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勇者などいない世界にて(原本)  作者: 一二三
第一章 二つの世界
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第一章05 よくある試練とかいうやつ

ラグラスロが言うには、どちらの回帰方法にもそれを成し遂げるだけの力は必須であるらしい。

今までの強き失踪者達が駄目だったことがそれを強く説明付けていて、この世界の生物がとても強いことも意味する。

故に、グランがどれほど()()()()()を試さねばならぬと。


「よってグラナード、汝に試練を課す」


試練内容は以下二項

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


・ある特定の生物「ヘキサ・アナンタ」を(しい)する


・ある特定の生物「ヘキサ・アナンタ」を生け捕りにする


ただし、対象の生物はこの世界に一匹しか存在できない。

ここでの"存在"は"生きている"ことを意味する。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


_____待て待て待て。

この試験内容には明らかにおかしい点があるじゃないか。

この世界に一つしかいない対象を殺す必要があるのに、生け捕りにしてこいだと?

これは確実に不可能というものだ。


「この試練は本当に達成できるものなのか?」


「なに、達成のできぬ試練に何の意味があろう。試練とは、試す者の力をみる。求められる力が何なのか、それを考えるのもまた力。汝が問われているものは力だ」


達成可能であると言われればそうなのだろう。

しかし、力がどうのという言葉の意味をグランは理解できずにいた。

それもその筈。今の情報だけでは、決して理解できるようには作られていないのだから。

全てのヒントは、これから撒かれるというとをグランはまだ気付いていない_____否、気付くことなどできないのだ。



=================



次にやるべきことがわかった後、グランは拠点を出て南の森へと足を運んでいる。

それはラグラスロが対象の「ヘキサ・アナンタ」は南の森に住んでいると教えてくれたからであるが、ただですら暗いのに、森の中ときたら更に暗い。


「課題の対象は今は南の森にいる。彼奴は生息地を変えない為、準備をしてから行っても大丈夫だ」とのことだ。


ちなみに、「ヘキサ・アナンタ」についてわかっている情報は、六つの頭をもつ巨大な蛇ということだけだ。

情報がないというのは辛いことだが、戦いというのは基本的に情報の少ない状態から始まる。

何をしてくるかわからないので、グランは籠手と胸当てだけを装備して拠点を発った。


しかし、森に入って大分時間も経っている筈なのにまだ他の生物と遭遇していない。

大蛇戦の前にも敵が沢山出てくるものと思っていたグランだが、敵がいなさすぎるので拍子抜け_____



______どうやら、そういうわけじゃないのか。



ほんの一瞬、刹那の間だけ、グランに対する敵意を感じた。

スマクラフティー兄妹の先進的な努力の賜物で、直感的に何者かの害意・敵意を感じることができる。

最初にラグラスロに出会った時にグランが臨戦態勢を解除したのもこれが理由の一つだからである。

しかし、グランには不可解な点が一つあった。


なぜ、敵意をほんの刹那の間しか感じられなかったんだ?

敵意を向けたなら、もう少し長く感じられる筈なのに。


そう思いつつも周りを見渡すと、そこには全七匹、豹のような獣がこちらを向いて嘶いていた。

鋭い爪と牙。髭はとても長く、脚や背には遠くからでもはっきりと分かるような強靭な筋肉を持っている。

そして七匹も周りにいたにもかかわらず、それに気付けなかった。


「お前ら、もしかしたら意図的に敵意を隠せる奴だな?それは盲点だ、どう対処すべきかな」


そう呟いたところで、返してくれる者はいない。

しかし、状況は全く違えど、ここに来る前に山賊に囲まれたことを思い出す。

囲まれたという点では状況は一致しているじゃないか。



「なら、やることは変わらないな。容量はあの時同じだ」



再び一人で呟き、魔法を放とうと素早く身構えたその時、背中に痛みが走りグランの行動は中断された。



気配を消した獣が後ろからその鉤爪を振りかざしたのだ。

傷口からは、一瞬血が吹き出すと共に血が滲み、微小ではあるが体外へと流れ始める。


気配を消せる、即ち奇襲ができるというその強みを生かすことのできる種族なのだ。

その特徴を最大限利用するには群れでなくてはいけない。


「奇襲して怯んだところを一斉に群れで仕留める。賢いじゃないか」


最初の一撃を合図に七匹分の牙や爪がグランに襲いかかる。

グランも装備してきた籠手などで防御するも、流石に全てを防げるわけではない。


しかし_____


「『オリヘプタ』」


そう(そら)んずると、蒼い光___山賊戦にも使用した魔法の光が現れ、襲いくる猛牙達の側で爆破する。

だがしかし、確かにダメージは受けている筈なのに猛攻を止めるそぶりすらない。

彼らの強靭な筋肉が、洗練された群れが、獲物を仕留めることを諦めていないのだ。


「んー、鈍器で殴るような衝撃が効かないってなら、鋭利な攻撃をすれば負けを認めるかい?」


言うと、グランは手を上にあげて叫ぶ。


「『オリベルグ』ゥーッ!」


新たな魔法を使うと、グランの周りの地面が裂け始め、猛獣が落ちてしまうような裂け目ができた。

そこに嵌ったものが何匹か落ちていくが、裂け目を軽々と登りすぐに地上へ復帰してしまう。


しかし、目的は別に落とすことなんかじゃない。


突如、その裂け目から先の尖った巨大な岩石が隆起する。

突然のことに流石の牙獣達も反応しきれなかったようで、最後の一匹を残し串刺しにされる。

一匹残してしまったが、もう勝負は決まったと言っていい。


「群れだからできた戦略はもう、一匹ではつかえない」


最後に残された一匹は諦めず爪をたてグランに向かってくるが、それをグランは全て躱す。


「すまないな、お前らを殺らなければならないんだ。これも、俺が生きていくための過程だと思い理解してくれ」


そう言うと、7つの蒼い光が一点に集まり光線となり、喉元を貫いた。


「悪とは、滅ぼさなければならない。この世界の特殊な状況を鑑みれば当然のことだよな……」


このグランの言葉が何を意味するのかは、拠点を発つ直前に時を戻さなければならない。


グランは、ラグラスロに「出会った生物は全て討伐しろ」と言われて拠点を発った。

なぜならこの世界の生物は、この世界を闇に染めた統制者により悪を()()()()()()からだ。

かつてはこの世界も光と自然に溢れていたのだが、この世界を治める王が変わった途端、全ての生命は"悪"を孕んだ状態で産み出されるようになった。


つまり、生命が()()()()創られ、今や彼らがこの地を支配し跋扈していると。

故に、グランは悪の道へと堕とされた彼らを滅ぼさねばならなかったのだ。


「『サラヴ』」


グランは負傷した身体を回復させる。

そうすぐに傷が治るわけではなく、この魔法は飽くまでも"自然治癒力を極限まで高める"という類のものだ。

ひと単語でまとめるなら体力継続回復魔法、だろうか。


そして、グランは継続回復状態のまま再び歩き出す。


それからもグランはいろんな獣や魔物の類の敵に遭遇したが、どれも先程のような強さを持っていなく、何も苦労することなく進むことができた。

そうこうしている内に、いつの間に奥まで来ていたのだろうか、森の雰囲気が変わったように感じる。


その先にあったのは巨大な湖。

雰囲気が違って見えるのは、神聖さを思わせるような淡い明るさがあったからだ。

そんな闇の中に眠る秘境だが、その中に何とも無視のできない、問題点を見出してしまった。

ぎょっとするような、神秘性を損なう問題点を。



湖の中心にて、六頭大蛇がとぐろを巻きこちらを見ていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 前世でもないのに子供たちがあまりに賢明なことを言っているので感情移入ができない。
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