番外編 IF 『未来』にて
これはタイトルにもある通りIFの話なので、この話はスキップしていただいても構いません。
_______これは、もしかしたらあるかも知れないと言う、近くもあり遠くもある、そんな未来のお話である。
ある日のこと、光の世界にある辺境の村アル・ツァーイのある家では、多くの者が熱狂し、歓喜をあげ、そして祝福していた。
本日ここに集結した目的は、まさしく「祝福」のため。メイア・スマクラフティーの20歳の誕生日を祝うためである。
「今日この度、集まってくれてありがとう皆。まさかこんなに人が来ると思っていなかったから、驚きと喜びがとても入り混じっているが、兎に角ありがとう。そして____」
「誕生日おめでとうございます!」
「ああ、おめでとう」
「本当に、成長したわね」
「メイア女史の成長をこれからも見届けていきます故、どうぞよろし______ぐふぅわぁッ!」
「おいおいグリム〜お堅いのはやめだせぇ?メイア、今日はめでてぇ日だ、パァーッと弾けていこうぜぇ!」
グランがぶつくさと喋っているのを遮ってスマクラフティー家に集まった人達がそれぞれ祝福を始める。今ここにいるのはグラン、メイア、ナハト、ルーシャ、ダルジェン、エスティア、グリム、ハバキリ、そしてフィーストだ。
「▲▲が仕事を終えてこっちに向かってる頃かしらね。◼︎◼︎達も村に向かってるらしいからもっと賑やかになるわ。というかあなた達、色んな人から信頼を集めすぎじゃないかしら?」
「やっぱお兄ちゃんの強さと私の美貌があればなんでもできちゃうってことよ!最強の兄妹って呼んでくれてもいいんだよ?」
「それ恥ずかしくないのかよ……はぁ、いつになっても傲慢というか天真爛漫というか、元気な妹で逆に安心するよ」
「え、それどういう評価?」
「褒めてる褒めてる」
微笑ましい兄妹の会話に皆が笑顔を見せる。彼らは本当に多くの人間の信頼を得、そして強くなって見せた。
そこには多くの苦難と失敗があったのだが、それを跳ね除けた歴戦の兄妹は今やこの世界で最強だろう。
その全ての結果が、こうして皆に囲まれて祝福されるに至ったのだと、2人は知っている。
人とは繋がりを大切にし、それを命綱として果敢に行動するもの。絆という糸をどれだけ強いものにするかが要になってくるわけだが……
「ほんと、僕が何で君たちと一緒にいるのか僕自身でも不思議なものだね。君らと僕とでは犬猿の仲であるはずだったのに、はぁ……運命とは恐ろしい」
「それいつまで言ってるつもりなのよフィースト。……もしかして、ふふーん? 構って欲しいだけだったりしてぇ?」
「ハッ! お戯れがすぎるってやつだねそれは。僕は何度も繰り返して言うことで、僕たちがライバル、馴れ馴れしくするべき関係でないことに気づかせようとして____ 」
「もう、それが構って欲しいってことなのよ!」
かつて激しい戦いを繰り広げ、互いに苦戦を強いられた因縁のライバル、フィーストともこのような仲だ。彼は未だにグラン達をライバルライバルと言っているが、兄妹は彼を既にチームの一員に組み込んでいる。
やや強引ではあるが、フィーストがそれを嫌がる素振りを見せないので心の内では認めているのだろう。
もちろん、変わったのはフィーストとの関係だけではないのだが、それは彼らの様子を見ていれば明らかだろう。
それをわざわざ説明する理由などどこにもない。
「それにしても、こんなに人がいたんじゃ家の中で騒ぐのにもちょっと狭いわよね……」
村の資料室の司書ーーエスティアが何やら唸りながら考えている。それを聞いて他の皆々も、「そりゃ、ここは普通の家だからなぁ」「騒ぐための場所じゃないよね」などと話し始める。
「そうじゃのぉ。では、村の高台でメイア殿の誕生日会をするというのはどうじゃ。今日は天気も良い、あそこなら狭くもないし、心地よい風と良い眺めで盛り上がるじゃろうて」
「おぉ!さっすが村長!あ、じゃあ、▲▲や◼︎◼︎達が来ても居場所がわかるように貼り紙をしておきましょ。ささ、移動移動♪♪」
村長ハバキリの意見にすぐさまエスティアが賛同し、『村の高台で待ってます』という貼り紙を家の扉に貼りつける。
「はっはっはっ!なんじゃいエスティア、今日はすこぶる調子が良いんじゃないか? 本日の主役メイアよりもはしゃいでるで!」
「だってこんなに盛り上がる誕生日会なんて他に無いじゃない? それに、私の誕生日が来るとまたひとつ歳とったな、なんて思っちゃって哀愁がにわかに漂うんだもの」
「だな。もう俺らおじさんおばさんじゃい!」
「ちょっとやめてよ!私はまだおばさんじゃ無いわよ?!」
「王の罅」の重要役職を担う4人は皆それぞれ仲がいい。幼い頃からの付き合いだとかいろいろあるが、村の管理という共通した重要任務を背負っているため彼らの連携プレーはとても優れている。
最近は少しずつ村も発展して、若干近代化して小さな町っぽくなっている。そのおかげか、村の近くを通った旅人などの休憩地としても使われるようになり、4人の仕事は増加傾向にある。
彼らの連携は日に日に研ぎ澄まされてゆき、他の役員からは「絆の権化達」などという仰々しい異名まで付けられてしまっているほどだ。
「にしても、この約4年。短く思われたこの月日でしたが、成長しましたね。村も、みんなも」
そう感慨深そうに言うのはグリムだ。村の政務担当にして、計算マスターの異名を付けられた男。
この前まで4人しかいなかった重要役職員。しかし、最近の発展によりその人数は倍になり、新たなグループも形成された。
前期の4人を「絆の権化達」と村人は呼ぶが、後から加わった4人を皆は「雑草」と呼んでいる。
「そういやずっと気になっていたんだけど、なんで『雑草』なんて呼ばれているんだ?悪口にしか聞こえないんだが」
「その疑問は確かに正しいな、カタフの坊や」と、村長はフィーストの疑問に応え、「雑草ってのは他の植物の分の栄養を吸って成長しちまうじゃろう? そして、新しく入った彼らは、元からいたわしらの仕事を取って成長していく。両者ともに似たような部分があるから『雑草』なんじゃとよ」と理由を語る。
「はぁ……秀逸な例えなのになんだか可哀想とも思えてくるね、それ。というか、ここの人間は何か二つ名を付けないと生きていけないのか?」
「まあ、この村の人間は何故か異名だとか二つ名だとか、そう言うのが好きらしいからな。慣れろ、としか言えん」
「グラン、僕には多分慣れることはできないと思う。だってこの前、村の小童共に『あおやりおにぃ』って呼ばれてさ。いや確かに蒼い槍は持ってるけど、知らず知らずのうちにそれが呼び名に使われるなんて思ってもなかったよ。酷いネーミングセンスしてるよねほんと」
「そうかそうか、お前、子供に人気らしいな。良かったじゃねぇかよ、『あおやりおにぃ』?」
「んなっ!おいこら、グラン! 今のは何のつもりだ!」
グランが子供の真似をしてフィーストを揶揄った途端、槍から魔力を噴射させてグランを追いかけまわし始める。誰から見ても幼稚なじゃれをしているようにしか見えないが、フィーストに遊んでいるつもりは無いらしい。
笑いながら全力で逃げるグランを「おい待て!僕を揶揄いやがったよな?! 光線で焼き尽くされろ!」などと言いながら全力で追いかけている。
「はぁ、まったく。あの馬鹿男達は放っておいて、先に高台までいっちゃいましょ」
「うん、そーだね!あの2人もすぐに来るでしょ」
エスティアとメイアが歩き出すと、追いかけっこをしている2人を置いて他のみんなも高台へ向かって歩き出す。みんなはそれぞれ楽しく話しながら歩いているが、やはり時々聞こえる爆破音がうるさい。
フィーストの槍から出る光線をグランが弾いて爆発しているらしいが、普通に迷惑なのでエスティアとメイアは呆れてものも言えず、メイアが「うっさい!」と、魔法で2人を撃ち落としてまた歩き出す。
その時の皆のメイアを見る目は「まじかよ」と言ったような驚愕で満ち溢れていたのだが、当の本人はそれに気付かず「さ、行きましょ?」と言ってテクテク先に歩いていってしまった。
何はともあれ、それから5分程して、ようやく目的地に到着する。
遅れて、撃ち落とされた後も懲りずに口論をしながらグランとフィーストも到着して、再びメイアの誕生日会が始まった。
それからは特にトラブル的なものもなく、男達は今までの経験談を語り合ったり、女性達は恋バナしたりなど、普通に楽しい会だった。
時はあっという間に過ぎ去っていき、太陽が地平線の彼方へ沈もうとしている頃、燃え盛るような空を見上げてグランが呟いた。
「初めて俺たちが過酷な状況に陥ってからはや3年。よく、ここまで生き残ってこれたなって思うよ」
「なによ?この景色をみてロマンチックな雰囲気に酔ってるんじゃないでしょうね。それともただの酔っ払いかしら?」
と、グランの懐かしむようなセリフにツッコミを入れたのは◼︎◼︎だった。エスティア情報では、◼︎◼︎達は昼の時点で村に向かってるとのことだったが、今はもう夕方だ。
そうなると、この時間になってようやく到着するというのは遅すぎる気もする。
「ちょっとちょっと、今来たの? もう始まって何時間もたってるんだけど!あなた達なら既に到着しててもおかしくないと思うんだけど?」
「まあまあ、そんなに責めないでほしいなメイア君。ちょっとユニベルグズに寄ってたんだ。ごめんね」
「え、ちょ、俺のセリフはガン無視ですか?!」
「うん、無視するけど許してね」
グランのセリフは無かったことにされ、グランは両手で顔を覆って恥ずかしそうに悶えている。「ちくしょう、◼︎◼︎達が今頃来たのを恨むぞ……」などとぶつぶつ言っているところをダルジェンとグリムだけが励ましてくれた。
と、皆が2人の到着で再び盛り上がり始めた所で、村長が何かを心配するような表情で話し始めた。いつにも増して、その顔に刻まれた皺は深く、多い。
「……2人は遠いところからこちらへ来て、それで時間がかかったと言うならそうなんじゃろう。じゃが、皆は▲▲が何故まだここに来ていないのか、疑問に思わんか? 彼はこの村からそう遠くない場所からやってくる。なら、3時間前には到着しているはずなんじゃないかえ?」
「……?!」
その問いかけを聞き、皆が一斉に石像のように固まる。そして、最初にその石化から解けたフィーストが問に問いで返す。
「…… つまり村長さんは、あいつに何かが起こってここに来れてないってことがいいたいのかい?」
「そうとも考えられる、としか言えんがの。こんなめでたい日に考えたくはないが……」
「も、もしそうだったなら、助けに行かなくっちゃいけないんじゃない?! 」
エスティアがあたふた焦り出す。メイアと一緒に探しに行こうとしたところをグランが「いや、待てエスティア」と静止させ、考察を始める。
「よく考えて、▲▲ほどの力量があればこの世界の事象なんて屁でもないはずじゃないか?」
「確かに、そうかもしれないわね。じゃ、じゃあなんで」
「つまりだ、あいつはおそらく、この世界で窮地に陥ってるんじゃない。別の世界の事象に巻き込_____」
「よぉ、みんな。悪いな、すげぇ遅れちまった」
その声が聞こえると同時、皆がその声の主が▲▲であることを理解した。それはグランも同様だが、彼はそこに現れた男を見ることもせず固まってしまっている。
「え、あなた、何かハプニングがあったんじゃなかったんですか?!」
「え、あぁ、心配させちゃったかな。道中にここらじゃ珍しい爪豹バルエムが出現してたらしくてさ、被害が多発してるらしいってんで狩猟してたりと、道草食ってたらこんな時間に」
まさかの遅れた理由が「道草食ってた」となれば、誰もが「そんなことやってる場合か!」とツッコミを入れるのは自然な流れであった。
そんな中グランは肩を震わせ「ああああ」と不気味な声を出している。
「ん、グラン。どした?」
「ど……どした?じゃ、ねぇんだよオラァアアッ!俺が『あいつはおそらく、この世界で窮地に陥ってるんじゃない』とか変にカッコつけたのに大外ししたじゃねえかぁ!」
「いやぁ、それを俺に言われても……道草してたってのは謝るよ。すまん!」
ついさっき恥ずかしいセリフを無視されて悶々としていたと思いきや、今度は予想を大外しして悶々としている。
「あの、その、グラン殿、お気を確かに……」
「わっはっは!元気出せグラン!明日にはそんなことどうでもよくなってるさ!」
「励ましが逆につらいぜ、はは……」
と、今回も励ましてくれるのはグリムとダルジェンだけ。どうやら今日はもう出しゃばらない方がいいようだ、とグランは大人しく椅子に座ってることにした。
向こうではメイアが来たばかりの3人からお祝いの言葉とプレゼントを貰ってエンジェルスマイルを浮かべている。
昼間から沢山のものを食べまくっていたせいでほぼ全員だったはずなのに、3人が来た瞬間また食べ始める人もいる(別に誰がバクバク食ってるのかは言及しないが、最近エスティアが太ったとかなんとか噂が……っと、殺されそうだからここで止めておく)
「御三方、この村の者がここにある食べ物を全部喰らい尽くしてしまう前にどうぞ食べてくだされ」
流石に村長も爆食いする人間の存在に気付いたか、「どうぞどうぞ」と飯の方に誘導し始めた。
いろいろハプニングはあったものの、とりあえず楽しい時間が再開され、またまた時間が経過する。その間グランが大人しくしていたことは言うまでもない。
「いやぁ〜、半日も食べて喋って、流石に疲れちゃうね!」
「メイア女史はいつになっても元気でこれから先も安心ですね。私共はもう疲れ果ててもう……」
「ま、そうだよね。そう考えるとハバキリさんとか凄くない? 村長、半日以上経ってもまだ元気に見えるよ?ほら」
「た、確かに……」
向こうには笑顔で◼︎◼︎達と話している村長がいる。村の外からグラン・メイアの知り合いとしてやってきただけなのに、その仲の良くなりようはなんなのだろうか。
それほど兄妹が信頼されていて、話す価値があると認められたのだろうが、ここまで仲良くなる例はそう多くない。やはり、ここの村長は特殊なのだろうか。
「んで?お兄ちゃんもいつまでそこで_____ って何それ!」
そこでじっとしていたはずのグラン。だが、彼は今、正体不明の謎の光に覆われていた。閃光とまではいかないまでも、闇夜を明るく照らすだけの光が放たれている。
「ちょっ、お兄ちゃん、今度は何なのよ!なんで!お兄ちゃんも何で黙ってるのよ、こんな時まで大人しくしなくたっていいのよ!」
兄の一大事を見て妹のメイアは目を大きく見開いて叫ぶ。高台から響く声は遠くまで、空でこだましながら広がっていく。
「ふふ……そうか、じゃあ一言だけ言わせてもらう。多分、俺は大丈夫だ、これを光を見て半ば確信したよ。ついに、この日が来たってだけなんだろうさ」
「……え? それって、もしかして」
だんだん、光はグランを見えなくなるくらいに埋め尽くしていき、もう声しか聞こえない。
「後のことは、任せるぜ」と、その声を最後に声は途絶えてしまった。その光の中にはもう彼がいないとでも言うかのように、ぷつりと声は聞こえなくなったのだ。
同時に、光はその明るさを失っていき、夜の空に溶け込んでなくなっていく。
「え、これって……」
「ああ、なるほどね。これが、謎の正体だったってわけか」
フィーストはまるで目の前の状況を理解したかのような口ぶりで語る。グランがいつかこのような目に、突然消えるという目に遭うことはここにいる皆が理解していることだった。それはグランがあらかじめ「こんな感じのこと起こるだろう」と言い聞かせて来ていたからだ。
だが、それより後に起こることに関しては、誰もが予想だにしていない。グランすらも。
実際にこの状況を理解できたのは、フィーストだけ。彼だけは知っていた。かつて、彼だけは同じようなものを見たことがあったから。
「ここは、僕がこの状況を説明しよう。それが多分、僕に課せられた義務だからね」
_____光に消えたはずのグランは、傷だらけで倒れていた
IF ストーリー・END
お疲れ様です!
今回、IFのストーリーを書かせて頂きました!
え、それにしては途中やん!って思うかもしれませんが、こういうものだと思って頂ければ幸いです。
では、また次回もよろしくお願いします!




