえば想像に難くはないだろう。

 空気の読めないいわゆるKY以外な人間は察してくれる筈だ。

 

「新入生の皆さま、御入学おめでとうございます。多くを学び 多くの友を得られるように、そして大きな夢に向かってーー」


 お決まりの校長の挨拶にうざったいなと思いながらも私、平井梨奈は我慢を決め込む。

 ようやく春になった4月。この時点では未だ一目惚れというものを体験していない。


 そりゃあ、何度か男とか数は少ないけど女子から中学の時点で告白されたりはしたけれどどれも私のタイプにはならなかった。


 度々帰省してくるお姉ちゃんにそれ話したら贅沢なわがままだねって笑顔で言われたけど、これのどこが贅沢なのか? 

 私は理想にうるさいのか? ただ、正直に純粋に恋をしたいだけなんだ。決めた、もう肝心な時以外話してやらないんだから。

 お姉ちゃん、たまに私を小馬鹿にする癖があるからなぁ。時には自分で解決する能力を宿さないと。


 入学式当日の体育館。入学式の挨拶なんて始まりから終わりまで全部ろくに聞いていない私は今後の目標だけを胸に刻み、今日のプログラムは全て終わる。


 ダルい挨拶が全部終了。校長、教頭、生徒会長なんたらさん挨拶ご苦労様でした、全くこれっぽっちも聞いてませんけど。


「一年A組か」


 まず高校生活を潤滑に進めるためには第一印象というものがさしずめ必要だ。ここを押さえないと今後のスクールライフに大きく支障が入る。

 となれば、小学校から培ってきたこの元気ではきはきとしたスタイルは継続していくのが最優先。

 たとえ、それが女子高であろうがなにも変わらない。私はただ私を演じるだけだ。

 

「はーい、皆さん。黒板に書かれた席順に座ってください!」


 言われなくとも座る。平井のひは幸いにも後ろの方なので教師とがっつり目を合わさずに済みそうでなにより。

 けど、あの順から始まる奴はお気の毒だと思う。だって、必然的に左上から始まるんだよ? もう、可哀想でしかないね。

 

「さて、最初はまずはクラスメイト全員一人ずつ挨拶していこうか。なによりも1年間ずっとやっていく仲間だしなぁ」


 うへぇ~初っぱなから挨拶か。きついな、挨拶全く考えてなかったよ……今のうちに無難に終わらせられる挨拶を考え――


「は、は初めまして皆さん。えっと、今日からお世話になります旭川遥です。これから1年間よろしくお願い……します」


 可愛い。ちょっと照れながら時々短い髪を弄りながらたどたどしく口を開く少女の容姿がこの時強く刻まれた。

 同性の女の子に恋をした。あぁ、なるほど恋に男性に女性も関係ないんだね。こんなにもときめいているだから間違いない!


 皆は特に気にしている様子はなかった。むしろ注目は浴びていない。でも私にとって大いにありがたい。


 だって、この子を手に入れるのに誰も邪魔が入らずに済むんだ。恋に障害は必要ない。

 旭川……遥。あの寂しそうに浮かべている顔を笑顔にしてやりたい。なにがなんでも幸せにしてあげたい。 


「皆とは仲良くしたいので、よければ今度とも気兼ねなく話しかけてください! 以上、平井梨奈でした!!」


 入学式は大体軽い流れで終わり、今日の分はお昼で解散になる。なにやらすぐに仲良くなった子は自由に語り合っているようで私も時折その会話に交じっていた。

 一人でとぼとぼ帰っていこうとする遥を見るまでは。


「じゃ、先に帰るね」


「うん、また明日!!」


 ふむ。どうにもあの子は皆の中に輪になって入るような性格は持ち合わせていないらしい。

 となれば、私からどんどん声を掛けていけば打ち解けているかもしれない。ちょっと考えが腹黒いような気もするけど、あの子は人生で初めて経験した一目惚れなんだ。


 話しかけなきゃ、恋は始まらない!!


「旭川さん」


「えっと、あなたは?」


 まるで小動物のようにピクピクしていて、私の顔に覚えがないのか首を傾げる姿があまりにも可愛いぃぃ! 語彙力失ってしまうぅぅ!

 目元はぱっちりとしていて目蓋も二重。それでいてなでなでしたくなるほどに艶やかな黒髪のショート。

 背も小さくて小顔で更に小柄で声のトーンも素敵。駄目、この子を前にすると少し我を忘れてしまいそうになりそう。


「平井梨奈って紹介したはずなんだけど」


「あっ、ごめんなさい。人の名前とか顔とか人が多すぎるとちょっと覚えられなくて」


「うーん、そういうの苦手な人もいるし気持ちはよく分かるよ」 


「ほっ、なら良かったです」


「これから仲良くしたいから梨奈って呼んでよ♪」


「まだ会って間もないですよね、私達?」


 呼び方に時間など関係なぁぁい!


「まあまあ、別にいいでしょ? ねぇ? 遥」


「うぅぅぅぅ!! わ、分かったよ」


 唯一惚れてしまった一目惚れがあまりにも可愛すぎる件について。こんなタイトルをすぐに掘り起こしてしまった私はかなり脳みそが重症だ。けど、それはこの際関係ない。

 ここからはゆっくりと距離を詰めていこう。あまりにも早すぎると遥も焦るし、私も心のゆとりがなくなって台無しになる。

 だから適切な位置取りでスクールライフを送ろう……と、最初は調子よく意気込んでいました。

 

 5月初めは走りが得意なので陸上部へ。まあぼちぼち真剣にやる部活でもなさそうなので適度にグラウンドを走る。

 雨の日は基本中止するスタイルなので時々遥とお出掛け(私はデートだと思っている)の約束を取り付け数回くらいであだ名呼びの許可をもらう。

  はっちゃん、ああ素晴らしいネーミング。この時はぐっすり眠るまでずっと心の中ではっちゃん呼び連呼してみた。

 おかげで素晴らしい快眠。はっちゃん効果は絶大なり。

 

 6月、この辺りはちょっとした大会もあって誘えるときも誘えなかったりするという忌々しい月。

 走りやめてはっちゃんのように帰宅部を貫いてみようか。けれど、それしたら部長とか追い掛けまわしてくるだろうからやめておく。


 あと、ここではっちゃん自体に変化があった。なんだか最近ある日を境に表情筋が柔らかくなっているような気がしてならなかった。

 聞いても全然答えてくれない。そのくせ、誰かに無理矢理押し付けられたのか私についてのアンケートにご協力してほしいとのこと。

 少しからかった後に昼食を食べ終え、聞いてきた質問に正直に答えた……けど。


「毎日毎日髪がサラサラのショートカットで自分がしつこくしていても何でも受け入れてくれる包容力とか喜怒哀楽どれもが全部全部輝いていて、片時も目を離したくないから一生身体の骨を隅々まで私の骨に溶け込ませて滅茶苦茶にしても愛を囁いたくらいでポロっと目がトロンってなってくれるような……そんな子が私の好みなんだよね」


 我ながら暴走した。だって、好きな人に好きなタイプとか聞かれたらもうそれ言ってしまうでしょ! むしろ、ここで押し倒しちゃうじゃん。

 けれど、それが大きな間違いを生み出した。結果的にはっちゃんの心を傷つけた。

 やり過ぎでしたね、心入れ換えなきゃ。とはいえこの暴走簡単には戻りませんよね?

 

 案の定戻らなかった。そして日にちはそのまま流れとある日曜日の夕方。

 家の帰り道、母さんに頼まれた食料を買いに駅前のスーパーに寄ろうとした瞬間に私はおぞましい光景を目の当たりにする。

 はっちゃんとどこの馬の骨かも分からない女が一緒に手を繋ぐ……は? なにこれ、ナンノジョウダン?


 買い物なんてしていられない。私は遮蔽物に身を寄せて写真を一枚こっそり撮影。

 あの感じだとはっちゃんの家まで送るつもりだろうか? いや、それにしたって。


「なんであんなに幸せそうなの?」


 不快だ。私の隣で笑って欲しいはっちゃんがよその女に向けるあの表情が。

 見せてよ、見せてよ……どうして、私に笑顔を振り撒いてくれないの?


 それからは思い出すだけで全部吐き気がする。あぁ、憎い憎い憎い憎い。


「へぇ~、待ち伏せか。あなたストーカーの才能あるんじゃない」


 はっちゃんと偶然顔を合わせた風にしておいてあとは自分の家に戻る……というフリをかましてそのまま追跡して春野とかいう女が自宅に帰ろうとしたところで呼び止める。

 古くもなく新しくもないマンション。見たところ10階まで見える……がこの女のハウスなどミジンコにも興味ない。


 ただ問い詰めることは。


「あんたには聞きたいことが山ほどある」


「場所移さない? こんな場所で話す内容でもないでしょ」


 桃色のミディアム。V字の花柄に染められたブルー色のワンピースと上着のように着用しているニットと白のスニーカー。

 ちっ、この女……顔面も着けている服も全部が全部レベルが高い。

 悔しい、私より劣ってる。おっぱいもお尻も多分劣ってる。せめてウエストだけは勝ちたい!


 惨めな気持ちになりながらもあの春野とかいう女が連れてきた場所はこじんまりとした公園で明かりもさほどあらず、遊具はどれも寂れている哀れなレジャースポット。


 明かりの下で足を止める春野。神妙な顔立ちで私の口から質問が飛び出るのを待っているかのようだ。上等だ、そっちがそう来るのなら。


「はっちゃんもあんたも嘘ついてるよね? 親戚の姉妹とかいう設定ってことにして」


「ふん、それで?」


「もっと他に言い方なかったの? 例えばはっちゃん自身が弱みを握られているとかさ」

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