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数百億年の送り物

作者: ひよ六

全宇宙の生命を滅ぼそうとしていた種族がいました。

皮肉な事に、彼等は平和を愛し、

慈しみの心に溢れた善良な種族でした。

その様な彼等が多大な数の生命を奪うに至った

理由は、この様なものでした。


彼等が住む天体はとてつもなく巨大で、

銀河団の大きさを上回る程でした。

彼等の身体もまた巨大で、

その身体が生きてゆく為には

大量のエネルギーが必要でした。

この天体には豊富な資源があり、

大きな自然エネルギーが

常に生み出されていました。

そこで彼等は何不自由無く暮らす事ができ、

数を増やし、栄えてゆきました。

戦争が起こる事も、犯罪が起こる事も無く、

彼等の文明は発展してゆきます。

自然災害や疫病等に対しても

助け合いながら乗り越え、克服し、

その数を更に増やしてゆきました。


その末に、この天体のエネルギーだけでは

彼等を養う事が出来なくなりました。

そこで彼等は宇宙の観測や航行の技術を飛び越え、

星々からエネルギーを取り出し、

この天体に蓄積する装置を造り上げてしまいます。

宇宙から貰い受けるエネルギーは

無尽蔵と思われる程多量なものでした。

そのエネルギーで彼等の暮らしは一層豊かになり、

精神を成熟させ、もはや彼等は

指導者や統治者さえも必要としなくなりました。

そこにはただ悦びと幸福だけが存在する

理想郷が築かれていたそうです。


ある時、高度な文明を持つ異星人達が

彼等の存在を突き止めました。

彼等がエネルギー搾取を止めなければ

全宇宙のエネルギーが枯渇し、彼等自身を含めて

生命が滅んでしまう事を異星人達は知りました。

異星人達と彼等は身体の大きさが余りにも違う為、

直接の意思疎通は不可能です。

どれ程違うのかと言えば、

異星人達が彼等に気付かれる事無く体内に侵入し、

そこに都市国家を建てて永住できる程でした。

異星人達はテレパシー通信で

事実を伝えようと試みました。

エネルギーを失った星々の犠牲者の姿が

映像データとして送信されます。

テレパシーを受信した彼等はこの時、

宇宙のエネルギーが有限であり、

自分達の繁栄が多大な犠牲に依って

成り立っていた事を初めて知ったのでした。


彼等に選択が迫られます。

エネルギー搾取を止めず

自分達だけが束の間生き長らえるか、

エネルギー搾取を止めて自分達が滅ぶか。

彼等は平和を愛し、

慈しみの心に溢れた善良な種族でした。

その様な彼等は決断を下す事に

余り時間を掛けなかったそうです。

装置が停止され、彼等は

残されたエネルギーだけで暮らし始めました。

肥大化していた彼等の身体は

急激なエネルギーの減少に耐えられず、

子孫を残す事が出来なくなりました。

そして最期の刻まで、

彼等は尊厳を失わずに滅んでゆきました。


その後、この天体から生み出される

自然エネルギーは殆ど消費されず、

宇宙へ放出されました。

巨大な身体から解放された彼等の意識は

そのエネルギーに乗り込んで、旅立ってゆきます。

エネルギーを必要とされている場所へ送り届ける事。

その旅は数億年、数百億年と掛かるかも知れません。

これが彼等の因果律なのでしょう。


もしかしたら、あなたが今使っているエネルギーは

彼等が送り届けた物なのかも知れません。

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