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勇者などいない世界にて(原本)  作者: 一二三
第一章 二つの世界
34/43

第一章32 大侵攻 〜終結〜


 目覚めた時、そこは暗い場所だった。

 よく見知った場所、闇の世界だ。かつては栄えていた豊かな世界だったのにも関わらず、ある日悪の王が世界を制圧。その日からこの世界は闇に閉ざされた不気味なものになってしまったらしい。


 と、そんなことはさておき。なぜ自分はこんな冷たい土の上で寝っ転がっているんだろうと考える。考えるだけで、身体は全く動かないのだが。

 それから1分ほど悟りを開いたかのように何もせずにいると、ようやく感覚が戻って来たのか、指の先からだんだんと動くようになってくる。

 冷たい土の上で寝ているせいで体が固まっていたのだろう。とりあえず、まずは動かなくては何も始まらない。



「ぁ……こ、声も、出せるようになってきた……か」



 ゆっくりと頭を動かし周りを見渡すと、自分が光に照らされていることに気づく。月だ。闇しかなかったこの世界になぜか月がある。

 そして、さらに2人、自分以外の誰かの姿が月明かりに照らされていることに気づく。


「だ、誰、だ?」


 ぼやけた視界が次第に鮮明になると、片方が椅子に座っていること、もう片方はそれに寄りかかる形で眠っていることがわかってくる。

 少なくとも、前者の特徴を満たす人間をグランは1人しかしらない。


 ラグラスロ王。昔々、グランの故郷の王として城を治めていた彼は「目覚めたか」とだけ呟くと、寝っ転がっているグランを上から見下ろし黙る。

 実際、この哀れに転がるグランを見下しているのかもしれないが、ここは楽観的に「見下ろしている」ことにしておこう。

 そして周囲の状況が確認できた今、当然の質問が湧いて出る。グランは体を起こしあぐらをかいて質問する。


「ラグラ……いや、リゲイリアスはどうなったんだ?」


「彼奴は既にいない。ねびし爾が討ち滅ぼしたのだ」


 「ねびし爾」とはつまり、「成長したお前」と言ったところだろうか。何のことだかさっぱりだ。

 成長した存在が倒したと言うことは、未来からの来訪者ということか。そしてその来訪者とは、グラン自身。


「なるほど、な。だがしかし、未来から呼び寄せたとなるといささか不都合が起こりうるものではないのか? 例えば、未来の干渉による歴史の改善、とか」


(たし)かにそうだ。故、爾はその代償を受けたはずだが? いや、それを覚えていないことが答えというわけか」


「あ? なんだ、何なんだ。代償、だと?」


「爾は此度(こたび)、交換という形で未来へ行った。傷が治っているのも、向こうで回復をされたということだろう。そして帰還の際、未来での記憶を忘却させられた。おそらくそれが爾の状況であろうな」


「まじか……」


 口をぽかんと開けて硬直。同時にまた新たな疑問が浮かびあがってくる。自分のことが自分でわからない以上、わかっていそうな人物に聞くことでしか補完ができない。

 当然、源泉のようにプカプカと湧き上がるあれこれはデアヒメルに押し付けられる。


「リゲイリアスを倒したのが未来の俺となると、今度は俺が過去に行く日が来るってことだよな。俺が十分にあの黒竜を倒せるほどに強くなった未来のある日に」


「その()()()()()()な」


「は? 可能性?」


「そうだ。可能性に過ぎない話だが、確率は高いだろう。というのも、世界は無数に分岐しているからだ。無数に「もしも」の世界が広がっているとしたら、爾が過去に選ばれない場合だってある。今回あの竜を滅ぼしたのが此度のように()()()()()()()()()()であるかもしれないし、()()()()()()()()()であるかもしれぬ。どの並行世界(パラレルワールド)から過去を助けにいくかは未知数と言うことだ」



 並行世界の存在。"どの行動をしたか"によって譎詭変幻に世界が分岐するという考えだ。例えば、いま手にリンゴを持っていて、それを落としてしまったとする。ならば、その時点で既に「リンゴを落としてしまった世界」と「リンゴを落とさずに持ち続けている世界」に分岐してしまってもおかしくはない。

 並行回路を簡略化してみるのがわかりやすいだろうか。直列回路とは違い、途中で二手に、あるいはそれ以上に分断された後、それらは再び一つに収束する。

 それは世界とて変わらない。若干、回路とは違うが、リンゴを落とそうが落とさまいが、その先の未来に大きな差異はないだろう。故に、分岐した2つの世界は再び収束する。


 例外として、今回のように「倒してもらった」世界と「自力で倒した」世界とでは未来も現在も大幅に異なるため、もう収束することはない。

 厳密に言うならば、ほぼ永遠とも解釈できる長い時を経てようやくひとつの世界に帰着()()のだが、もはやそれは()()()のと同値とみていい。


 そして、デアヒメルが言うように「自力で竜を滅した世界」があるならば……


「俺は、先を急ぎすぎたのかも知れないな。たらればの話なんてのはちと不毛だが、ちょっとした後悔は残るよな。まだこの世界を全部探索したわけでもないのに、世界の主を倒そうとするなんてな」


「ふ、まったくだ」


「……なんだ、いつから起きてたんだ。フィースト」



 よいしょ、とゆっくり立ち上がって「可能性がなんたらってところで目が覚めたよ」と一言。フィーストはずっとこの現在にいたのか、未だ満身創痍。その身体でよく立ち上がれたなとは思うが、よく見ると少し脚が震えている。


「僕は少しだけ、意識が途絶える前に君じゃない方のグランを見たんだ。あれは壮観至極だったね。癪ではあるけど認めざるを得ないよ、あれは」


 言うと、体力の限界か、片膝を地につけて息を切らしたように笑う。


「そうかよ。ま、未来の俺がそこまで強いってんなら、俺もそこまで強くなれるってことだろ。ほら、回復してやる」


 先述したように、未来と現在とでは相違がある。故にグランが強くなれるとは限らない。

 そんなことはグランも承知している。だからこそ、これは宣言となる。


「今度からは君の回復魔法が必要ないくらいに僕も鍛錬が必要にならないとね。いや、まずは自分で回復魔法が使えるようになればいいのか」


「黙って回復されろよ……今は中級回復魔法が限界だから時間はかかるぞ。で、傷が塞がったら拠点に帰ろう」




====================




 同刻、拠点にて。


 メイア, ルーシャ VS カラピア, ゴース の死闘が前者の勝利によって終わった後のこと。

 メイアがカラピアとの決着をつけたところで、全身を業炎で身に纏った少女はついに倒れてしまう。少し遅れてルーシャが駆けつけるも、燃え盛る赤に身を包み倒れ伏す彼女を見ると顔を蒼白にする。

 ルーシャは本来、サポートタイプの魔法に特化しているので上級回復魔法『リスレッツィ』や『シフィム』を使用できる。もちろん、彼女の回復魔力があればメイアの治療に全力を注ぎ爛れた皮膚、焼けた体細胞を再生することは容易い。

 しかし、問題はそこではない。


「傷は癒せるのに、火が消えない! これじゃあ、癒しても癒しても結局ダメージを受けちゃう。どうすればいいの?!」



 今やただの辺りを照らす光となってしまったメイア。その赤い光を消す方法が見つからないのだ。

 火を消すなら水や真空が思いつくだろう。もちろん、必然的にそんなものは試している。それでも、消えないのだ。消える消えない以前に、火を消そうとした水ですら燃えていくのだから手の付けようがない。


 「万物の根源は火である」といった考えがあるならば、根源を消そうとする他のものが逆に内包されることは不思議じゃない。

 だが、「万物の根源は水である」といった考えもある。ならば、大元と大元が相殺しあって消えるというのもまた正しい考えなのではないだろうか。なのに、ルーシャの出した水魔法が負けるということは、


「水が根源というのは間違い、()()()()()()()()! 考え方が逆で、私の出す水が根源としての条件を満たしてはいないんだわ! そして、逆にこの炎が根源としての条件を満たした炎であるから、私には消せない!」



 今のルーシャにできることは、燃える少女の肌をいつまでも治癒させることだけ。

 しかし上級回復魔法は消費魔力がやや多い。いくらアプス家の人間と言えども魔力が枯渇してしまえばそれまでだ。さらに焼け爛れては回復、焼け焦げては元に戻されるという連鎖がいつまでも続くというのは、メイアからしても苦痛でしかないはずだ。

 実際の敵は滅びたが、カラピアの残したククリナイフの特殊効果は滅びない。そんな第二の戦闘がここ、拠点で始まっていた。

「絶対に、死なせませんからね!」と、乙女の叫びが闇夜に響いて。




 そして、グランとフィーストは。



「おいグラン、そろそろ拠点につくぞ。多分あいつらも戦闘を終えているだろうね」


「分かってるよ。心配はいらない、勝ってるはずだからな」


「……そうかい」



 フィーストの槍からでる光線の推進力で空を飛ぶ2人。持ち主は槍の上に座っているが、グランは槍を掴んでぶら下がっているという状態だ。

 ちなみにデアヒメルはグランに召喚されて戦地に赴いただけなのでそのまま瞬間移動みたいに先に拠点に帰っている。



「そろそろ空気が変わってきたな。やっぱり、あの竜を倒して悪も取り払われたからだよな」


「そうだろうね。因みに僕があの竜にやられて気を失っている間に悪は破壊されたらしい。だから苦しまずにいられたって訳だね。あの王が言うには、悪が破壊された存在は再び成長、あるいは老いを再開するらしい。王の出す気迫は激しかったが、もう長くは生きてられないだろうね」


 この世界の全生命は悪を孕んで生きている、生かされているというのが理であったが、世界の主となった竜が滅びたことで生命の心は浄化され理性を取り戻している。

 淀んだ空気も微かに軽くなって、今の暗い空は夜を思わせる。もしかしたら、時が経てば次第に朝になるのかも知れない。もしそうなれば、いつぶりの太陽になるのだろう。


「デアヒメル王ならもう少し長生きしてくれるさ。俺はまだ貧弱だからな。彼の下で修行を積みたいところではある」


「ふん、あの老ぼれが長生きだといいな」


「老ぼれって……」


 デアヒメルも成長の止まった悪の状態だったのだ。その長い間を含めれば軽く1000歳は超えているだろう。

 しかし、実際の彼の(よわい)はいくつなのか、という疑問は残る。彼が70歳かそこらで死に、停滞した身体を持って蘇生されたのならば、まだ寿命は残されている筈だ。


「おい、着いたぞ。ぼけっとしてんなよ」


 と、そんな疑問を振り払い、グラン達は古びた遺跡の前に降り立った。


(ま、後でデアヒメルに聞けばいいか)


 戦闘でどこか違う場所までメイア達が移動した可能性もあり得るが、現時点では荒れた様子も音も無い。それは逆に奇妙なほどだ。

 その後、2人は遺跡を探索したがやはり争いの形跡はなく、少なくとも2人が拠点にいないことがハッキリした。

 文字通り()()()()()というやつだ。


「おい、どういうことだ? 先に帰ったデアヒメルすらいないんてのは、どう考えても異常だろ」


「僕に聞くなグラン。ひとまず、外に出て辺りを散策するしかないだろう」


 緊張で汗が滴る。鼓動も僅かに速くなっていくのがよくわかる。想像したく無いことだが、まだ何か、全ての問題が取り除かれていないと言うことだろうか。

 焦る心を出来るだけ抑え、やや早歩きでメイア、ルーシャ、それにデアヒメルも探す。


 グランが拠点のすぐ南にある森を歩いていると、やや開けた空間が存在することに気が付いた。普通に探索していたなら暗がりで気付かなかったかもしれない。

 闇夜の森にはあり得ない、「明るさ」が木々の合間から差し込んでいたからこそ気付けたのだ。


「……!! もしかしたら、そこにいるのか?」


 何があっても良いように、はやる気持ちを鎮めながら音を立てないように光の方へ近寄っていくと、


(これは……火だ。その手前に人がいる! あの後ろ姿、あの髪に服装、ルーシャだ。ということはメイアも近くに?)


 罠の可能性……は無いだろうが、一応周囲を警戒しつつグランはルーシャの背後まで近づき話しかけようとしたところで、気付く。

 ルーシャがただひたすら無言で、火に向かって回復魔法を掛けていることに。いくらルーシャとて、火なんかに魔法を使うはずもない。



「おい、その、燃えてるのってよ。メイア、だよな?」



 突然背後から掛けられた声に肩を一瞬震わせたが、その声の主がグランのものだと気付いたらしく。振り返ることなく静かに頷く。

 なんで、という言葉が喉から出ていこうとしたが、咄嗟にその言葉を飲み込む。ルーシャが訳もなくメイアを燃やしたままでいるはずがない。例えば、それが消えない炎である可能性だとか、そんなことだってあり得る。

 普段の人間なら消えない炎なんて考えはいつまで経っても思いつかないはずだ。しかし、グランには『オリロート』と言う、まさに消すことのできない炎魔法が使用できる。

 だから、グランには分かる。


「それを消す方法が見つからないんだな? ルーシャ」


「……!! どうして、それがわかるんですか?」


 どうやら、ルーシャにとってはグランがこの状況を一目で見抜いたことが信じられないらしい。無理はない。


「メイアを焦しつくすそれは、原初の炎とかと同じ類のものだ。俺も、似たような魔法が使える」


「なら、これを消す方法も分かるんじゃないですか?」


「……すまない、俺は燃やすことしかできない。俺の、力不足だ」


「だったら!これが原初の炎なら、原初の水っていうのは無いんですか?! 普通の水じゃ消せない。なら、これは特別な水さえ有れば消せる筈です!」


 その考えはなかったと、意表を突いた意見に数瞬の間思考が停止された。すぐに脳の回転を復活させ、「あるかも知れないが、俺にはない」と返答する。実際、グランも原初の炎なんて単語はこの世界でメイアと再開して初めて知った単語だ。メイアがグランの魔法を利用してこの世界に来たことを聞かなければ知るよしもなかっただろう。


 ちなみに、グランは冷静に受け答えしているように聞こえるかも知れないが、ここで感情的になってしまえば余計に状況を悪化させかねない。感情で訴えかける者が2人いては何の意味もなさないから、グッと堪えているのだ。



「その炎、消せると言ったら、どうする?」



「え」「は」


 森の奥から届いた重厚な声。そして、「消せる」と言う単語に2人は硬直。


「消せるなら、消す以外に選択肢はないだろ!何を、何を言っているんだ!」


 ついに、堪えていた感情は爆発。グランは未だ見えない声の主に向かって吠えた。16年以上の絆で結ばれた兄妹の絆をここで途絶えさせる筈がなかろう、と。妹を見捨てる馬鹿がいる筈もなかろう、と。全力で吠えた。


「よかろう。それでこそ、勇者となり得る者共だ。『オリロート』の使い手よ。爾とその眷属を救うことをここに誓う」


 燃えるメイアに照らされて、声の主が闇の壁からゆらりと姿を現した。


「な……」


 伸びきった白髪と(ひげ)顔は隠されて、その間からギョロリと見える眼は威厳を放っている。身を鎧に包み護りは見るからに硬い。

 中でも特徴的なのは、その鎧に刻まれた紋様か。円の上下左右の四箇所が少し欠けたような形は、グランの故郷アル・ツァーイのそれだ。

 男はゆったりと、ガチャガチャと鎧を鳴らしながらグラン達に近づいていく。彼_____デアヒメル王は、ただメイアだけを見て歩く。



「デアヒメル王……どうしてここに」


「立てない、動けないのではありませんでしたか?」


「……そんなことを聞いている暇があるのかと逆に聞きたいが、まあよい。吾は、悪を孕んだことにより弱体化していたと、ただそれだけのことだ。それよりも、まずはこれを鎮火するところからだ」



 メイアの目の前まで辿り着くと、デアヒメルは地に片膝をついて手をかざす。その手に無尽蔵に流れる魔力が込められているのがグランもルーシャも感じ取れた。

 明らかに、空気が違う。これが王の力か、と。


「何、荒っぽいことはせん、すぐに終わる」と一言呟いて、「『オリブラウ』」と魔法名を詠唱する。


 その手から生み出されたのは、これでもかと言うほどに澄んだ水。清らかなそれは激しく渦を巻いてメイアを巻き込んで流れていく。


「お、おい!そんなに強くやったら_____ 」と、立ち上がろうとしたグランを「待ってください。そして、よく見て」とルーシャが諭す。

 言われた通りによく観察してみると、流れていたのはメイア()()()()()()。激しい渦にも微動だにせずメイアはそこにいて、揺らめく業火が剥がされていくのを、あたかもメイアも共に流されたかのように錯覚していただけだった。


「原初の炎が流された……つまり、デアヒメル王の『オリブラウ』が原初の水」


「うそ、これって、こんな巡り合わせ、本当に幸運だわ」



 2人とも、メイアの身に起きた異常事態が取り払われたことに安堵しきって完全に脱力してしまう。

 ホッと一息どころか何十息もしている間にフィーストが『オリブラウ』の魔力を察知して駆けつけ、いつしか全員集合していた。

 その間にメイアも目を覚ましており、ようやく、本当の意味でラグラスロ、もといリゲイリアス率いる大侵攻に終止符は打たれたのだ。



 一応、結果はグラン等の白星となった訳だが、ユニベルグズの研究施設の破壊やアンスターの大災害などを加味すれば決して喜べる状況ではないのだが。

 それでも、世界がひとつ呑み込まれることを阻止できたことの偉大さは評価されるべき、喜ぶべきことだろう。


「迷惑かけました、ごめんなさい!」と、そんなメイアの元気な謝罪を受けて、グラン一行も拠点に戻ることになった。



 ふと、森を抜けるときグランは神聖さを孕んだ厳かな空気を背後に感じ振り返る。ずっと闇に晒されて生活していたからか、突然の清明な雰囲気に呑まれて身震いしてしまう。

 と、丁度次の瞬間、木々の合間から光が漏れ出て、眩い閃光が昇り始めたことに気付いた。そう、太陽が。


「ああ、太陽。この世界に、やっと朝が来たのか。俺はこの暖かな光をずっと、待ち侘びていた」


 闇が打ち払われたことを太陽により実感し、ついさっきまで身震いしていたことなどすっかり忘れて再び歩き出す。

 皆が朝の到来を歓喜し、幸せに満ち溢れた笑顔がキラキラと輝いて。



 グラナード・スマクラフティー等、勇ましくも襲い来る災難に立ち向かった彼らは人知れず2つの世界を救って、帰路についたのだった。




===================




 元・闇の世界。今は、世界を闇に染めた黒龍(竜)が討たれ光と自然に富んだ世界に戻りつつある。


 グラン等は世界こそ救ったものの、この世界の全てを探検した訳でもなければ、そもそも彼らのいた世界のことすらよく知らない。

 光を取り戻した世界には他に何があるのか、それ以前に、グランが一度行ったことのある地にも未だ見つかっていない秘密があったかもしれない。今となってはどれも関係ないことだが、世界とは普通では探索し尽くせないほどに広いのだ。

 狭い世界だったとしても、大陸ひとつ分は必ずとてあるに違いない。探検はどんなにしてもし足りない。



 ちなみに、グランが森の奥から感じた神聖さが太陽の光によるものでないことを、彼は未だ気づかずに_____いや、気付いてはいたのだ。

 しかし、それを気にする必要は無いと、あえて神々しさを太陽のせいにしただけのこと。

 一度は訪れた森の中をグランはもう訪れることもないだろう。いつかはこの世界を一周したいと考えるグランだったが、行ったことのある場所、それも森の中を態々(わざわざ)探索することを誰がするだろうか。しないに決まっているだろう。


 そんなこんなで、やはり、「世界」についてこう断言できるのではないだろうか。




_______世界のことはまだ誰もしらない、と。







第一章32話をお読みいただきありがとうございます!


ついに、第一章も次話(エピローグ)で最後となります。

暇つぶしとして始めた執筆ですが、それにしても一章は割と内容が薄く、世界観も相まって明るい会話が少なかったかなと思います。


なので、第二章が始まった暁には、もう少し楽しんでいただけるような作品作りを目指した「暇つぶし」をしていきたいと思いますのでよろしくです!



と、まるで最終回のようなことを言ったところでお別れです。では、また次回〜

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